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第1章:新たな始まり

09 リゾートホテルでの攻防②

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 私が撃った弾は、見事にスイッチに着弾した。
 着弾しスイッチが押されると同時に図書館全体が揺れ始め、そして水槽の土台が全て床と同じ高さになった。
 それと同時に、1階の書棚のガラス床が上がり、天井に接続された。
 
「よし! 我も続くぞ」

 ゲンがミサイルを撃ち、床に大きな穴を開けた。
 それと同時に水槽の中の水が重力に逆らえず1階フロアは瞬く間に水没し、落ちてくる水の影響で複雑な水流が発生した。
 そして、巨人はゲンが開けた穴に吸い込まれるように水と共に落ちていった。

「成功だな!」

 人型に戻ったゲンがガッツポーズしている。
 私は水が引いた1階フロアに降りた。
 そして、水槽の土台にめ込まれていた鍵を抜き取った。

「2本目の鍵ゲット! そういえば、2階の奥に大きな扉があったよ。たぶん、あれの鍵かも」
「ってことは3階の入り口かもな。行こうか」

 私とゲンは2階へ上がる。
 そして鍵を使い、3階へと上がる。

「ここも客室ばっかだな」
「でも、ここにも中央に大きな部屋があるみたいだよ」

 私は、見つけた中央の大きな扉に駆け寄る。

「落ち着け。また巨人が出てくるぜ」
「それはちょっと勘弁だね」

 私は壁から離れる。ゲンが扉のノブに触れたが、巨人が現れる様子はない。

「開けるぜ」

 扉を開くと、そこにはいくつものテーブルが並べられており、食器やロウソク台などが配置されていた。
 奥の席だけなぜかライトアップされている。

「巨人はいないな」
「鍵は……あ! 奥のガラスケースの中に入ってるね」
「ああ、あるな。こんなに撃っても壊れないぜ」

 早速ミニガンを撃ちまくり、壊そうとするゲンだが、ガラスケースはピクリともしなかった。

「ケースの横に何か書いてるね」
「どれどれ? 赤を数字に満たせ。全て用意ができたら皆でいただきます……何かの暗号か?」

 暗号の横に長テーブルがあり、その上にワインやスープ鍋や果物が置かれていた。
 ワインは赤と白とロゼとオレンジがあった。
 赤に1、白に2、ロゼに3、オレンジに4と番号が振られている。
 スープ鍋の横に小さなネームプレートが置かれていて、かき卵スープ、グリーンポタージュ、ミネストローネ、味噌みそ汁と書かれていた。
 こちらにも番号が振られており、かき卵スープに1、グリーンポタージュに2、ミネストローネに3、味噌汁に4と書かれている。
 果物はオレンジ、ぶどう、バナナ、リンゴが置かれていて、オレンジに1、ぶどうに2、バナナに3、リンゴに4と付箋ふせんが貼られていた。
 その食べ物の隣に配置されていない食器が並べられており、ワイングラスに1、ナイフに2、スープカップに3、皿に4、フォークに5、テーブルナプキンに6とネームプレートが置かれていた。

「なんだこれ? ムウに任せるわ。我は巨人が来たら迎撃するぜ」

 そう言い、ゲンは入り口の方へと戻っていった。

「テーブルの上に並べられてるのは……見事にバラバラだね……置かれていない食器もある……うん、わかった」
「早いな! さすがはムウだ!」

 私はケースの前に立って

「まずはワイン。赤ワインをワイングラスへ」

 赤ワインのボトルを持ち、それをテーブルに置かれたワイングラスに注いだ。
 注ぐ際に持ち上げようとしたが食器全てテーブルに固定されているようで、持ち運びはできないようだ。

「次にミネストローネをスープカップに」

 ミネストローネの入ったスープ鍋をカップの近くまで持っていき、それぞれに入れて回った。

「最後にリンゴを皿の上に置くっと」
「ふむふむ」

 リンゴの入ったカゴを持ち、皿の上に置いて回った。

「これでどうだ!」
「……何も起こらんな」

 私は、全てに指定した物が入っているか確認して回る。

「最後のいただきますってなんだ?」
「あ! それだ! あのライトアップされている席に座って、って言わないとだ! ゲン、頼める?」

 ゲンがライトアップされている席に座る。

「えっと……いただきます?」
「いや何で疑問形なんだよ。ちゃんと何かを食べる時みたいにお願いします」

 ゲンは両手を合わせた。そして

「いただきます」

 食堂内はシーンと静まり返っている。

「何も起こらないじゃねーか!」
「……おかしいな」

 うーんと唸りながら見て回る。

「あ! もしかして、全て用意ができてないから皆でいただきますって言えないのかも!」
「何かわかったのか?」
「うん。ゲン、全てのテーブルに置かれていない食器を配膳しよ!」
「同じように並べればいいんだな。了解」

 私はゲンと一緒に、何も置かれていない所を埋めるように、食器を配膳した。
 全て配置し終えると、ガコンと鈍い音が聞こえた。

「……ケースは開いていないね。置いた食器って動かせるかな?」
「え? 動かせると思うが……あ! 固定されてるぜ!」
「やはり全部配膳しないとだめなんだね。んじゃ次に、食事の配膳をしようか」
「同じ物か?」
「うん。お手伝いお願いね」
「おっけー」

 私とゲンは、置いた食器に同じ物を配膳した。
 そして、全ての食器類に指定した物が置かれた。

「これで上手くいくはずだ。ゲン、いただきますをお願いします」
「はいよ。いただきます」

 ゲンの発言後、ケースの方からカチという音が聞こえた。
 そして、ケースの前方のガラスがパタンと倒れた。

「お! やっと開いたぜ!」

 ガラスケースに駆け寄るゲン。
 すかさず鍵を手に取る。

「これで3本目か……あと何本あるんだよ……てか、鍵集めが目的じゃないぞ……」
「わかってるよ。夢の主探しだよ。たぶん使いそうなんだよね……この手のゲームの鍵って、使い終わったら「捨てますか?」って選択肢が出てきそうだし」
「そうなのか……あの何階だ?」
「今が4階だから、あと16階かな? 頑張ろう!」
「ぐぬぬ……りょーかい」

 食堂を出て廊下を進み、客室側の壁に大きな扉があった。
 そこでさっき拾った鍵を使った。

「ん? ……なんだろ」
「どうした?」
「ううん。なんでもない」

 使った瞬間何か違和感を感じたが、気のせいだったようだ。
 階段を上り、壁に書かれた階層の案内を見た。

「5階? ……15階って見えるんだが……」
「たしか5階だったはず……15階って書いてあるね……それに客室じゃないね」

 扉を開けるとそこは、展望スペースのようなガラス張りの広い空間になっていた。

「展望レストランって書いてあるな……だが、肝心のテーブルが1つも無いんだが……」
「……なんか嫌な予感がするんだけど……」

 私がそう言った瞬間、反対側にあった扉が勢いよく開き、そこから数十体の人が押し寄せてきた。

「……あれって、奴らだよな?」
「うん、たぶんそう……。逃げ場ないし、戦うしかないってことか」

 私は自動小銃を単発モードから連射モードに切り替えた。
 そしてそれを構え、

「うわ! 単発より衝撃がすごい! 私、スナイパーライフルみたいな狙える武器がいいかも!」

 自動小銃を撃ちまくるが、照準がブレブレで数体にしか当たっていない。

「我に任せろ! おりゃおりゃ!」

 ドローンに変身したゲンは、ミニガンで狂人達を一掃した。

「さすがゲン……。やっぱり単発モードの方が使いやすいや……」

 自動小銃のモードを元に戻した。

「たしかに、さっき初めて撃った弾が1発でスイッチに命中していたもんな」
「うん。まぐれかもしれないけど」
「じゃあ、あれに試してみろ」

 ゲンが奥の方を見る。
 そこにはあの巨人と、その隣に1人の大人が立っていた。
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