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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その151

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「そうか?見事、私の宝の1つを引き出したな。それならば話が早い」



パルンガはいつ返す?まさか、俺がこいつの要求を満たすまで返さないつもりか?それとも、返す気がない?

メベヘが俺をニヤつきながら睨んでいる。仲間をも平気で斬りつける様な奴らが、他人なんてなおさら殺す事に躊躇う事なんてないだろうな。

頭の中で、俺をどう殺そうか想像して楽しんでいるから、その気持ち悪い笑みが浮かぶんだ。

恐ろしい…。

この世界はやっぱり、正気じゃない奴らばかりだ。

早く夢魔操エイジアを手に入れて、この街を出たい。

その夢魔操。

東角猫トーニャ族のティデの話だと、夢魔操をハムカンデとエズアが偽物と判断したという事だけど。その時の偽物というのが願いを叶える箱、夢魔操なら、俺は本物の可能性があると思っている。

ハムカンデのオーロフ族は窃盗が得意らしいからな。夢魔操が盗まれた物だとしたら…。魔力が夢魔操のゲージを満たしていない状態だと、願いが叶わない。そのゲージを満たすための魔法を知らないし、その事すらわかっていない可能性もある。勝手に、偽物と判断しているなら、手にも入りやすい。

夢魔操のゲージに魔力を入れる魔法。

吸魔晶エイマジクルスとか、あの片眼鏡男が言ってたよな。それを知らないと、夢魔操を持っていても意味がない。

俺もその魔法知らないし、そもそも俺に魔力なんかないと思うから、唱えられないだろうな。

…魔法を使える様になる必要があるのかな。

呪文をただ言えばいいとか、そんな問題じゃないよな。

よく考えると、夢魔操を手に入れても前途多難ってやつだな。

これじゃ、ギルロの体と魂を発見して、あのしもべに教える方が楽じゃないのか?

わからない。

もう、楽な方法なんてないんだろうな。

でも、とりあえず、手に入れて損はないよな。



「では、君の潜在能力に期待して、だ」



「よお!」



ポン!



「やあ!」



ポン!



「その鎧を脱ぎなさい。これから毎日、君の体に魔力を注入するため、胸に魔闘石ロワというものをつけてもらおうか」



「え!?」



「一度つけたら、そう簡単に外す事はできないが、悪いものではない、安心してほしい」



「ま、待って!俺は弱くないから、そんなもん必要ないぞ!」



「ほう?確かに黒眼こくがん五人衆のメベヘの腕を落とした事は賞賛に値する事だ。では、今度はここにいる小鈴ショウレイと戦い、見事、勝利を収める事ができたなら、君の言う事を信用しようじゃないか。どうかな?」



「だははっ!おもしれえ、だなあ?私とやるか?そこの小せぇ坊主の腕落として、得意げになってる、だなあ?」



冗談じゃねえ!魔闘石を胸に植えつけるだなんて、改造人間になるつもりはない!俺は、人間のままでいたいんだ!

メベヘと戦うのもイヤだし、このでかい怪力そうなバカ女とも戦いたくない!

ああ、どうしたらいいんだよ!?

そこの障子張られた隙間から外が見える。エズアも、そこから逃げたんじゃないのか。ここは5階か?飛び降りたら死ぬだろうな。じゃあ、ムリだ。後ろの幾重にもなった分厚い襖は、何かの仕掛けで開く感じになってるから、俺じゃあ開けられない。

どうしようか!?

とにかく、何かを言わないと!



「俺は今はまだ、本当の力が戻ってはいないんだ。その俺に今、戦わせるのか?もう数日経てば、本当の力が見せられる。それを見たくはないのか?」



ああ…。

ハムカンデの額にさらに血管がたくさん浮き出てきたな。かなり神経質な奴なんだな。このまま血管でも切れて、倒れてくれねえかな…。



「クファクファッ!良いだろう、その時にお前の力を見せてみろ。ただし、私が起因、開と言ったら、返事をしろ。それが、この街で約束を交わすやり取りとなる。仕来りだよ、わかったかな?」



わかったよ、何でも言ってやるよ。早く、この部屋から出ないと。

でも、何か聞き慣れない事言ったよな?何て言ったら、返事しろだって?

何か違和感があるな。

ハムカンデの表情が険しくなったぞ。両手を前に伸ばして、片手の掌を上に向けて、もう片方の手を人差し指と中指以外を折って俺に向けている。

何だ?

ただの仕来り…。

こいつらの約束は、こんな儀式掛かってんのか?

何なんだよ。

じゃあ、お前もちゃんと本物の夢魔操を渡せよ。

約束だからな。



「わかったよ!」



「地点周辺、下足束縛結伝…」



ん?

何だ?まだ何か続くのか?



地場止クレイグ!」



「何っ!?」



「ぐぁあああッ!!」
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