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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その236

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明日まで俺は何処かに身を隠さないといけないよな。一度、街を出るべきか?

いや、出れるかどうかはわからないけど、それを一度やると、きっと俺はこの街に戻れる気がしない。

もしかしたら、戻る気がなくなるのかも知れない。

俺も結局は、自分の事しか考えてない奴の様な気がするから。

自分にこれ以上、失望するのも疲れた。

自分の名前さえも諦めた俺が、これ以上失望したら、今度は何を手放せばいいんだ。

黒い家と家の間に隙間がある。

そこに、朝が来るまで隠れていよう。

それでいい。

まだ、道に足を止めてこっちを見ている奴がいるから、しばらく歩いて、俺を見ている奴がいないタイミングで隠れよう。

城から誰かが俺を探そうとする気配は感じない。

黒い灯籠の外側で、空の監視を逃れて俺に攻撃できた奴は、今までだと2人だけ。

両方とも古球磨ごくま族の、シブとゲルだ。

シブは死んで、ゲルは今は俺に矛先が向いていない。

他に誰が攻撃できるんだ。

いや、誰でもできるよな。

別に、武器を俺の体に突き立てるだけが攻撃じゃない。

言葉での攻撃をされるのも、イヤだ。

疲れた。

正直、誰からも干渉されたくないのかも知れない。

ひとり、何処かの穴にでも閉じ籠って、しばらく出てこないでいようか。

それもいい。

ただ、今すぐにそれをやるつもりもない。

ハムカンデの事が頭に浮かぶと、途端に腹が立ってくる。

もっともらしい事を言って、人の心を弄んで、相手の気も知らずに、人を捨てるんだ。

お前は、シブの命を捨てた。

他の奴らも同じ様にしていたのは、想像に難くないけどな。

シブは俺を助けようとしてくれた。

それだけじゃなく、

俺にとって、暮梨くれなしも同時に殺された様な気がしてならないんだ。

心を通わしちまったら、その人が壊れるのを目にするのが、嫌いなのに。

どうしても、俺の力が足りない。

いつも。



はぁ…。



…。



そうだよな。

ハムカンデ、お前、誰かに似てるかと思ったら。

どおりでここまで腹が立つ訳だ。

もっともらしい事を言って、俺や母さんを責めるくせして、自分は何をしてだ?

ハムカンデは。

…父さんそっくりだ。

父さんも、自分の思い通りにいかなかったら、それをいともかんたんに捨てやがるクズ野郎なんだ。

おかげで、一家は崩壊。

望み通りか?



くそっ。



「サイクロス…!」



暗くて姿がわからないけど、この声はグラッチェリだ。偶然出くわしたのか?



「何か途方もなく、歩き回ってる?のかい?」



途方もなく?そう見えるのか。まあ、似た様なもんか。

俺が城を攻撃した事に気づいていないみたいだな。まぁ、その方が面倒がなくていい。



「どうだ、ろう。今日は、僕の家に泊まればいい。明日は、君の好きな?場所に行けばいいさ。行ける範囲なんて、そう広くは…ないだろうけど」



グラッチェリの家は崖の上か。ハムカンデからの追っ手が来たら、いざとなったらそこから森の方へ行って逃げられる。

都合がいいのかも知れない。



「ねえ?そうしなよ。サイクロス…!」



家と家の隙間に入って、明日になるまで隠れ続けるのも危険か。それに体が疲れる。

よし、そうしよう。



「グラッチェリ、じゃあ頼むよ」



「いいよぉ、サイクロスのためだ」



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