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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その300裏

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予期せぬ惨劇に、この誇闘会ことうかいに集った者達の悲鳴が辺りを取り巻く。

それでも、君達が君主の危機に救いの手を差し伸べる事など、するはずもない事はわかっているのだよ。

僕達がこの街の上層の者共を斬り捨てれば、オーロフ族よ、君達の権威は損なわれるだろう。

案ずるな、よく己の種族を顧みるといい。元来、君達は頭を働かせる事に難があり、ただ欲望に心を淀ませ、目先の利益を盲目的に追い求める。

その様な輩に、決して、誰かの上に立つ事など適うはずがない。生業は、お決まりの低俗が好む窃盗だ。

身の丈に合わない生活、しかし、己の素の形は、この世界で最も底辺に近い住人だという事を思い出すがいい。



「ギィヒヒィアッ!裏切り者の、古球磨ごくま族ぅうっ!」



「はぁあっ!」



ガキィィンッ!



「ほう…?」



悍ましい姿に化かした太鼓六変人ロクヘンジン、決して見掛け倒しという訳ではない様だな。

刀の構えはまるでなっていない、しかしこのかち合った刀の衝撃から伝わる力強さは一体?

ハムカンデはこの街が出来上がってから、少し様子がおかしい。

魔闘石ロワの力?

いや、それだけではない。

元々、オーロフ族らしからぬ策略家ではあったが、もっと凶悪な得体の知れない何かを感じる。

初めから薄汚れた感情は持ち合わせていた屑だが、一度失敗し、ここまで命を奪わずに計画を先延ばしにして様子を見た判断は、過ちだったか?

いや、まだ間に合う。

せっかくの好機、無駄にする訳にはいかない。

このまま、ハムカンデまで斬り捨ててくれよう。



「お前も…心の感情に囚われない止まぬ笑顔を、植えつけて…もらえッ!」



ビュュオッ!



その振り回す曲刀の鏡の様に磨かれた刀身とうしんで、その塗り替えられた醜い顔を拝むといい。

もう、太鼓六変人として太鼓を叩く間抜け顔ではなくなった。

もはや、それは笑顔ではない。新たに生まれた表情としての、何かだ。



「ぬぬぬっ!このっ!逃げてばかりで!?」



さあ、怪物よ。お前の動きは把握した。これ以上、更なる変化を遂げられると厄介な事になる。

曲刀を大きく頭上に構えたな。少し距離を取る戦いに耐えられなくなったか。隙が大きい。

絶好の機会だ。

ここで終わらせてやる。



「醜い君の姿を見るのも見飽きた、ここで散るがいい!」



ダンッ!



「!?」



何だ?

背後から…。



「げぇぇ…。ハムカンデを殺すのは、この場面じゃない。そして、それを成し遂げるのは、お前じゃないんだぁあ、メカリエ!」




「シロク!?」



「浮浪殲滅部隊として、また余計な雑務増やしやがってよ。ハムカンデのために何かしたくなんかねぇんだよ…。まあいいや。死ねよ、お前」



「もらったァアあぁ、メカ…メカリエぇ!」



まずい、このままでは太鼓六変人の攻撃をまともに食らう!?



ダダッ!



「げぇぇ…。この壇上なら、そう動くと思ったぜ!?もらったぞ、メカリエ!!」



シャキィィンッ!



「死ね!オーロフ族を全て木偶でくぼうと思うなよ、メカリエ!」



しまった!シロクに動きを読まれている!?

しかも、奴の構えは八相先突はっそうさきづきの構え!

このままでは、やられる!?



傲犬瓏々ごうけんろうろう流、滅殺輪身めっさつりんしん斬!!」



シロクめ…っ!!



「…ぅうぉぉおおおッ!!」


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