42 / 86
第7章 クラスメイト
05
しおりを挟む「そこにもいるぞ。あっ、あそこにも。早く捕まえろ!」
どこから来たのか、体育館裏の草むらは沢山の大きなバッタで溢れていた。
「うわぁ、すげえ! 全部捕まえて、みんなに見せびらかそうぜ!」
巨大バッタに狂喜乱舞する男子たち。しかし、いくら昆虫好きの小学生男児といえども、次々と現れる大量のバッタを前に、次第に恐怖を感じ始めつつあった。
「おい、なんか変だぞ。これじゃ、おれたちがバッタに追い詰められているみたいだ……」
男子たちを囲むようにして跳ね回るバッタの群れ。そのなかでも一段と大きなバッタが、へたり込んでいるタカシの顔にとまった。
「ぎゃあああああっ!」
石階段を転げ落ちながらあげたタカシの悲鳴をきっかけに、一気にパニックが広がる。
「逃げろ、喰われるぞ!」
「さっき追いかけ回したバッタが、仲間を引き連れ復讐に来たんだぁ!」
飛び回るバッタを手で払いのけながら右往左往するタカシたち。そのとき、緑色の巨大な物体が、草むらからにょっきりと顔を出した。
「で、出た……。バッタの化け物……だ……」
ついには泡を吹いて失神してしまうタカシ。
そんなタカシに目もくれず、男子たちは一目散にその場から逃げ出していく。同時に、あれほど大量にいたバッタの姿も、風に吹かれた霞のように消えていった。
「誰がバッタの化け物だ。ドリュウ様の顔を忘れたのか」
巨大バッタの正体は、作業服を着込んだモグラだった。
「あの沢山のバッタは、モグラの仕業か」
バッタの大群にも微動だにせず立ち尽くしていたメグルが、視線もくれずに訊ねる。
「まあな。草刈りしながら、お前さんが土下座させられるとこまでは、楽しく見物してたんだけどよう。さすがにあんな顔を見せられちゃあな……」
メグルは静かに、長い息を吐いた。
「助かったよ。いまにも、ひねり潰すところだったんだ……」
失神しているタカシを見下ろしながら、呟く。
本気で言っているのか、冗談なのか――。
いずれにしても、怒り狂う阿修羅のごときメグルの形相を目の当たりにしたモグラは、何も言い返せなかった。
*
「大鏡の幽霊話の件、噂の発信元がわかったぜ」
そうモグラが切り出したのは、体育館裏から校務員室に戻り「まあ落ち着け」とメグルに冷たい麦茶を出したときだった。
2
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる