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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その152

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「私が起因、開という言葉を会話の中で使ったとしても、それは有効だ。そして君は返事をした。君が一度でも賛同する返事の前に、否定を意味する言葉を吐けば、無効ともなっていたがね。私は用心深くてね、君が嘘をつくのではと不安なのだよ。だから、この街とこの街の周辺一帯から抜け出す事を禁じさせてもらった」



何か突起のある物で、背中に傷がつくほど強く言葉を書かれた感じがする!

くそっ…!痛いじゃねえかっ。

これが、あの東角猫トーニャ族のティデが言っていた彫魔法ジェルタってやつか。あの女め、俺達がこの街からすでに出られないみたいな事言ってたけど、ウソだったんだな。俺達をこの城に向かわせるために適当言いやがって。

今、俺は出られなくされたんだぞ!



「明後日まで待ってやろう。その時に、君の実力が試される訳だな。相手は、お前との復讐に意欲を見せているメベヘ、ではなく、小鈴ショウレイか、そこにいる包帯に包まれた痛々しい男にしようかと思っている」



メベヘは意外そうな表情を浮かべて、ハムカンデを見たな。そして、恨む様な目で俺を見ている。多分、メベヘは明後日まで待たずに、俺に攻撃を仕掛けようとしてくるだろうな。用心しなきゃ。

明後日まで、パルンガを連れてこの街から脱出できなければ、あのでかバカ女の小鈴か、包帯ぐるぐる君と戦わなくちゃならない。最悪、包帯ぐるぐる君だな。



「どちらが好みかな?」



好み?何言ってんだ。

でも、何か答えないとかないとまずいな。



「包帯を巻いて俺を油断させておいて、実は強いんだろ?そういう奴は許せないな…」



ここが地球だったら、地球人最低ランクNo.1に選ばれただろうな。ケガ人を戦う相手に指名するなんて、中々できる奴はいない。

もちろん、この世界の奴だから、そこまで弱い訳がないとは思う。

でも、俺がある程度手加減しながら戦えるなら、相手にとっても悪くはない戦いじゃないか?

いや、何言ってんだ、俺。



「出番が来たな、ナグよ。名誉挽回の機会は、意外と早くやって来た。素晴らしき、出会いだ」



ナグ?何処かで聞いた事がある名前だな。



「よろしくねー。俺は包帯を巻いているけど、君の言う通り、そこまで弱くはないんだよー?」



「包帯を巻いたその男は、前にこの場所である過ちを犯したが、私の力で命を留めている。名誉挽回となる機会だ、意欲は高いだろうな」



過ち、か。何だ、その過ちは。



「この街の警護役としても役立つ古球磨ごくま族の1人だ。弱くはないぞ?」



古球磨族??

そうだ!ハムカンデが約束を破って、エズアが暴れたとされる天守層のこの場所で、ハムカンデの側近として構えていた黒眼こくがん五人衆の1人、そいつの名前だ!?

ナグは、エズアにやられたんじゃないのか?まだ生きていただなんて。傷が癒えていないのは、エズアが暴れたのはずっと前だと思っていたけど、そんなに前の事じゃないのかも知れない。

でも、傷が深くなったり、急に治ったり、それを繰り返している状態を、下町からこの城に来るまでに何回も見ている。このナグには、何か秘密がある気がするな。



「俺の腐乱天元斬り、ある凶暴な奴にかわされて、その後、酷い目に遭ったんだー。油断大敵だよね?だけど、その過ちはもう二度と繰り返さない。練習台には感謝だねー」



練習台だと?その言い方だと、まるで誰かを斬って試したと言わんばかりだな。こいつも、気が狂ってる1人って事だな。



「今日から、またボルティアに泊まるが良い。料金は私が払ってやろう。明後日にまた、この城で会う事を楽しみにしているよ」



この場所から抜けられる。一時的にでもいい。このまま殺されるよりマシだ。

パルンガはどうやって助ける?

でも、今は頭が働かない。

今は、このまま去るべきだ。

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