とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

sayure

文字の大きさ
上 下
234 / 472
第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その158

しおりを挟む
「お前は…」



遠くから眺めているなんて奴は、そうだろうな。



「人に加われない、淋しがり屋なんだろう?」



「…」



「どうした?当たりだろう」



俺を疎ましく思ってるけど、何かを期待してもいるんじゃないのか?オーロフ族が平和築ける様な奴らじゃないし、むしろ人と人の和を壊す方に力を注ぐ奴らだろう。

それを言ったら、他の人種もそうかも知れないけどな。

だけど、盗みを特技としてるオーロフ族の奴らが人を幸せにする事はない。

だからと言って、俺がこの世界でやる事なんて、何もない。

もちろん、この街なんて滅びてしまえばいいと思っているよ。

もし、俺がこの街を今と違う方向に向かわせてくれるかも知れないなんて思ったとしたら、それはハズレだ。



「私を愚弄するつもりか。お前もまた、破滅の扉に手を掛けると?」



「…っ!」



お前もオーロフ族と変わらねえよ。逆らったら殺すって言いたいんだろう?何でお前の言う事を聞かないといけない?お前は何様なんだよ。

しかし、こいつ、どれだけ強い念力持ってんだよ。体が全然動かないぞ。



「ならば、問おう。お前は、誰だ?」



俺…?

俺は。

誰なんだろうな?

命乞いして、名前を否定したからじゃない。

本当に、俺は矢倉郁人やぐらいくとだったのかな。

この世界に先に辿り着いたもう1人の俺よりも劣る、この俺は、誰だ?

勝手に矢倉郁人と思い込んでただけじゃないのか?

あのしもべが記憶を植えつけただけの可能性もあるよな。

母さんは、名前を言う事で自分の存在がここにあるって。

証明しないと、こんなにも自分が消えそうに思えるのかもな。

誰が、俺を矢倉郁人だと証明してくれる?

それは、俺自身が言い張るしかない。

本当は、言わないといけなかった。

名前を否定してはいけなかった。

例え、命を失おうとも。



「俺は…」



でも、もうどうでもいい。俺は、この世界ではいないに等しい。それでいい。そうでないと、俺は生きてはいけない。



「テテだ」



パルンガがそう呼んでいる。なら、それでいいじゃないか。テテは、貴方って意味だろうけどな。



「お前の名前は、何と言うんだよ…。俺は、教えたぞ」



聞いてみたけど、お前の名前に興味なんかない。答えなくてもいい。



「私の名は、裸眼…。裸の眼だ」



裸眼?

裸眼だって?

前に会ったか?

いや、何か違う。違和感がある。だけど、かなり近い響きの名前?

俺は、こいつに近い存在にあった事がある?

だけど、思い出せない。

しかも、そんなに前の事じゃない。

何処でだ?

こいつに近い存在に、何処であった?



「私の名前を聞いて、その様な反応をするか?ならば、僅かばかりの時間をお前に与えよう。その時まで、答えを用意しておくが良い」



…。



…。



…。



「はっ!?」



俺は夢を見ていたのか?

目の前には、ガラス戸を開けて最初に見た薄暗い部屋。

俺はずっとここで立ち尽くしていたのか?

立ちながら夢を見るなんて、そんな事初めてだぞ。



「ほう?お前が噂の男か…」



奥の部屋から、バサバサの長い前髪を垂らして顔を覆った着物姿の男が、体をフラフラさせながら現れた。



「どうした?物珍しそうな顔をして」



こいつに耳はない。なら、オーロフ族でも、東角猫トーニャ族でもない。それとも、獣化していないだけか?



「ここには、あの虫唾の走る垂れ耳オーロフ族なんていないぞ。俺だけだ…」



じゃあ、やっぱりこいつが?



「俺は、リョウマ族だ」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

処理中です...