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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その301
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俺は、力を宿してくれたお前を嫌っている…。
お前は、きっと気づいている。
それなのに、何故、力を貸し続けてくれるんだ?
『…』
もう、誰も信じたくはない。
この世に絶対だなんて言葉なんて、ないのはわかってる。
朝、母さんにおはようと声をかけても、何処か遠くの空を眺めている様な声で、誰に声をかけられたかもわからないで、おはようって。
返してた。
父さんとは、なるべく口を利かなかった。
どうせ、失望する様な眼差しを向けて、説教しかしない。
どうせ、俺なんか、いなければいいと思ってるんだ。
そんな事ばかり思っていたら、いつしか、人の心の裏を読む事ばかり考えていた。
疑う事も、信じる事も、疲れるんだ。
それでも、まるで、人間を演じる様に、学校でみんなと話して、笑う事も、怒る事もあった。
でも、心の奥では、いつも何処か冷めている。
敢えて、そこに触れる事はしなかった。
ただ…。
きっと。
本当は、この人だけは信じられるって、ものが欲しかったんだ。
そんな人を、無意識に求めていた。
でも、そんなもの、存在なんかしないんだ…。
この世界に俺が転生してから、優しさを売りにしたりして、私利私欲のために殺そうとする奴らがいた。
それは、俺が別世界から来たからじゃない。日常的に行われていた事なんだ。
きっと、純粋な人達は殺されて、悪い奴らしか残らない世界なんだ。
俺がここまで生きていた事は奇跡だ。
助けられた事もあったさ。
でも、基本的に、今いるこの世界の奴らは、相手を殺そうとする事が前提の様な気がする。
この世界を復活させようと頑張っている奴らがいるのはわかってる。
だけど、俺は…この世界が存在し続ける価値があるのかわからない。
隙があれば、殺す事しか考えていない奴らで溢れかえっているのなら、いっその事…。
いずれ滅んじまうんだよ。何をやったって、この世界は救われない。全てはムダなんだ。
こんな…。
こんな気分悪い世界、今すぐにでも去りたい。
…。
俺に力を貸してくれた霧蔵や右京は、この世界の人達みたいだけど、何処か頭の中で、実は俺がいた世界の人なんじゃないかって、思っているんだ。名前もそうだけど、雰囲気がそう感じる。
だけど、あんたは違うだろう?
頭に耳が生えているんだ。
この世界の奴だって、間違いなくわかる。
俺はこの世界も、この世界の奴らも好きじゃない。
この世界の奴が、力を貸してくれるとは言え、俺の中に入り込んで、駆け巡るのが気持ち悪いんだよ…。
力を宿してくれて、ようやく俺は相手と渡り合う事ができて、喜んでいる自分もいるのにさ。
どうだ?
俺は、最低な男だろう?
俺にとって、東角猫族も化け物扱いだ。
俺は、偏見の塊なんだよ…。
『そんな君が、何故…』
『悲しそうな表情を見せているんだ…?』
!?
その声…?
記憶の景色で聞いてきた声をよりも、大人の声に変わっている。
その声は、何処かで聞いた声だ。
何処だったか…。
忘れた。
『君はきっと…』
そうだ、俺はお前の事を。
『僕の事を、嫌っている訳じゃない』
!?
『きっと、君がいた場所と比べると、何もかもが違うのだろうね』
『もっと』
『そう、もっと…』
『あらゆるものに飛び込む勇気が必要なんだ』
勇気か…。
そこに賭ける危険は、俺がいた世界とは比べものにならないけどな。
それに。
まだお前を嫌っているって、今でも思っているんだ。
それでも、力を貸し続けてほしいと思う自分がいる。そんな自分がイヤになってくるよ。
今の気持ちのままじゃ、これ以上、やれはしない。
俺を、見捨ててもいいんだぜ?
それでも、俺は戦うよ。
最後まで。
俺には、今、背負ってるものがあるんだから。
『何故、戦うの…?』
このままじゃ、メルシィーニが救われねえからだよ!
『そうか…』
『君は俺の事を、嫌いと言った…』
『だけど』
『俺は君の事、好きさ…』
お前は、きっと気づいている。
それなのに、何故、力を貸し続けてくれるんだ?
『…』
もう、誰も信じたくはない。
この世に絶対だなんて言葉なんて、ないのはわかってる。
朝、母さんにおはようと声をかけても、何処か遠くの空を眺めている様な声で、誰に声をかけられたかもわからないで、おはようって。
返してた。
父さんとは、なるべく口を利かなかった。
どうせ、失望する様な眼差しを向けて、説教しかしない。
どうせ、俺なんか、いなければいいと思ってるんだ。
そんな事ばかり思っていたら、いつしか、人の心の裏を読む事ばかり考えていた。
疑う事も、信じる事も、疲れるんだ。
それでも、まるで、人間を演じる様に、学校でみんなと話して、笑う事も、怒る事もあった。
でも、心の奥では、いつも何処か冷めている。
敢えて、そこに触れる事はしなかった。
ただ…。
きっと。
本当は、この人だけは信じられるって、ものが欲しかったんだ。
そんな人を、無意識に求めていた。
でも、そんなもの、存在なんかしないんだ…。
この世界に俺が転生してから、優しさを売りにしたりして、私利私欲のために殺そうとする奴らがいた。
それは、俺が別世界から来たからじゃない。日常的に行われていた事なんだ。
きっと、純粋な人達は殺されて、悪い奴らしか残らない世界なんだ。
俺がここまで生きていた事は奇跡だ。
助けられた事もあったさ。
でも、基本的に、今いるこの世界の奴らは、相手を殺そうとする事が前提の様な気がする。
この世界を復活させようと頑張っている奴らがいるのはわかってる。
だけど、俺は…この世界が存在し続ける価値があるのかわからない。
隙があれば、殺す事しか考えていない奴らで溢れかえっているのなら、いっその事…。
いずれ滅んじまうんだよ。何をやったって、この世界は救われない。全てはムダなんだ。
こんな…。
こんな気分悪い世界、今すぐにでも去りたい。
…。
俺に力を貸してくれた霧蔵や右京は、この世界の人達みたいだけど、何処か頭の中で、実は俺がいた世界の人なんじゃないかって、思っているんだ。名前もそうだけど、雰囲気がそう感じる。
だけど、あんたは違うだろう?
頭に耳が生えているんだ。
この世界の奴だって、間違いなくわかる。
俺はこの世界も、この世界の奴らも好きじゃない。
この世界の奴が、力を貸してくれるとは言え、俺の中に入り込んで、駆け巡るのが気持ち悪いんだよ…。
力を宿してくれて、ようやく俺は相手と渡り合う事ができて、喜んでいる自分もいるのにさ。
どうだ?
俺は、最低な男だろう?
俺にとって、東角猫族も化け物扱いだ。
俺は、偏見の塊なんだよ…。
『そんな君が、何故…』
『悲しそうな表情を見せているんだ…?』
!?
その声…?
記憶の景色で聞いてきた声をよりも、大人の声に変わっている。
その声は、何処かで聞いた声だ。
何処だったか…。
忘れた。
『君はきっと…』
そうだ、俺はお前の事を。
『僕の事を、嫌っている訳じゃない』
!?
『きっと、君がいた場所と比べると、何もかもが違うのだろうね』
『もっと』
『そう、もっと…』
『あらゆるものに飛び込む勇気が必要なんだ』
勇気か…。
そこに賭ける危険は、俺がいた世界とは比べものにならないけどな。
それに。
まだお前を嫌っているって、今でも思っているんだ。
それでも、力を貸し続けてほしいと思う自分がいる。そんな自分がイヤになってくるよ。
今の気持ちのままじゃ、これ以上、やれはしない。
俺を、見捨ててもいいんだぜ?
それでも、俺は戦うよ。
最後まで。
俺には、今、背負ってるものがあるんだから。
『何故、戦うの…?』
このままじゃ、メルシィーニが救われねえからだよ!
『そうか…』
『君は俺の事を、嫌いと言った…』
『だけど』
『俺は君の事、好きさ…』
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