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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その92

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俺達の頭の空を飛び回っていた奴は、姿を消した。

俺達の事をつけていると感じたパルンガが、気のせいだって事でいいのか?

どちらにしろ、俺達は進まなきゃ行けないんだ。

しかし、北に行けば行くほど、街はないと感じる。人が行き交う道と思わせるこの道も、道幅が狭くなって、草の丈がある場所が目立つ様になった。草がたまに鉄靴に引っかかる。

あまり人が通らない場所…。

それは仕方がないとして、獣までも見かけないっていうのは、どういう事だ?

あの猫女みたいな奴らが、獣から魔力を奪って、殺しているのか?

人がここまで来ていないのに、それはないか。

パルンガはたまに鼻をヒクヒクと動かして、周りを見回す事がある。何かの臭いを感じているのか?

食べ物?

それとも、ベルダイザーの臭い?

いや、あの三つ目のハイハイする化け物をベルダイザーと間違えたくらいだからな。臭いでなんて、到底無理だろう。



「テテ」



「何だ、パルンガ」



パルンガが鼻をヒクヒクさせて、必死に首を動かしてるな。

何だ?この辺りに何かいるのか?



カチャッ。



剣を構えた方がいいんだよな?パルンガ。



「何か、いい匂い…。するど!」



いい匂い…?



思わず剣を構えたこの姿、どうしてくれるんだ。ブタウサギ。



「テテ、しないか?」



「しねえよ!」



あー、何だその目は?だいぶ鼻悪ぃんだな、こいつ、戦いじゃ役に立たねぇわ、鼻悪ぃわ、名前はないわで、ゴミかよ、って思っただろう、このクソブタウサギがっ!



「テテ…!」



「ああ!?」



「ナワンティの匂いだど!」



「ナ、何それ?ナワンティ…?」



縄のお茶…かな?ウゲッ、まずそうじゃねぇか。とても香りを嗅ぎたいとは思えねぇ…。多分、俺の知らない食べ物の名前だろうな。



パルンガ、鼻をヒクヒクしてるのは、食べ物の匂いがするからだったのか。



何か、俺もお腹が減ってきたかな。



ん?





「どうした?テテ」





「いや、何か…」





気のせいかな?





「!?」





これは、多分。



風を切り裂く音…。



でも、気のせいか?



何かが近づいてくる感じの音に思えたけど。





「テテ?」





何だ、パルンガ。気にしていないのか?じゃあ、俺の空耳だな。




「悪ぃ、パルンガ。俺、何か…」





「テテ…!?」





…。





いや、何か。近づいてきていた様な気がしたんだけど、今は特に何も聞こえもしない…から、気のせいだろうな。





「あ…れ?」






いや、間違いない。





「パルンガ!」





何だ、近くからだぞ。何処から…。





「うっ!?」





ヒューッ…!





俺達にかかっていた陽を遮る、大きな影!?

さっきは、かなり上の方を飛んでいたのに!黒い翼を持った人間か!?俺達から姿を消した様に見せかけて、森の天辺スレスレの上を低空飛行して、俺達を追っていたんだ!



首を曲げて俺を見る目が、赤い…!

やっぱり、そうなんだろ…?



くそ…。



ついてねぇ。





「テテ!」





何だよ、動いてくれよ…!



俺は恐れてるんだ、こいつを。でも、そんな事言ってられない!こいつは、一端通り過ぎていったけど、ほら、空を旋回して、こっちへ向かってくる!俺達の前に着地しようとしているんだ!早く動かないと、殺される。





「…クハハッ!」





ブワッ!






ズサッ。





こいつ、黒い翼を翻す様な仕草をした途端、黒いマントに変えた!?勢いよく降りてきた割に、体のバランスが全く崩れずに、その場にずっといたみたいに平然と立っている。

こいつのただ1つの身のこなしを見てるだけでも、わかる。こいつは、強い…。



「テテ!」



「下手に動けば、お前らの死は確定。この赤祭傀士せきさいけしに逆らえば、どうなるかはわかっているだろう?」



その名前が余計、俺の頭をかき乱すんだよ…。あいつも、変な肩書きを言っていたよな。

こいつの身につけている服等は、両肩の赤い羽根以外、全て黒く染まっている。



「陽の光が地上の全てを照らすこの時間帯に、ただの2人で、堂々と開けた道を歩く。それ自体、特別不思議な事じゃない。ただ、畏怖の重圧を周囲に知らしめる事なく、ただひたすらこの道を歩き続ける。それは即ち、死を意味するのだ…」



や、止めろ…!

俺に構うんじゃねぇ!?





「興味深い反応を示したな…」





「お前は、俺を知っている。そうだな?」


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