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第2章 ライオン☆ハート

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 学校へ着くと、校門わきの垣根かきねにうずくまって震えている人影ひとかげを見つけた。


「なんや、怖くて震えとったんけ?」

「そ、そんなことないよ! さすがに夜は、少し冷えるなぁって……」

 言い訳しながらふり返ったのは、優斗ゆうとくんだった。

「寒い?」と、ぼくが頭の上から美玲みれいちゃんの顔をのぞき込むと、美玲みれいちゃんは愛想笑あいそわらいを浮かべながら、「そ、そうね~」とうでをわざとらしくさすってみせた。


「そうか? ワイは暑いくらいや」

 チャーシューはメガネを外して、首に巻いたタオルで顔の汗をくと、垣根かきねの中に腕を突っ込んで、なにやら大きな荷物を引きずり出してきた。

 登山にでも行くような、パンパンにふくれた大きなリュックサック。

「それにしてもきみら、まあまあの月明かりがあるとはいえ、これから夜の山道さんどうを歩くっていうのに、懐中電灯かいちゅうでんとうひとつ持ってこんとは、なかなかのポンコツぶりやで?」

 そういえば、美玲みれいちゃんも優斗ゆうとくんも、まったくの手ぶらだ。


「夜中の外出で、ママの目をぬすむことばかりに気を取られちゃって、ついね……」

「ぼくもあわてて、玄関に荷物を置き忘れたまま家を飛び出しちゃったんだ。ごめん」

 申し訳なさそうに、あやまるふたり。


「まあ、ええわ。この超強力スーパーLED懐中電灯があれば、ヘタな懐中電灯をたばで持つより、よっぽど役に立つからな」

 リュックサックから取り出した、車のライトみたいに大きな懐中電灯を、チャーシューが得意げに見せびらかす。


「ほな、そろそろ行こか!」

 通販で一万円もしただの、外国の軍隊で使用されているだの、面白くもない懐中電灯の自慢話を散々さんざん聞かされたあと、ようやくぼくらの幽霊ゆうれい退治たいじが始まった。

 校門から学校のわきへ回ると、はい病院のある裏山へと続く山道さんどうが見えてくる。

 闇夜やみよに浮かび上がる、巨大な黒いかたまりのような裏山を見上げながら、申し訳なさそうに優斗ゆうとくんが話しかけてきた。


「ごめんね、黒崎くろさきさん。ぼくのせいで、こんな夜中に、こんな山のなかにまで……」

「ぜんぜん! 優斗ゆうとくんのためなら、わたしなんだってするし!」

 美玲みれいちゃんの告白じみた宣言せんげんに、目を丸くする優斗ゆうとくん。

 自分の言葉に恥ずかしくなったのか、美玲みれいちゃんはあわてて話題を変えた。


「で、でも、お姉さんすごいよね! ひとりで幽霊が出る廃病院に肝試きもだめしに行くなんて、フツーできないよ」

 優斗ゆうとくんが、首をかしげながらこたえる。

「ぼくもそこが不思議なんだ。姉さんは明るくて活発な性格に見られがちだけど、お母さんが言うには、おさない頃はぼくと同じで、とても大人しくて、怖がりな女の子だったそうだよ。あんなところへひとりで行くなんて、とても……」


 そんな人が、無理してでも行く廃病院に、いったい何があったのだろう?

 いまのところ、その理由は誰にもわからない。


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