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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その215

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あれほど強く感じていたホルケンダの気配が、まるで最初からそこにいなかったかの様に、完全に消えた。

部屋にただ1人、俺だけしかいない。

オーロフ族の事や東角猫トーニャ族、古球磨ごくま族の事を語って、厳しい戦いの末、この場所を手に入れたのにと、そんな事もしゃべっていたな。

志し半ばでやられて、無念だったんだろうけど。

お前達の戦いは、本当に必要だったのか?

俺は当事者じゃないから、偉そうな事は言えないけどさ。

普通に暮らせれば、それが一番良かったって、思えたんじゃないかな。

特にそこまで強い種族じゃないって認めているなら、なおさら。

ホルケンダは、俺に何をしてほしかった?

まさか、俺が本当にハムカンデみたいな親玉を倒せるとでも思ったのか。

もし、そんな力があったなら、彫魔法ジェルタにもやられてなかったんじゃないのか。

あんたも意外と見る目がないな。

俺に話を聞かせて、少しは満足してそうな気もしたんだけどな。

本当に。

ただ、それだけで良かったのかも知れない。

学校で同級生に話しかける様に、気軽に話せる相手がいないと、気が滅入るよな。

特に、自分が窮地に立たされている時なんか、世の中から置いてかれている様な気がするんだ。

世界で1人、時間が止まっている様な、そんな感じ。

ああ、何か思い出してきた。

随分と前の様な気がするけど。

俺には、第2大陸でシュティールって憎たらしいサイコ野郎がいたよな。

ムカつく奴だけど、あいつには色々言い合った様な気がする。

あの時は鬱陶しいって思ったけど、今は何だか淋しい…か。

あんなサイコ野郎なのに、淋しいなんて思うなんて、終わってる。

パルンガが人間とは違う獣なんだとわかって、今は特にそう思うのかも知れないけど。

まぁ、仕方がない事だよな。

俺が途中からあまりにもパルンガに期待し過ぎた。

俺達、仲良くしてたのにな、って。

そう思うと、諦めきれないから。

もうあまり考えるのはよそう。

あまり考えても仕方がないだよな。

さあ、ここにい続けても時間のムダだ。

この城を出よう。





俺の足元に、千円札くらいの大きさの白い札が5枚置かれている。

これが、消札けしふだか?

裏表とも、真っ白な札だけど。

まさか偽物渡そうとしたりはしないよな。

それこそ、ハムカンデがエズアにやろうとした事と同じだからな。

まぁいいや。

あの猫女に見てもらえばいいか。

それと…。

あ!あった。

隠れ布。これがないと城から出る時に見つかって捕まるからな。

これがまだ効果があるのかわからないけど、とにかく急がないと。

もうそんなに時間は残されていないはず。

一応、頭につけてと。

さぁ、襖の向こう側に誰もいない事を願って…。



スーッ。



「!?」



上の階から丁度、あの真っ白な顔で表情筋が壊死してるこけし顔の奴が1人降りてきやがった。くそっ、タイミング悪過ぎだぞ。

一度襖を閉めるべきか?

いや、もう行くべきだ。微妙に気づいていない様な気がするし、気づかれていたとしても、この部屋で追い込まれても敵わない。

大剣を持ってと。



スーッ。



ピシャ…。



「やや!?」



まさか、気づかれた?

でも、襖は閉めたから。

気のせいで片づけてくれないかな?



劫殺ごうさつの間の襖が開いた?」



「誰か良からぬ者が忍び込んだのか?それならそれで良し。その間に誤って入ったのが運の尽きさ。食殺の刑で生存などできはしまい…。愉快、愉快。ほっほっほー」

ほっほっほーじゃねえよ、バァカ!残り5人呼んでこい!その食殺の刑の部屋とやらに変わってるか、俺がお前ら全員まとめてこの部屋にぶち込んでやるよ。

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