上 下
86 / 86
終章:進むべき道

03

しおりを挟む

 土手の上を歩いていると、草むらに空いた穴から、ひょっこりとモグラが顔を出した。

 じっとメグルを見つめている。

 「すごいなモグラ。とうとう本当に穴を掘るまでにいたったか。さっさと『畜生ちくしょう界』を卒業して『土竜モグラ界』に行ったらどうだ」

 メグルは目も合わさずにモグラの前を通り過ぎた。

 「バカを言うなメグル。親子の別れを邪魔したくなかったから、こうしてくぼみに隠れて見守っていたのだ。……旅に出るのかね?」

 のそのそと穴からい出てきたモグラが、メグルの背中を追いかける。

 「そうだ。『人間界』はまだまだ闇だらけ。片っ端から光を当ててやる!」

 「豪気だな。しかしお前さん、もう魔界の王である『天魔』に目ぇ付けられているだろうぜ。おいらの情報がなけりゃあ、どっから狙われるかわかったもんじゃないね。仕方ねぇから、このドリュウ様もついてってやらあ。……文句は言わせねぇぜ」

 そっぽを向きつつも、ぴんっと指でヒゲを弾きながら宣言するモグラ。

 これ以上、迷惑をかけたくなかった。
 何も言わずに出かけるつもりだった。

 しかし危険な道であることがわかってもなお、自分に協力すると言い切ったモグラの言葉に、メグルが反論できる訳もなかった。


 「……好きにしろ」 

 精一杯の、感謝の言葉――。


 モグラは満足げにうなずくと、メグルのそばに駆け寄り、その顔をのぞき込んだ。

 「よし! そうと決まりゃあ、ひとつ、しっかりと決めておかなくてはならんことがある。よいかメグル? これからはおいらのことをモグラじゃなくて、ドリュウ様と呼びたまえ」

 メグルがモグラに笑顔を向ける。

 「わかったよ、モグラ様」

 大声で笑いながら走り出したメグルを、モグラはあわてて追いかけた。

 「ドリュウだってのに! おいこら、聞いてるのかよ? 人間界管理人、六道リクドウメグル!」


 ふたりの行く手に、一本の道がのびている。
 この道の先に何があるのか、それはふたりにもわからない。
 ただ進むべき道と信じて、歩むのみである。




人間界管理人 六道リクドウメグル 輪廻メグル土竜モグラ 篇 完
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

処理中です...