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第6話 いざ洞窟へ!
01
しおりを挟む十日ぶりの食事は、わたしに想像以上のパワーを与えてくれた。
かわろうか? というトモミの言葉をよそに、ひとり猛然と穴を掘り進めていく。
〝ツナ缶〟〝美味しい〟〝最高っ!!〟
そんな言葉が、頭の中を駆け巡る。
本当はトモミの手を取って踊りだしたいほど感動していたが、それを掘り進めるパワーに変えていた。
あまり感動しすぎるのは、地球人として不自然だからだ。
と、そのとき、スコップのさきに何かが当たった。手で土をかきわけると、穴を取りかこむような一メートル四方の石枠が現れた。
さらに石枠の中を掘り進めると、どさりと奥に土がくずれ、深い穴が口を開けた。
四方を石の壁でかこまれたその穴は、なだらかな斜面となっていて、吸い込まれそうなほどの暗闇が地底へと続いている。
まるで巨大な蛇の口をのぞき込んでいるような、胸がざわつく不穏な穴――。
「これがこの洞窟の、本来の入り口なんだろうか……」
わたしのひとり言のような問いかけに、
「きっとそうだよ! 長い年月のあいだに、入り口が土で埋まっていたんだ!」
いつのまにか目を覚ましたアユムの興奮した声が、肩越しに飛び込んできた。
「これは古代人たちの遺跡だよ! 龍の玉へといざなう通路だよ! やっぱり伝説は本当だったんだ!」
さっきまでの疲れはどこへ行ったのかと思うほど、アユムは踊るようにはしゃいでいた。
確かに四方を石の壁でかこまれたこの穴は、一見、通路のようにも見える。しかしこれは、何度か行なわれては中止になったという工事の跡ではないだろうか?
もしくは戦国時代に建てられ、一夜で燃えつきたという城の石垣の一部かもしれない。どちらにしても、こんなに浅いところに伝説の遺跡があれば、とっくの昔に見つかっているはずだ。
「あひゃあ!」
不意にアユムが、すっとんきょうな声を上げた。頭の上にステネコが飛び乗り、ヘルメットが顔の前にずれたのだ。
ステネコは再びジャンプして穴の前に着地すると、こちらを向いて「にゃあ」とひとつ鳴き、穴の中へと消えていった。
「おかしなネコちゃんね。やっぱり、わたしたちを案内しているみたい」
不可解なネコの行動に、首を傾げるトモミ。
わたしはステネコに聞こえるよう、わざと大きな声で返事した。
「本当だね! おかしな行動をするネコだ。野良猫は、もっと人を警戒するものだよ!」
「とにかく、ぼくたちも入ってみようよ」
リュックサックから懐中電灯を取り出しながら言ったアユムに、ぶっきらぼうにトモミがこたえる。
「じゃあ、あんたが先頭で入りなさい。懐中電灯、持ってるんだから」
「えーっ、ぼくは遠慮するよう。ハカセ、さきに入って」
「うん、わかった」
「じゃあ次は、わたしね」
「えーっ。最後は怖いよう。ぼく、まん中がいいなぁ」
トモミに頭をはたかれて、結局アユムは最後に入ることになった。
わたしは『全宇宙生物図鑑』を懐に入れた。しかし大きくて重たいので、前屈みになるとキモノの襟からずり落ちてしまう。アユムのリュックに入っていたロープで背中にくくりつけることで、なんとか固定することができた。
なんでそんなもの持って来るのよ。というトモミの言葉はもっともだが、これはわたしにとって命と同じくらい大切なものだから、片時も手離すつもりはない。
「じゃあ、行くよ」
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