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第2章:現れる脅威と新たな力

31 胡散臭い科学者

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「はっ! 2度も引っかかるかよ」

 タツロウはそのネズミのような見た目のロボットに液体の入った小さい風船を投げつけ、そしてそれを撃った。
 ネズミロボットは激しく燃え、動かなくなった。

「そんな物を持ち歩いているのですか……危なっかしいですね……ヒヒ」

 そう言い、長身の人はカバンから白い布のような物を取り出し、そしてそれを羽織った。
 白衣だ。
 その白衣の胸元に名札らしき物が下がっていたが、すぐに外されてしまい、見ることができなかった。

「人を助ける時にはな、何かと火が必要なんだよ。だからと言って、火の神みたいにカンテラを持ち歩くわけにもいかねぇ。それで、これってわけだ」

 カバンから液体の入った瓶を取り出した。
 そして、タバコを口にくわえ、火をつけた。

「アルコールですか……怖いですねぇ……ヒヒヒ」

 長身の人改め胡散臭い科学者は、カバンの中からさっきとは違う物を取り出し、それを撫でている。

「ですが、この子達には通用しませんよ!」

 再び、毛むくじゃらの何かを地面に放った。
 今度は1体ではなく、複数体走っていて、しかも小さい。

「ちっ! またネズミか! すばしっこい奴らめ!」

 瓶の先端に入っている布をタバコの火で燃やした。
 そして、その瓶をその集団に投げつけた。
 瓶は地面で割れ、火が広がる。

「よし! やった!」

 ネズミ達は火に炙られる。

「うわ! なんだこいつら! やめろ! うわあぁぁぁ!!!」

 火が付いたままのネズミロボット達がタツロウによじ登り、そして火が移り燃え尽きてしまった。

---

「はっ!!」

 タツロウは驚き、火をつけたばかりのタバコを地面に落としてしまった。

「(今のは何だったんだ? 予知夢か何かか? いや、これは白昼夢か何かか? とにかく、火は危険ってことだな)」

 タツロウは冷や汗を拭う。

「アルコールですか……怖いですねぇ……ヒヒヒ」

 胡散臭い科学者は、カバンの中から何かを取り出し、それを撫でている。

「ですが、この子達には通用しませんよ!」

 そして、毛むくじゃらの何かを地面に放った。
 白昼夢で見たネズミロボットの群れだ。

「(こいつらを火で燃やそうとしたら、返り討ちにあったってことだよな? それなら!)」

 タツロウはカバンにアルコールの入った瓶を戻し、別の物を取り出した。
 そして、それのピンを抜き、集団に向けて投げた。

「おや? アルコールではない……」

 タツロウは距離を取る為に後ろに走る。
 そして

「うわ!? 僕の試作21号機達!!」

 投げた手榴弾がネズミロボット達のど真ん中で爆発し、全て粉々になってしまった。
 そのネズミロボットの破片が、胡散臭い科学者の足元まで飛ぶ。

「ヒヒヒ……ヒヒヒヒヒ!!!」

 胡散臭い科学者は、壊れたおもちゃのような変な動きをし始めた。
 と、その時、

「な!? なんだなんだ!!!?」

 すぐ近くの2階建ての建物が、何かに落ち潰されるように崩れ落ちた。
 その轟音ごうおん土埃つちぼこりが、タツロウのいる場所まで届く。

「(あれは今から向かう予定だった場所! お嬢! 今助けに! いや、これはチャンスをくれたのか!」

 タツロウは土埃の濃い場所へと入って行った。

「おや? おやおや? あの局員はどこに行かれたのでしょうか?」

 胡散臭い科学者は周囲を見る。

「ヒヒヒ! 逃げられたようですね。まあいいでしょう。目的は達成できましたが……せっかく足止めしたのに、あちらは失敗したのでしょうか?」

 科学者はため息をつく。

「仕方ありません。次の作戦を始めるとしましょう」

 そう言い、別の方向へと歩いて行った。

---

 救助予定の局員と逮捕予定の局員の安否を確認し、アイリスが2人とも瓦礫から守ってくれていた事を知ってほっとした後、夢の主がいる場所へと向かっていた。

 逮捕予定の局員には、『逮捕』と書いた紙を背中に貼り、タツロウに見えるように背を路地に向けてある。

「あのまま放置していったら、仲間に連れていかれるわよ~?」
「大丈夫。そろそろ私の隊員が来るよ」
「その自信はどこから来るのかしらね~。そろそろ着くわよ~」

 路地から市場へと入り、そして市場の中にある、ビルのように高い建物の中へと入っていった。

「そういえば今更だけど」
「なに~?」
「なんで夢の主の場所わかるの?」

 私がそう聞くと、アイリスは振り返り、ギザギザの歯を見せながら笑った。

「キキキ! ここにいると、邪神教団が来るからだよ~」
「邪神教団ね……」

 夢羽はそう呟き、再び何かを考え始めた。

「来た邪神教団を片っ端から倒せるでしょ~? 探さなくても勝手に来てくれるから楽だったわよ~」
「そ、そうなんだ……えっと……その邪神教団? ってなに?」

 アイリスはエレベーターのボタンを押して、こちらを見る。

「なにって、わたくしの敵ですわ~」
「敵なのはわかったけど、あいつら何で邪気なんて集めているのかなって」

 私は、モゾモゾ動いている黒い袋を持ち上げる。
 アイリスはその袋を睨みつけている。

「邪気を集めたら、邪神が復活するって思っているからですわ~」

 私は夢羽をチラッと見る。
 夢羽は首を傾げている。

「邪神がいるかどうかは置いておいて、邪神教団が敵って言うけど、アイリス達は何?」

 エレベーターが来たのでそれに乗り込み、アイリスはキキキと短く笑う。

「踏み込んでくるわね~。まだ休戦中なの忘れてない~?」
「忘れてないよ。そもそも、アイリスとは戦う理由無いしね」
「じゃあ、初対面の時はなんで戦ったのかしら~?」

 あー……あの時ってたしか……。

「言い訳にしか聞こえないと思うけど、ちょっと気が張っていたのかも。あと、制服を着ているのはわかってたけど、改造されていたから奪って改造した物を着た夢の中の凄腕兵士なのかなっと……」
「キキキキキ! 面白いわね~! この服は自前よ~。制服可愛くないからね~。凄腕兵士に見えたってことは、強そうに見えたってことね~。光栄だわ~」

 アイリスはギザギザの歯を見せながら笑う。
 話をしていると、いつの間にか最上階に到着した。

「話はここまでね~。私達が何者なのかは、夢羽と風羽が邪神教団でない事を証明したら教えてあげるわ~」

 そう言い、エレベーターの近くの壁にもたれた。
 どうやらここで待っているようだ。

「うん、ありがとう……こんにちは、夢の主ですか?」

 私はガラスの壁から外を見ている、1人の若い人に声をかけた。
 顔立ちは中性なので、まだパートナーはいないのだろう。

「はい。あなたは?」

 こちらを見る夢の主。

「星間郵便局です。お手紙を持ってきました。これをどうぞ」

 私は、カバンのポケットから手紙を取り出し、それを渡した。

「ありがとう」

 そう言い、夢の主は開封した。
 すると、いつもの夢の主に関する映像が私の頭に流れ、そしてそれが終わった後、切手が飛んできた。
 私はそれを取り、カバンの切手入れにしまった。

「任務完了っと。それでは!」

 私は夢の主に頭を下げ、エレベーターの前に来た。

「袋はどうだった~?」

 私は黒い袋を確認する。
 さっきまでモゾモゾ動いていた邪気はみるみるうちに元気が無くなり、そしてパアっと光り、消えてなくなったかと思いきや、全て夢羽に吸収された。

 そして、夢羽も光りだした。

「なに? 何が起きた?」
「ま、まさか~! 予想はしていたけど~、こんな所にいらっしゃったんですね~!」

 突然アイリスはその場にひざまずいた。

「え? え?」

 後ろにいる夢の主も何事かと驚いている。

「霊神ソラ様~!!」

 そして、アイリスが名前を叫んだ。
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