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第八の扉

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食卓で新聞を片手に、優雅にコーヒーを啜る苅磨かるまフェルマー。

二階から一階へ階段を降りてくる足音が聞こえると、執事が食事室の隣りの調理室配給口の向こう側にいる料理人に声をかける。



「フェルマー様、愛衣奈様がこちらへ向かっております」



「ふむ、あの軽やかな足音を聞けばわかる。ただ、今はそれがタイタンの足踏みにも聞こえてくるのは気のせいではないだろうな」



「いえ、旦那様、完全に気のせいで御座います。少々、落ち着かれた方が宜しいかと…」



「クレハトール、お前も落ち着いた方が良い。私のコーヒーは何杯目だ?そう、十二杯目だ。これ以上、飲み続けると貧血を起こしそうなほど、飲んでいる。これ以上、どう落ち着けと言うのだ?」



「では、心構えが出来ていらっしゃる様で御座いますな。私は、料理の方を見て参りますので…」



「待て、クレハトール!私を一人この場所に置き去りにして、何を料理だと?料理はすでに完成している。向こうで、ただ皿を温めているだけだろう?」



「そうで御座いましたな。…では、料理人の体調を確認して参りますので、失礼を」



「クレハトール!我が愛娘である愛衣奈がこの食卓に訪れるというのに、椅子を引いて座らせる事も出来んのか?今まで執事の業務を全うしていると自負する事が出来たとしたら、それは錯覚だよ。大いに反省したまえ」



「これは失礼致しました。猛省し、苅磨家のご期待に応える事が出来るよう、邁進して参ります…」



「それで良い、クレハトール。その場を動くな…」


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