とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その171裏

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今、流れる空気が一変しましたね。

このゴフルオーターに、良からぬ者がまた1人。

《冬枯れの牙》?

いえ、それ以上に邪悪な存在。魔物でも入り込んだのでしょうか。

憤怒の神フューリーのナイフで刺されたグレンベール・アルシオンがゴフルオーター近くで戦っているのなら、その魔物もそちらに寄せられそうにも思いますが、彼はもっと離れた場所まで行っているのでしょう。

泉の中で石像に姿を変えたまま、存在を消しているフレージアは、魔物の気配にも興味を示さないでしょうね。

このまま2人を待つのも実に退屈ですが…。

しかし、この場所を動く訳にもいきませんから、ここは特に何を為す事もなく、静寂を保つとしましょう。

魔物も、この森に留まる何人かの者達を食らう事で気が鎮まる事でしょうし。

…。

このアルティフ、グレンベール・アルシオンの側にいる身でありながら、未だ冷血と判断されそうですね。

私の魔法を書き換えて飛んでいったあの者も、きっと私を至極冷血な住人だと感じた事でしょう。

受けた恩に対して、礼を欠くのなら死を、と伝えた様なものですから。

ディエルシア族の異端とも言うべき私が、一族から追放され、放浪していた時の心境は、今もまだ胸の片隅に残っている…。

私達ディエルシア族の歪んだ選民思想ゆえ、より排他的な活動をすると、《冬枯れの牙》と何ら変わりないと、そう唱える者も少なからずいたでしょう。

瀕死状態の彼を、私は止めを刺すべきだと思いましたが、グレンベール・アルシオンは違いました。

結果、彼は復活を遂げた。

私は何も変わりはしない。

そう、多くの同族を葬ったあの頃と。

師匠は私に特殊な上級魔法を教えて下さいました。しかし、ディエルシア族を長く側に置く訳にもいかないのは、当初より理解していました。

お別れの時が訪れ、師匠の元を離れた私は、再び放浪の旅に出た。

私の一族のみならず、各地でも住人間の絆は破綻し、幾度となく無意味な死の事象を目の当たりにし、この世界の終わりを見透かした様に思う時もありました。

多くの神も姿を消し、争いは再び混沌としていく気配もありますが、そうならない様な気もしています。

あの女神による世界抹消計画も、高天魔四大将を率いる北の地聖王アーガーベルギルロによって阻止する事に成功し、女神アンメイレンは、女神の愚行を嘆き、対策を取った。

しかし、東西、南の地聖王を失ったまま、各大陸に高天魔四大将を配備しても、グレンベール・アルシオン以外、意味を成すのでしょうか。

その様な事を思っては、あの人には失礼な事でしたね。

先ほど気配を感じた者は、意外と早く私を探し当てた様ですね。

魔力を抑えているのも、限界はありますから。

ただ、グレンベール・アルシオンに、穢れた血で染めた場所を用意しておきたくもないので、少しだけ場所を変えますよ。

普段はこれでも冷静な振る舞いをしていますが、戦いの時は、その様にもいかない。

自分を奮い立たせるのは簡単な事。

私が一族から受けたもの、そして、私が一族に与えたものを、思い出せば良いだけですから。

ただ、戦慄を。
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