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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その149
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今、場所を奪われたって言ったのか?
この場所を奪いに攻め込んだのが、ハムカンデなんかのオーロフ族や東角猫族、古球磨族そしてゼドケフラーのエズア。
攻め込まれて、土地を奪われた?
「多くの者達が姿を消した。私はこの場所に監禁され、留まっている」
土地と自由を奪われて、ここに長い間閉じ込められている。俺なら耐えられない。怒りが込み上げて、そしてつらくて、悲しくて、体も精神もボロボロになる。しかも、こんな暗闇の中で1人きりなんて。
「何で耐えられるんだ?」
「今のところ、選択肢がないからだよ。皆無とまでは言わないが。それに、貴方が現れた。全く無駄ではなかった様だと、思えるんだよ」
バカな!俺ごときが現れたって、何の力にもなれはしない。勝手に期待するのは止めてくれ。荷が重すぎる。
残念だけど、あんたはこのままだ。
俺には、救う事はできないんだから。
黒い灯籠も、壊せるほど余裕のある時間なんて作れない。
仮にこの場から解放されてもだ。
「その表情は、とても興味深い。私の言葉に見合った実力がないと、意気消沈してるかの様だよ」
実際にその通りだと思う。何を見て、そう言ってんのかよくわからないな。もしかして、俺のこの体が特殊なものなのかも知れないけど。
俺の体がこの世界の体なのは間違いない。だけど、右手の炎が膨れ上がって、俺の右腕に吸い込まれていかない限り、超人的な攻撃なんてできる訳でもないし、特別な事はない。普通だ。
右手に燻ってる紫色の炎は、今も相変わらず、そこから膨れ上がったりしないまま。
先ほどハムカンデがいた場所でこの炎が活性化してくれれば、俺は力を得たのに。
いや、結局ダメだっただろうな。
強敵が複数いて、敵自体も多かった。
パルンガがいても、勝って城から出るのはムリだっただろう。
「私のよく知っている者が、この城の外、黒い灯籠の外にいる。貴方に少しばかりの手助けができるかも知れない。いずれにしても、黒い灯籠が破壊されない限り、今の私では不可能だが…」
また、俺を利用しようとする奴が現れたな。バカにしやがって。東角猫族のティデといい、こいつといい。
そうだな、ここは俺もこいつを利用するべきだ。何で俺ばっかり利用され続けないといけないんだよ。
「心眼、この場所に住んでいたって言うなら、この大陸の北にある橋からギルロの城のある第6大陸に行けるのは知ってるよな?今も、普通に行けるのかな」
「第6大陸への橋は、渡れるかも知れない。だけど、渡れない可能性もある。何故なら、この大陸の東にすら行けない状況が続いてるくらいだ、それはわからないさ」
何だ、どいつもこいつもいい加減だな。自分のところの大陸しか興味がないんだな。でも、俺もそうか。自分の国以外なんて、全く詳しくはないもんな。
ただ、ここの大陸とやらが、どのくらいの規模の事を言うのかわからない。規模が小さければ、隣り街に買い物に行く感覚で行く事もあるんじゃないのか?
こいつが知らなくても、他の人は知ってるかも知れないな。
第2大陸は完全に復元されていないみたいだったし、今なら規模が小さいというのはあり得る。
そう言えば、何で東に行けないんだったかな?
えーと。
パルンガが、氷の王とか言ってたかな?
白い5mくらいの長さの柱。水色の装飾があるやつ。あれがこの大陸を東西に分けて行き来できなくしてるんだよな。
確か、そうだよな。
「氷の王って、知ってる?」
「氷の王…。よくわからないな。その氷の王がどうしたのかい?」
この大陸の東に行けない様に柱を立てた人だと思うけど。
「いや、わからないならいいよ」
「私の知らない所で色々な事が起こっている様だね。すまないが、その事について、何も教えてあげられない」
フフ、全ての事について、だろうが。さっきからよ!この無知野郎が。俺を利用するしか頭にない超自己中野郎だな、さてわっ。
「もし、東に行きたいのなら、飛んでいけばいいじゃないか。何故、その様にしないんだ?」
「鳥じゃないからだよ…」
「わかった。そういう事なら、私は口出ししない。黙っておく事にしよう」
何なんだよ、こいつはよ。何で、こいつは俺が飛ぶと思ってるんだ?もしかして、俺は鳥類に分類されてると思われてんのか。
それとも、もう1人の俺が飛んでたのか?
「もしかして、さ」
「どうした…?」
「矢倉郁人って名前を、聞いた事がある?」
もう1人の俺がこの大陸に来ていたのは、東角猫族のメルシィーニの言葉で明らかだ。こいつも、知っているんだろ?
言ってみろよ。その名前は、お前のだろって。
「…」
「どうした?」
「貴方がその名前を口に出すとはね。意外だよ。確かに、聞いた事はあるさ…」
俺が想像していたのとは違う反応だな。何だ、印象が悪いのか?
この大陸で、もう1人の俺の事を知っていそうな奴の反応が、人それぞれで違うな。
まさか。
もう1人の俺は、悪人にでもなったか?
「この世界において重要な位置づけにあった者に牙を向けたのだから。彼の死は、必然だったのだろうさ」
「!?」
「…貴方は彼に思い入れがある様だね。どの様な理由があるにせよ、許される事じゃない」
もう1人の俺を否定したな?
じゃあ、俺をも否定したのと同じだよ。
俺をよく知らずに適当な事を言ったな。残念だけど、お前の願う黒い灯籠の破壊は諦めろよ。
お前は、この牢屋で死に絶えればいい。
それが、お前にはふさわしいんだよ。
ガン!ガン!
「おい、お前!ハムカンデ様がお呼びだよ?」
「次はお行儀良くする事だな、命に関わる事だからね」
あ、俺もう出れるのか?
「…」
あれ?俺の他に、この牢屋に誰かいなかったかな。
いや、気のせいか?
でも何かしゃべっていた様な。
…。
気のせいだな。
こんな暗いところに1人でいるなんて、もううんざりだ。
この場所を奪いに攻め込んだのが、ハムカンデなんかのオーロフ族や東角猫族、古球磨族そしてゼドケフラーのエズア。
攻め込まれて、土地を奪われた?
「多くの者達が姿を消した。私はこの場所に監禁され、留まっている」
土地と自由を奪われて、ここに長い間閉じ込められている。俺なら耐えられない。怒りが込み上げて、そしてつらくて、悲しくて、体も精神もボロボロになる。しかも、こんな暗闇の中で1人きりなんて。
「何で耐えられるんだ?」
「今のところ、選択肢がないからだよ。皆無とまでは言わないが。それに、貴方が現れた。全く無駄ではなかった様だと、思えるんだよ」
バカな!俺ごときが現れたって、何の力にもなれはしない。勝手に期待するのは止めてくれ。荷が重すぎる。
残念だけど、あんたはこのままだ。
俺には、救う事はできないんだから。
黒い灯籠も、壊せるほど余裕のある時間なんて作れない。
仮にこの場から解放されてもだ。
「その表情は、とても興味深い。私の言葉に見合った実力がないと、意気消沈してるかの様だよ」
実際にその通りだと思う。何を見て、そう言ってんのかよくわからないな。もしかして、俺のこの体が特殊なものなのかも知れないけど。
俺の体がこの世界の体なのは間違いない。だけど、右手の炎が膨れ上がって、俺の右腕に吸い込まれていかない限り、超人的な攻撃なんてできる訳でもないし、特別な事はない。普通だ。
右手に燻ってる紫色の炎は、今も相変わらず、そこから膨れ上がったりしないまま。
先ほどハムカンデがいた場所でこの炎が活性化してくれれば、俺は力を得たのに。
いや、結局ダメだっただろうな。
強敵が複数いて、敵自体も多かった。
パルンガがいても、勝って城から出るのはムリだっただろう。
「私のよく知っている者が、この城の外、黒い灯籠の外にいる。貴方に少しばかりの手助けができるかも知れない。いずれにしても、黒い灯籠が破壊されない限り、今の私では不可能だが…」
また、俺を利用しようとする奴が現れたな。バカにしやがって。東角猫族のティデといい、こいつといい。
そうだな、ここは俺もこいつを利用するべきだ。何で俺ばっかり利用され続けないといけないんだよ。
「心眼、この場所に住んでいたって言うなら、この大陸の北にある橋からギルロの城のある第6大陸に行けるのは知ってるよな?今も、普通に行けるのかな」
「第6大陸への橋は、渡れるかも知れない。だけど、渡れない可能性もある。何故なら、この大陸の東にすら行けない状況が続いてるくらいだ、それはわからないさ」
何だ、どいつもこいつもいい加減だな。自分のところの大陸しか興味がないんだな。でも、俺もそうか。自分の国以外なんて、全く詳しくはないもんな。
ただ、ここの大陸とやらが、どのくらいの規模の事を言うのかわからない。規模が小さければ、隣り街に買い物に行く感覚で行く事もあるんじゃないのか?
こいつが知らなくても、他の人は知ってるかも知れないな。
第2大陸は完全に復元されていないみたいだったし、今なら規模が小さいというのはあり得る。
そう言えば、何で東に行けないんだったかな?
えーと。
パルンガが、氷の王とか言ってたかな?
白い5mくらいの長さの柱。水色の装飾があるやつ。あれがこの大陸を東西に分けて行き来できなくしてるんだよな。
確か、そうだよな。
「氷の王って、知ってる?」
「氷の王…。よくわからないな。その氷の王がどうしたのかい?」
この大陸の東に行けない様に柱を立てた人だと思うけど。
「いや、わからないならいいよ」
「私の知らない所で色々な事が起こっている様だね。すまないが、その事について、何も教えてあげられない」
フフ、全ての事について、だろうが。さっきからよ!この無知野郎が。俺を利用するしか頭にない超自己中野郎だな、さてわっ。
「もし、東に行きたいのなら、飛んでいけばいいじゃないか。何故、その様にしないんだ?」
「鳥じゃないからだよ…」
「わかった。そういう事なら、私は口出ししない。黙っておく事にしよう」
何なんだよ、こいつはよ。何で、こいつは俺が飛ぶと思ってるんだ?もしかして、俺は鳥類に分類されてると思われてんのか。
それとも、もう1人の俺が飛んでたのか?
「もしかして、さ」
「どうした…?」
「矢倉郁人って名前を、聞いた事がある?」
もう1人の俺がこの大陸に来ていたのは、東角猫族のメルシィーニの言葉で明らかだ。こいつも、知っているんだろ?
言ってみろよ。その名前は、お前のだろって。
「…」
「どうした?」
「貴方がその名前を口に出すとはね。意外だよ。確かに、聞いた事はあるさ…」
俺が想像していたのとは違う反応だな。何だ、印象が悪いのか?
この大陸で、もう1人の俺の事を知っていそうな奴の反応が、人それぞれで違うな。
まさか。
もう1人の俺は、悪人にでもなったか?
「この世界において重要な位置づけにあった者に牙を向けたのだから。彼の死は、必然だったのだろうさ」
「!?」
「…貴方は彼に思い入れがある様だね。どの様な理由があるにせよ、許される事じゃない」
もう1人の俺を否定したな?
じゃあ、俺をも否定したのと同じだよ。
俺をよく知らずに適当な事を言ったな。残念だけど、お前の願う黒い灯籠の破壊は諦めろよ。
お前は、この牢屋で死に絶えればいい。
それが、お前にはふさわしいんだよ。
ガン!ガン!
「おい、お前!ハムカンデ様がお呼びだよ?」
「次はお行儀良くする事だな、命に関わる事だからね」
あ、俺もう出れるのか?
「…」
あれ?俺の他に、この牢屋に誰かいなかったかな。
いや、気のせいか?
でも何かしゃべっていた様な。
…。
気のせいだな。
こんな暗いところに1人でいるなんて、もううんざりだ。
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