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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その284

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俺の吐いた言葉が、この場にいる奴らの声でも奪ったか。あれだけうるさかった奴らが誰もいないと思うぐらい、静かになった。

それもそうか。この街で一番の権力者ハムカンデを、死闘になりやすそうなこの誇闘会ことうかいに出ろと要求したんだから。

機嫌を損ねたハムカンデが、街の奴らに八つ当たりしないとも限らないよな。

でもそんなもの、知った事じゃない。

こいつが調子に乗った理由の一端は、お前らにある。

全員でこいつを否定すれば、この街から追放する事もできただろうに。

個人プレーの奴らばかりだから、そんな難易度の高い事はできないか。

誰もが相手の背後にナイフを突き立てようと窺っている様な奴らばかりだもんな。

吐き気がするほど、カスしかいないからな。



「ほぉ…?私を誇闘会の対戦相手として指名した真意とは、何だ?お前に何の得がある?」



そんなもんだろうな。お前らの言いそうな事だ。



「何も得なんかない。俺は、損得で話をしているんじゃない。少しは察してみろよ…」



ハムカンデは俺に寒気がするほど冷酷な視線を向けてきた。

…はぁっ。

目が痛い。圧力が強過ぎて目を逸らしたくなる。でも、俺は逃げない。逃げたくない。

ここで逃げたら、《冬枯れの牙》ラグリェの時と同じになる。

また俺が消える。

その時にはもう、命乞いしてまで生き延びようとは思わない。



「リョウマ族よ、この街を統率する私の立場を狙うか。お前にその力量があると自負しての事なのだろうな?そう易々とはお前に譲り渡す事など出来はしない。だが…」



「まずは、小鈴を倒してから言うのが筋ではないのかね?」



「何!?」



小鈴は、少しふらつきながらも、意地を見せて起き上がり、怒りのままに俺に襲いかかってきた。

このバケモノ女が!

大した体力だけどな、お前の攻撃は…見切ってるんだ。



「くたばれっ!リョウマ族!!」



ダッ…!



何だ…?体が重い!



ブゥウウンッ!!



「はぁああっ!」



ビュッ!



ザザザザーッ!



何とか間一髪、小鈴の突きをかわす事ができた。

だけど、体が重い。息が切れる。

どうしたんだ?

胸が苦しい。



「はあっ…。はあっ…」



「よくもかわしたなぁあ…。だけど、もう限界か?息切れしてるだはっ」



肺が苦しい。

息を吸って周りの空気を取り込もうとすればするほど、肺が小さくなっている様な気がする…。



「はあっ…。はあっ…!」



目が眩む。くそっ…。どうしたっていうんだ。



ハムカンデ?



こいつ、口元に握った拳を持ってきて、口を隠しながら何か呟いてやがるな。

お前は本当に卑怯者だ。

この闘いは、俺と小鈴との勝負だったはずだ。

それなのに、お前は小鈴に加担するんだな。

しかも、お前のお得意の彫魔法ジェルタで。

同じオーロフ族のホルケンダにも、俺を試す感じで呼吸ができない魔法を仕掛けてきてた。

当然、同族のホルケンダと同じ様に能力が高そうなお前が、できない訳がない。



「倒せ、小鈴!」


「この街を脅かす存在のリョウマ族を許すな!」



「殺すんだ!」



ハムカンデに牙を向けた俺を危険人物だと思ったのか、俺を排除しようとしている。

酸素が…。

酸素が欲しい…。



「ようやく殺せそうだはっ!この小鈴のとてつもなく重たい突きを食らって、もがき苦しみながら死んでいくだはっ!」



何とか避けていかないと。

こいつの突きひとつ食うだけで、形勢は逆転される。



「食らうだはっ!!」



ビュゥウンッ!!



くそっ!

動いてくれ…!

小鈴の攻撃は俺の顔を狙っている。

でも、足に酸素が行き渡っていないのか、俺の思った通りに動いていかない。

意識が朦朧としてきやがる。

正々堂々と戦わせてくれないなんてな。とんでもなくインチキな試合だ。

何とかしないと、ここままだと俺が終わる。



パキィイィッ!



破裂音と共に音がなくなった。何も聞こえない。

小鈴の突きをまともに受けたんだ。何処が空で、何処が地面なのかわからない。

立っているのもやっとだ。

もう、痛いのかどうかもわからない。

どうすれば、いいんだ…。

小鈴の正確な位置もよくわからない。

もう、終わり…。



「ほぅら、もう一発、食らうだはっ!」



バキィイィッ!









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