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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その297裏

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小鈴ショウレイがメベヘによって刺された。

やはり狼狽えたな、ハムカンデ。お前の寵愛した者が傷つき、死に向かう姿は、非情なお前にとっても身を裂かれる思いだろう。

周囲の警戒も薄らいだ今が、僕らにとって絶好の機会。

お前のいる壇上には太鼓六変人ロクヘンジンが6人、そして感情を抜かれたゲル。

メベヘはそのままハムカンデの目を引くため、リョウマ族と戦ってもらう。

僕らを良い様に利用し、お前らオーロフ族の魔闘石ロワが魔力を十分に満たした時、不要の古球磨ごくま族を排除しようという魂胆、当然見透かしている。

お前にはここで、退場してもらうとしよう。

黒眼こくがん五人衆と呼ばれた僕らにより、有力なオーロフ族は、暗殺によりほぼ排除している。

お前は意表を突かれるだろう。

お前がひとつ見当違いをしているとしたら、その壇上にいる者にある。

残念だが、ゲルは感情を完全に抜かれてはいない。

ゲルが復讐のため、抑えに抑えたその憎悪に満ちた感情をハムカンデに解き放つ時がきた。

お前がゲルの目の前で、見せしめの様にゲルの妹ハクナを殺した。

到底許容できるものではない蛮行を犯したお前に、死刑宣告をしてやる。

その身を以って、罪を償うといい。

人の上に立つ資格はお前にはないのだ。

この、狄眼鬼僧てきがんきそう部隊副隊長である僕が、お前達オーロフ族全てを粛正してやる。



「ガタンッ!」



ゲルが席から立ち上がった!

ハムカンデは反応が遅れている。その横に並べている太鼓六変人は、ゲルの動きに気づいた。

だからどうだと言うのだ。

至近距離で敵と見做していない者の動きを見定め、すぐさま行動に移せる訳もあるまい。

ゲルの抜刀もお前達が思っているほど遅くはないぞ。



ズバッ!



ズバッ!



「ぐぅぅ…ッ!」



ゴロンッ!



「ハムカンデェエッ!!」



「!?」



ゲルが壇上の右からハムカンデに迫る!

気はそちらに向くだろう。

太鼓六変人など、僕らの敵ではない。反対側にいる太鼓六変人の内の3人もまた、暗器術を使う事もないだろう。

お前らはこの僕が、片づけてやる。

古球磨族の誇りを以って、ハムカンデを殺す。

今日から、オーロフ族は古球磨族の支配下に置かれるのだ。





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