緑の丘の銀の星

ひろみ透夏

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第1話 トモミ

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「隊長! 前方から未確認飛行物体が接近中です!」

 それは高度八〇〇メートルの上空、闇夜のなかでの遭遇そうぐうだった。

「赤い光を点滅させながら、だんだんとこちらに迫ってきます! 扇風機をひっくり返したような、奇妙な形です!」

 操縦席に座る青白い顔の男が、正面のスクリーンを睨みつつ叫ぶ。

 しかし、うしろの座席に深く身を沈めた男は、膝の上に開いた大きな図鑑から目をそらすことなく、落ちつきはらってこうこたえた。

「隊員、わたしの資料によると、それは地球のヘリコプターというものだ。とてもエネルギー効率が悪く、騒がしい乗り物であるが、この星ではポピュラーな……」

 その言葉も終わらぬうちに、隊員は思いっきり舵を切った。

 銀色に輝く球状の小型宇宙船は直角に夜空を左折し、衝突寸前でヘリコプターをよけた。

「こらあっ! わたしは生身なまみの体なんだ。操縦に気をつけたまえ!」

 ごろごろと床を転がりながら隊長が怒鳴る。

 隊員は闇夜に消えていく赤い光を、背面のスクリーンで確認しながら、ぽつりとつぶやいた。

「見つかっちゃったかな……?」



 この小型宇宙船を操縦している『隊員』は、有機体《ゆうきたい》で構成されたバイオロイドである。

 彼の本当の体は、月の裏側に停泊している母船にあり、そこから、このバイオロイドを脳波増幅装置で遠隔操作していた。つまり一言で説明するなら『操り人形』。なので、少々乱暴に小型宇宙船を操縦しようがへっちゃらで、乗り物酔いすらしやしない。

「すみません。生身の生命体を運ぶのは久しぶりなので……」

 そう言って隊員はキョキョキョと笑ったが、まっ黒で大きな目玉以外、小さな鼻と口の穴があいているだけのバイオロイドの青白い顔に、表情はなかった。

 ふらふらと頭を抱えながら、ようやく立ち上がった隊長は、急いで自分の席にもどると、読んでいた『全宇宙生物図鑑』に異常がないか確かめた。自分の背丈の三分の一もある大きな図鑑だが、いつも肌身離さず持ち歩くほど大切にしている。

 やがて隊長は、ほっと安堵あんどのため息をつくと、またもとのように深く座席に身を沈めて、図鑑を読み始めた。

「研究熱心ですね、隊長」

「隊長はやめてくれ。いつもは博士と呼ばれているんだ」

 いつもは博士と呼ばれているこの男は、銀河でも四本の指(宇宙人の平均的な指の数)に入るほど有名な生物博士だ。いろいろな星をまわっては、さまざまな生物を採取、研究している。


「では博士、今回の任務は、いったい何なんですか?」


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