とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その287

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小鈴ショウレイは拳が地面につくかつかないかくらいの位置から、掬い上げる様にして超低空アッパーを仕掛けてきた。

意表を突いた攻撃、今までにこの攻撃はなかった。

だけど、それを食らうかどうかは話は別だ。

俺に力を宿してくれた東角猫トーニャ族の俊敏性がかなり高いのは実証済み。

小鈴の突きをかわしながら、その腕の上に立つ事もできたんだ。

俺は小鈴のアッパーに合わせて、地面を蹴り、飛び込んで、奴との距離を急激に縮めた。

そうだ、あの時と同じ。

俺はきっと、負けられない。

少しでも動くのなら、全力を出せ。

俺の左足を勢いのまま、まっすぐに小鈴の顔を目掛けて、蹴りつけた。



バシィィッ!



「ぐぁあっ!」



当たった!?

まだ、これだけで終わらねえぞ!

お前達の胸につけているその魔闘石ロワ、どう見ても怪しい。

誇闘会ことうかい初戦の東角猫族の女の食われ方といい、その石自体が変な意思を持っているんだ。

そんなものを身につけているから、おかしくなるんだよ!?

小鈴は顔を俺に蹴られて、屈辱そうに顔を歪ませながら体勢を崩し、体を後ろに仰け反らせた。

これだ…!

俺はとっさに小鈴の鎖骨の下辺りを踏み台にして跳ねて、後ろ宙返りをした。

お前に時間を与えない。

狙いは、小鈴の青く光る魔闘石だっ!

その腐った魔力、断ち切ってやる!



くらえっ!!



宙返りで遠心力をつけ、その勢いのまま、右足の踵を思いっきり魔闘石目掛けて振り下ろした。



バキィィッ!



ピシッ…!



どうだ!?

また魔闘石にヒビが刻まれたぞ。

いい加減、そのまま壊れちまえ!

小鈴は一瞬、悲痛な声を漏らしながらも、倒れず、何とか踏ん張り、体勢を崩しながらも俺を睨みつけた。

大事なところでウソをつくお前に睨まれたところで、少しも恐くねえ!

何が大事かもわからずに、判断を見誤るお前に、誰が恐れるんだよ!?



「くらえ、小鈴!!」



俺は地面に着地するなり、その地面を蹴り、すぐさま小鈴との間を詰めた。そして、力の限り、利き手の右手を握り締め、小鈴の魔闘石目掛けて、突きを放った。



バシィィッ! 



「!?」



何だ?



この白い手は…?



魔闘石から飛び出した白い手が、俺の突きを平手で防いできた。

オーロフ族が魔族から盗んだ魔闘石。

こんなにも怪しいものを、見つけるだなんて、バカな奴らだ。

でもよ、メルシィーニが呼びかけてんだよ。

死んでも、母親の事を呼びかけている。

だから、俺はやっぱり終われない。

少なくとも、この場所では。

だから、部外者のクソ魔闘石は黙っていていろよ。



「だははっ!お前に私は…倒せないんだはっ!お前は、バカだはっ!」



お前が正しい?



それなら、証明してみせろよ。



自分の子を殺して、今の地位を守る事がお前の正義なら、証明しろ!

俺が生きている限り、お前を否定し続けてやる。

だから、お前は俺を殺さなきゃならないのかも知れない。

でも。

だから、俺は今死ねないんだ。



「魔法の花火を見せてみろよ!?お前が約束したんだぞ…!メルシィーニによ!」



ピシッ!



「だははっ!魔法の花火なんて、そんなもん忘れただはっ!何の役にも立たないもの、いつまでも覚えていられないだはっ!」



役に立っているから、それを覚えて待っている奴がいるんじゃねえか!

それを否定するくらいなら、最初からそんなもん、見せてやるんじゃねえよ!?



グギギ…ッ!



魔闘石から出てきやがった白い手が、俺の拳を握り潰そうとしている!

何て握力してやがるんだ。

俺が素の状態だったら、とっくにこの拳は握り潰されていたかも知れない。

でも、あの東角猫族がせっかく俺に力を宿してくれてんだ、ここで負ける訳にはいかねえよな。

心が折れていたんだ。

だけど、誰かがハムカンデを抑えてくれている。

この瞬間をムダにはできねえ。



ピシッ!



俺の拳を握り潰そうとしている白い手は、まるで石でできてるみたいに固い。だけどよ、そんなに固過ぎて柔軟性がないから、その手に亀裂が入ってくるんだろうな!?



ピシッ!



「こんのぉおおっ!小せえ赤ちゃんがっ!死ねええっ!」



「!?」



ブォオンッ!!



「!?」



小鈴は頭上から平手で、俺の頭ごと押し潰そうと、打ち下ろしてきた。

俺は避けられなかった。

いや、避ける必要もないと思ったのか。

俺の体にはアドレナリンが回っている。

それだけじゃない、こいつの力はわかっているつもりだ。

きっと、今の俺なら小鈴の平手打ちを抑えられる、そう思えたんだ。

俺の体は、ついさっきよりも明らかに力が増している。

俺に力を宿してくれた東角猫族が、俺を認めてくれたのか?

もう一段階、力を解放してくれている様な気がする。



俺は、中2の時に香川が上級生に家庭が貧しいって、廊下で虐められていたのを助けて、香川に嫌われた。

香川がより虐められると不安に思う事なんて、考えてなかった。

俺がその時、その上級生にケンカで勝ったからって、香川を守ったなんて思ってはいない。

俺は香川からは嫌われっぱなしだった。

でも、学校にいる限り、その後、上級生のカスが香川に手を出すところは見ていない。

そのカスの標的は、俺になったからだ。

俺が仕返して勝てば、親が学校に呼び出されて、また父さんに気が済むまで殴られる。

だから、俺は勝ったとも負けたとも思われない様なケンカをした。

俺が正しいのかなんて、正直わからない。

香川が俺を嫌いなら、俺は正しい行動はしていないのかも知れない。

ただ、香川に矛先が向かわなくなったのなら、一応、俺なりの正義はあったんだと信じたいんだ。

一度だけ、香川に聞かれたな。

何で助けようと思ったの、って。

それは…。

同じクラスだから。

だから、仲間だろ?



じゃあ、メルシィーニの肩を持つ理由は…。



母親に会いに来て、その母親に殺された。

お前の気持ちを考えると、心が痛い。

でも、それ以外にも、ある。

俺を殺そうともした女。

だけど、あいつとの戦いで、何かを見つけた様な気がする。

そして、それはあいつも。

だから、メルシィーニは俺を殺せたのに、殺さなかった。

俺が勝手にいい様に考えているだけなのかも知れない。

でも、理由はあったけど、この街であいつに助けられた。

あいつと接しているうちにわかった事。

意外と純粋で。

何だかおもしろいところもある。



…。



じゃあ、メルシィーニ。

お前も、同じクラスと同じ。

仲間だって事にしておいてやるよ。

そんなお前の思いを、少しでもこの小鈴にわからせてやりたい。



「何で…!?私の力一杯の平手打ちを、片腕で止められる…!?」



俺はお前みたいにバケモノじゃないんだ。十分に痛えぞ。この馬鹿力。だけど、お前の力は単調だよな。多分、もう俺を少しずつ恐れてるんだ。

俺の言葉がお前の心を迷わせているせいか?

お前の力には、少し迷いを感じる様になった。

だったらよ、思い出せよ。



ピシッ!ピシッ!



「てめえ、その魔闘石から出ている白い手を見ても驚かねえな。さてはお前、ある程度前から気づいていたな?」



だけど残念だったな…。

その白い手に亀裂が入っている。何でできているのかわからねえけど、もう終わりだ。



「リョウマ族…!これが、お前らの本当の力なのか…?」



バキィィンッ!



「…お前の名前は何だ?」



バキィッ!



バラバラバラッ!



白い手は粉々に砕けて、地面に落ちていった。まるでマネキンの腕が砕けたみたいに、中身も白い塊だ。

何なんだ、これは。

しかし、俺の拳はついに小鈴の魔闘石にたどり着いた。

このまま、押しつけて破壊してやるっ!



「この小鈴をバカにするなあっ!この小せえ…赤ちゃんがっ!!」



「バカ野郎!!メルシィーニがお前を呼んだんだ!」



「あいつは、お前を小鈴とは呼ばなかった!」



「何て呼んでいたのか、もう一度思い出してみろ!!」






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