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第2章:現れる脅威と新たな力

33 共闘

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 そのカバンの中から、大量のネズミが出てきた。
 中には大型のネズミもいて、さっきと同じように口の中に機関銃を装備していた。

「ヒヒヒ! 2人まとめて捕まえなさい! 部長級と団長級の魂だと、さぞかし美味しいのでしょうね……」

 白衣の人は、ネズミの群勢に命令をする。
 ネズミ達は私とアイリスを見て、よだれを垂らし始めた。

「え? ロボットじゃないの?」
「ロボットだと思うけど……魂の回収装置でも組み込まれているのかしら?」
「夢羽様とその他~? 巻き込まれたくなかったら、下がりなさい~」

 アイリスが大剣を持ち上げる。

「その他ってなんだよ……ってうわ!? すぐ下ろさないでくれる!?」
「あら~? 風羽は巻き込まれてもいいから、下ろしちゃったわ~」

 そして、すぐに地面に叩きつけた。
 ネズミ達はアイリスの剣を避けたが、衝撃波でも出ているのか、なぜか半分以上が大破した。

「全然連携取れてないですねー。わたくしのかわいいネズミ達はこの通りですよ……ヒヒヒ!」

 ネズミ達は隊列を組み、敬礼をした。

「……ロボットだな」
「……夢ね~」

 アイリスも同意見のようだ。

「夢羽様の腰巾着こしぎんちゃく~。あいつをどうにかする間だけ休戦よ~」

 アイリスは大剣を振り回す。
 振り回す際、ちゃんと私を避けてくれている。

「腰巾着……まあ、りょーかい。出来れば停戦で、監視なしの生活をさせてくれたら嬉しいな」

 拳銃とナイフを抜き、つくちゃんに拳銃を電撃銃にしてもらった。

「それはできない相談ね~……キキキ」

 振り回している大剣で、どんどんネズミ達が駆逐くちくされていく。

「アイリス! あっちには近づかないで……ね!」

 私はネズミが集まっている所に電撃銃を撃ち放った。
 ネズミ達は私が放った電撃弾を避けたが、地面に着弾したのち周囲に漏電し、避けたネズミ達全て感電して焼け焦げた。

「とんでもない攻撃するわね~風羽。それも貴方のチカラなのかしら~?」
「いやこれは……武器のチカラだよ」

 アイリスの後ろを見ると、夢羽は両腕で大きくバツを使っていたので、つくちゃんの事は言わなかった。

「ふーん……」

 アイリスは、つくちゃんが憑いた銃をじっと見ている。

「まあ、いいわ~」

 大剣を地面に叩きつけ、周囲のネズミ達を衝撃波? で退治している。

「ヒヒヒ! そろそろ身動き取りにくくなってきたはず」

 白衣の人が言った通り、自分達の周囲に小型のネズミが集まってきている。
 アイリスが一応数を減らしてくれているのと、大剣を振り回しているおかげで、近づいてくるネズミはいない。
 だが、このままだとアイリスが疲弊ひへいしてネズミが集まってきてしまう。

「ヒヒ! 第二弾です! やっちゃいなさい!」

 白衣の人の近くで待機していた大型のネズミ達が、横1列に並び口を開いた。

「あのネズミって」
「厄介な銃撃ってくるネズミね~」

 口の中から機関銃が出てきて、それを撃ち始めた。
 アイリスはその制圧射撃を大剣でガードする。
 私と夢羽は、その後ろに隠れた。
 少しの間続いたが、弾切れになったのか、一斉に制圧射撃が止んだ。

「アイリス!」
「? なによ~?」

 私はアイリスの横に移動し、私の声掛けに答えたアイリスに、ピンを抜いていない手榴弾を投げた。

「はあ~!?」

 野球ボールのように手榴弾を大剣で打ち、大型ネズミ達の足元に飛ばした。
 そして私は、その手榴弾に向けて普通の弾を撃った。

「……風羽~!?」

 アイリスは当然だが怒っている。

「ごめんごめん。さっき落下中にもやってたから、今度もやってくれるって信じてた」
「何が信じてたよ~! できなかったらどうするのよ~!」
「まあ、ピン抜いてなかったし……」
「そういう事じゃない~!」

 大剣を地面に刺し、私の両肩を掴んで身体を揺らしている。

「まあまあ……あたしを守ったということで……ね?」
「……はぁ……夢羽様がそうおっしゃるのでしたら~……次はちゃんと事前に打ち合わせするのよ~」
咄嗟とっさの事だと無理な気が……」
「何か言ったかしら~?」
「いえ、何も言ってません。了解です!」
「うん、それでいいのよ~……あら?」

 アイリスは大剣を回収し、周囲を見る。
 景色がぐにゃぐにゃと歪み始めている。

「あー……さっきの爆発で、夢の主少しびっくりしたのかも。起きる兆候だね」

 私もカバンを背負う。
 すると

「うん、追い出されたね」
「あいつはどこ行ったの~?」

 あいつというと、白衣の人の事かもしれない。
 宇宙に放り出されたので、土埃なども消えて視界がクリアになっている。
 その少し離れた所に、さっきの白衣の人が立っていた。
 かなり遠いが、タツロウと救助対象者と逮捕対象者も見つけることができた。

「ヒヒ! ここでは分が悪いですね。退散させていただきますね」

 白衣の人はそう言い、カバンからクルマを出した。

「待て!」
「待ちなさい!」

 私とアイリスはそのクルマに近づく。
 しかし、

「うわ! はや……」
「……あれが噂の邪教のマッドサイエンティストね~」
「そんな奴がいるんだ……」

 あっという間に逃げていった白衣の人。
 それを少し悔しそうに見るアイリス。

「さて…… あいつをどうにかする間だけ休戦でしたわね~」

 そう言い、私を見る。
 だが、持っていたはずの大剣は手元にない。
 私はナイフを抜こうと構える。

「と言いたい所ですが、ここでは私も分が悪いわね~……。次会う時まで休戦という事にしましょ~」
「そ、そう……」

 私は腕を下ろす。

「それでは夢羽様、ごきげんよう~」

 ドレスでも着ているのかという感じの上品な挨拶をした後、アイリスもクルマを出し、この場を去った。

「行っちゃったわね……」
「嵐が去ったという感じだわ……っと、タツロウさん迎えに行かなきゃ」

 自分もクルマを出し、遠くで待っているタツロウの方へと向かう。

「お嬢! 無事だったか!」
「うん。タツロウは大丈夫だった?」
「おうよ。と言いたい所だが、不思議な体験をしてな。それで助かったと言っていいかもしれないな!」

 救助対象者を後部座席に座らせ、逮捕対象者は縛ったまま後部座席に座らせた。
 そしてタツロウは自分でクルマを出した。

「不思議な体験?」
「ああ。っと、立ち話もあれだし、部長室で話そうぜ」
「うん、わかった」

 私の返事を聞き、タツロウは自分のクルマに乗り、そして走り去った。

「……あれ? 夢羽の事見えてなかったような?」

 私は夢羽を見る。
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