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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その153
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俺は一時的に、ハムカンデから解放された。それも明後日まで。
明後日には、魔闘石を胸に取りつけるか、黒眼五人衆のナグと戦って、力を証明するしかない。
魔闘石を取りつけるなんて、冗談じゃねえ。改造人間みたいになって、生き続けるのなんて、ゴメンだ。俺はロボットじゃないんだから。
だからって、黒眼五人衆みたいな殺人集団とまともに戦うのも現実的じゃない。《冬枯れの牙》のラグリェみたいな快楽殺人者になんて、もう二度と関わりたくなかったのに。
それとも、パルンガを助け出して、この街から逃げる方法を探るか。
敵だらけの城に行って、奴らに気づかれずにパルンガを連れ出して、この街から逃げ出す?
パルンガを閉じ込めた部屋には、鍵も掛けられている。
うまくやり遂げられるとは思えない。
東角猫族のティデの奴。ハムカンデに会わなければ、この街から逃げられたものを。
やっぱり、この世界には信用できる奴がいないって、よくわかったよ。
手の込んだはめ方しやがって。
…。
あのクソ女め、何か言ってやらないと気が済まないな。
あいつの家にでも行ってやるか。
でも、意外と強かったら、逆にやられるだけか。
ああ、くそっ。
俺のせいだな。
…?
あ、黒い灯籠…。
俺、誰かにこれを壊せとか言われた様な気がする。
そんな事したら、感情なしで斬ってくるゲルにまた襲われた時に、戦える場所がなくなるだけだ。そうしたら、剣さえ満足に振れず、なす術もなくやられるだけだろ。
そんな事できる訳ないよな。何でそんな気になったんだろ。
…。
今は、いい考えが浮かばないな。
俺1人で、パルンガをどうやって助けられる?
どう考えてもムリだ。
力任せで何とかなる相手じゃない。
誰か力になってくれる奴を探すか?
東角猫族は、オーロフ族の奴隷だったよな?
今の現状を打破したいと思う、反骨精神のある東角猫族なんていないかな。
でも、そんな奴がいたら、こんな街に居続けてはいない。
ここにいたら、歯向かう気すらなくなる様な気がする。
それどころか、ティデみたいに、自分が立てた計画をハムカンデ自身に伝えて、俺をはめて、ハムカンデによくやったという褒め言葉を待つ様な、欲求を満たす方向がおかしくなってくるんだろうな。とんでもなく媚びる女だ。
今日は、このままボルティアに向かうべきか、それとも何か行動を起こすべきか。
時間は貴重だ。でも、何の案もないのに、ただ空回りして、より状況を悪くしても仕方がない。
気持ち悪い黒い家が並んでるのを見るのも、少し慣れてきたかな。
何も書かれていない看板の置かれる位置、または何故か圧の強い家などで、それぞれの家の違いが少しわかってきた。
表に出てるオーロフ族の何人かが、俺を陰険な目で見て、薄ら笑いしてやがる。
オーロフ族って、東角猫族のピンと立った耳と違って、根っこから垂れた耳してんな。
神経死んでんじゃねえのか?
お前達が特別だなんて思えねえ。
黒眼五人衆やハムカンデのおかげだろう?お前達オーロフ族がでかい顔してられんのは。
俺が奴らの横をすれ違うと、こき使ってやろうかとか、そんな低次元な言葉を言ってくる。
俺がハムカンデの宝酷城に行くっていう事は、結局、俺がハムカンデらオーロフ族に奴隷同然にされるって事を意味してんのかも知れない。
「クフォフォフォ。いい顔をしておるなぁ。城で会ったのだろう?ゼドケフラーを生け贄に差し出したのだから、生還も必然よのう?」
オーロフ族の、右目辺りに大あざのあるジジイか。こいつ、感じ悪いからあまり接したくないんだよな。
「ペニンを見かけなくなったが、お前はまだ見かけている。クフォフォフォ、また違った役割を与えられるだろうが、役不足なら、お前に残るのは亡き骸のみだ。しっかりと働けよ…。オーロフ族のためにだ」
こいつは、ペニンが何でいなくなったのか知っていそうだな。別に聞きたくもない。
いや、こいつは話したがりだし、何も聞かないっていうのも損になるのか?
ペニンの事じゃなくても、何か情報を聞き出すのは悪くない。
「オーロフ族が眩いか?そうじゃろう…、そうじゃろうて」
「昨日、俺が連れたゼドケフラーは、エズアの怨念に導かれてこの街に来たみたいな事を言っていたよな?」
「悲劇は繰り返されるという事だ。これで、ゼドケフラーも絶滅。ハムカンデも溜飲を下げる事になる訳じゃな」
こいつ、ハムカンデを様づけしなかったな。オーロフ族から見れば、崇めるほどの奴には映らないって事なのか?
東角猫族や、あのペニンって人は、ハムカンデ様って言ってたのに。
絶対服従の奴は、考えが鈍くなる気がする。もしかして、俺が力を借りるべきなのは、ハムカンデとそこまで立場が大きく下回らない奴らなのか?
「ハムカンデは、賢いと思うよな?オーロフ族の中で、一番…」
「クフォフォフォ…」
ダメだ。バカにされて、笑われてる。言葉選びがヘタだよな、俺。まぁいいや。とりあえず、会話を続けてみるべきだ。
「俺は強いらしい。だから、力を貸してほしいと言われたんだ。あんたから見て、そう思うか?」
「おもしろい事を言うな。リョウマ族にも、機会をやらんといかんからじゃろう。死ねば、それまでよ」
こいつも、リョウマ族を知ってるのか。
「ちなみに、あんたの知っているリョウマ族は、強いのか?」
「オーロフ族の下に入れば、そうとも思わん。お前は、どうかな?」
「…」
「俺?さあね…」
オーロフ族の下に入れば?
そうは思わない。
俺の場合はどうかな、そう言ったのか?
リョウマ族の誰かが、オーロフ族の下に入った事がある?
もしかして、この街の何処かに、リョウマ族がいるのか?
もし、まだ生きているのなら、俺がこの街で力を借りる相手は、そいつだ。
明後日には、魔闘石を胸に取りつけるか、黒眼五人衆のナグと戦って、力を証明するしかない。
魔闘石を取りつけるなんて、冗談じゃねえ。改造人間みたいになって、生き続けるのなんて、ゴメンだ。俺はロボットじゃないんだから。
だからって、黒眼五人衆みたいな殺人集団とまともに戦うのも現実的じゃない。《冬枯れの牙》のラグリェみたいな快楽殺人者になんて、もう二度と関わりたくなかったのに。
それとも、パルンガを助け出して、この街から逃げる方法を探るか。
敵だらけの城に行って、奴らに気づかれずにパルンガを連れ出して、この街から逃げ出す?
パルンガを閉じ込めた部屋には、鍵も掛けられている。
うまくやり遂げられるとは思えない。
東角猫族のティデの奴。ハムカンデに会わなければ、この街から逃げられたものを。
やっぱり、この世界には信用できる奴がいないって、よくわかったよ。
手の込んだはめ方しやがって。
…。
あのクソ女め、何か言ってやらないと気が済まないな。
あいつの家にでも行ってやるか。
でも、意外と強かったら、逆にやられるだけか。
ああ、くそっ。
俺のせいだな。
…?
あ、黒い灯籠…。
俺、誰かにこれを壊せとか言われた様な気がする。
そんな事したら、感情なしで斬ってくるゲルにまた襲われた時に、戦える場所がなくなるだけだ。そうしたら、剣さえ満足に振れず、なす術もなくやられるだけだろ。
そんな事できる訳ないよな。何でそんな気になったんだろ。
…。
今は、いい考えが浮かばないな。
俺1人で、パルンガをどうやって助けられる?
どう考えてもムリだ。
力任せで何とかなる相手じゃない。
誰か力になってくれる奴を探すか?
東角猫族は、オーロフ族の奴隷だったよな?
今の現状を打破したいと思う、反骨精神のある東角猫族なんていないかな。
でも、そんな奴がいたら、こんな街に居続けてはいない。
ここにいたら、歯向かう気すらなくなる様な気がする。
それどころか、ティデみたいに、自分が立てた計画をハムカンデ自身に伝えて、俺をはめて、ハムカンデによくやったという褒め言葉を待つ様な、欲求を満たす方向がおかしくなってくるんだろうな。とんでもなく媚びる女だ。
今日は、このままボルティアに向かうべきか、それとも何か行動を起こすべきか。
時間は貴重だ。でも、何の案もないのに、ただ空回りして、より状況を悪くしても仕方がない。
気持ち悪い黒い家が並んでるのを見るのも、少し慣れてきたかな。
何も書かれていない看板の置かれる位置、または何故か圧の強い家などで、それぞれの家の違いが少しわかってきた。
表に出てるオーロフ族の何人かが、俺を陰険な目で見て、薄ら笑いしてやがる。
オーロフ族って、東角猫族のピンと立った耳と違って、根っこから垂れた耳してんな。
神経死んでんじゃねえのか?
お前達が特別だなんて思えねえ。
黒眼五人衆やハムカンデのおかげだろう?お前達オーロフ族がでかい顔してられんのは。
俺が奴らの横をすれ違うと、こき使ってやろうかとか、そんな低次元な言葉を言ってくる。
俺がハムカンデの宝酷城に行くっていう事は、結局、俺がハムカンデらオーロフ族に奴隷同然にされるって事を意味してんのかも知れない。
「クフォフォフォ。いい顔をしておるなぁ。城で会ったのだろう?ゼドケフラーを生け贄に差し出したのだから、生還も必然よのう?」
オーロフ族の、右目辺りに大あざのあるジジイか。こいつ、感じ悪いからあまり接したくないんだよな。
「ペニンを見かけなくなったが、お前はまだ見かけている。クフォフォフォ、また違った役割を与えられるだろうが、役不足なら、お前に残るのは亡き骸のみだ。しっかりと働けよ…。オーロフ族のためにだ」
こいつは、ペニンが何でいなくなったのか知っていそうだな。別に聞きたくもない。
いや、こいつは話したがりだし、何も聞かないっていうのも損になるのか?
ペニンの事じゃなくても、何か情報を聞き出すのは悪くない。
「オーロフ族が眩いか?そうじゃろう…、そうじゃろうて」
「昨日、俺が連れたゼドケフラーは、エズアの怨念に導かれてこの街に来たみたいな事を言っていたよな?」
「悲劇は繰り返されるという事だ。これで、ゼドケフラーも絶滅。ハムカンデも溜飲を下げる事になる訳じゃな」
こいつ、ハムカンデを様づけしなかったな。オーロフ族から見れば、崇めるほどの奴には映らないって事なのか?
東角猫族や、あのペニンって人は、ハムカンデ様って言ってたのに。
絶対服従の奴は、考えが鈍くなる気がする。もしかして、俺が力を借りるべきなのは、ハムカンデとそこまで立場が大きく下回らない奴らなのか?
「ハムカンデは、賢いと思うよな?オーロフ族の中で、一番…」
「クフォフォフォ…」
ダメだ。バカにされて、笑われてる。言葉選びがヘタだよな、俺。まぁいいや。とりあえず、会話を続けてみるべきだ。
「俺は強いらしい。だから、力を貸してほしいと言われたんだ。あんたから見て、そう思うか?」
「おもしろい事を言うな。リョウマ族にも、機会をやらんといかんからじゃろう。死ねば、それまでよ」
こいつも、リョウマ族を知ってるのか。
「ちなみに、あんたの知っているリョウマ族は、強いのか?」
「オーロフ族の下に入れば、そうとも思わん。お前は、どうかな?」
「…」
「俺?さあね…」
オーロフ族の下に入れば?
そうは思わない。
俺の場合はどうかな、そう言ったのか?
リョウマ族の誰かが、オーロフ族の下に入った事がある?
もしかして、この街の何処かに、リョウマ族がいるのか?
もし、まだ生きているのなら、俺がこの街で力を借りる相手は、そいつだ。
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