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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その198裏

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ピシャンッ!



「キャスリ!てめえ、勝手に戸を開けて外を眺めてんじゃねえよ!?」



「ご、ごめんなさい…」



今の俺には、思うがままに自由に操れる奴隷がいる。

俺が何をしようと、今の俺は自由。そうだな、満足な人生じゃないか…。

ハムカンデは俺を役不足と見て、城から追い出しやがった。それ自体は、俺もあそこに居続けたいとは思わないから、それでも良かった。そしてその後、特に俺に何かを強いる動きはない。

たまに、浮浪殲滅部隊の1人を寄越して、安否の確認をするくらいだ。

あの城ではめられた魔闘石ロワは、体に根を這わせ、その根が肉体に根深く侵入すると、肉体の一部となり、外せなくなる。

俺は城から追い出された。

俺が思うよりも早く。

結果として、元々得体の知れない物と思っていた魔闘石を内側から破壊する気功術を行って、外す事に成功した。

魔闘石は、まるで何かの意思を持ってる様な、不気味なところがある。

外せないところまで侵入された奴らは可哀想だな。

しかし、あのリョウマ族もどきはムカつく奴だ。

偉そうに説教垂れやがって。

お前は俺より弱いだろう。

俺は、弱くない…。

当然だ。

俺は紅羽くれは流の刀術を身につけ、門を叩いた。リョウマ族としても恥じない立ち振る舞いをしていたはずだ。

仕組まれていた事など一目瞭然、なのにあいつは。

俺をよくも破門にしやがったな。

蔵馬天門くらまてんもんに属する中で、俺は…。

死にたくなる様な修行にも耐え抜いたっていうのに。



右近斗うきんと、ご飯作りますよ…」



「ああ」



蔵馬天門の奴らを見返してやる。

そう思って、今まで街を渡り歩いた。

今の俺は、また除け者か?

俺は一番にはなれない存在だ。そんなものにはなろうとはしていない。

この俺の力を認めさせたい、ただそれだけだった。

いずれ誇闘会ことうかいを申し出て、俺を城から蹴落とした事をハムカンデに後悔させてやる。

それでも俺にはもう、帰る場所なんてないのかも知れない。

星の崩壊の後、各大陸が復元されていく中で、リョウマ族の故郷は姿を消したまま。各種族の故郷の大半は、要人による特殊なバリアにより守られたというのに。彼らの中で、リョウマ族は保護する対象から外されたという事だろうな。何とも情けない話だ。

蔵馬天門に属したままでいたら、俺までも星の崩壊の巻き添えを食らって、今頃は死んでいたのかも知れない。

そうさ、あいつらは天罰が下ったんだ。

結果的にリョウマ族で選ばれし者は、俺という事になる。

俺は、見事生き残ったのだからな。

それなら、先ほどのリョウマ族もどきも、選ばれし者か?

冗談じゃねえ。

あんな奴が。

このまま済ます訳にはいかない。

いずれ決着をつけようじゃないか。

どちらがリョウマ族で選ばれし者なのかを。
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