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第8話 龍の玉
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しおりを挟む「キリ星人と合成? 新たな……地球人?」
次々と飛び出す衝撃的な言葉に、わたしの頭が混乱する。
「そうです。キリ星の科学技術を駆使し、地球人のDNAに我らキリ星人のDNAを組み合わせました。彼らは地球人でありながらキリ星人の血を引いている。そうすることで、我らキリ星人も、彼らの一部として生き残ることができたのです」
銀河連合では、大昔にDNA操作を禁忌の技術として封じている。ましてや別々の星の生物をかけ合わせるなど正気の沙汰とは思えない。
ステネコの話は妙に具体的だが、どうにも突拍子がなさすぎる。
「ステネコ、きみの話を信じないわけじゃないが、五千年も昔の話だ。きみが伝え聞いた歴史も真実かどうか……」
「本当です!」
間髪入れずに、ステネコが叫んだ。
「わたしが証人です。わたしこそがキリ星最後の王子、キリル・キリ! 肉体を焼かれ、魂だけの存在になりながらも、こうして地球の生物に憑依しながら、生き続けているのです」
「まさか! きみは五千年も生き続けていると言うのか?」
「すべては、我がキリ星人の血を受け継ぐ地球人を見守るため! そしてキリ星人の魂が眠る、この神殿を守るため!」
ステネコは前足を地につけ、深々と頭を下げた。
「絶対平和主義をうたう銀河連合は、銀河的に有名な生物博士のあなたと、宇宙生物保護法を利用して、忌み嫌うキリ星人の血を引く地球人を、地球の外来生物として根絶やしにしようと企んでいるのです!
おねがいです博士、銀河連合に、地球人はこの星の在来生物であると報告してください! あなたがそう言えば、銀河連合も地球人には手が出せない!」
「わたしだってそうしたい。だがステネコ……。いえ、キリル王子。残念ですが、地球人のDNAを調査すれば、いつかはわかってしまうはずです」
「ならば博士、宇宙船を修理できるメカニックを、こっそり連れて来てください。わたしはこのイヴを修理し、できるだけ多くの地球人を乗せて逃げます。この銀河を離れ、別の銀河に新たな故郷を求めて旅に出ます」
キリル王子の言った通りなら、わたしはつねに銀河連合に見張られていることになる。そんな状況で、こっそりメカニックを連れて来ることなど、どう考えても不可能だ。
返答に困っているわたしに、キリル王子は、すくっと二本足で立ちあがり、するどい視線を向けた。
「すべては博士にかかっている。もしできないと言うなら、銀河連合の手にかかるまえに、わたしがこの手で地球人を絶滅させる!
博士、イヴは飛ぶことはできないが、攻撃能力は失われていないのです。ほんの数百年前、僧侶に乗り移ったわたしの忠告を無視して、この神殿の上に城を建てた者がいます。わたしはその一族を一瞬にして、地下から城ごと焼き払ったことがあるのです。
この街くらいなら、この神殿にいながら簡単に焼きつくせる。トモミもアユムも、一瞬にして灰になるでしょう!」
キリル王子の言葉が終わると同時に、辺りはまた暗闇に包まれた。
ふわりと体が軽くなったかと思うと、わたしは地下の泉のほとりに立っていた。
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