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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その47
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「…お前は、この世界では少し特別な色を出している。それが、この世界を混沌に陥れる引き金にもなる訳だ。お前の死は、私だけが望むものではない、それは紛れもない真実なのだ…」
「何だと…?俺が一体、何を…」
「この世界が再び崩壊すれば、多くの住人が死の渦に呑まれる。お前も、そして私とて、危うい。ククク…。お前の打った一手は、悪手の様にも見えるが、そこから見える行く末は、輝かしいものだったのか…?」
もう1人の俺が、このカラス野郎の言う、天使を殺したという事を言ってるんだろうな…。まさか。そんな事をする訳ないだろ。でも、この世界の天使が、俺の思い描いている天使じゃないとすれば、有り得ない話じゃないのかもな…。でも、もう1人の俺、本当は死んでる…。もしかして、その天使に殺されたのかな?
もう1人の俺は、正直、今の俺の何歩も先に行っていた様な男の印象だ。死ぬまで、一体、何を考えてこの世界を歩いた?はっきりと何か知る手掛かりがあれば、良かったんだけどな…。
ポタッ…。
ポタッ…。
鎧の…腰から太ももを守ってる部分の下から、血が滴り落ちてきてやがる…。
何度も刺されてれば、急所を刺されてなくても、血が流れて…死ぬ。
今はアドレナリンが出てるから、痛みに気がいかないだろうけど…。
焦っても、こいつはそう簡単に倒せない…。ダメだ、焦っちゃ、ダメなんだ。
「下らんケンカで、この星を砕く様な住人どもを、牽制する働きにもなっている事を、お前は知らないだろう。《冬枯れの牙》は、お前の思う様な悪の根源、という訳でもないのだ、矢倉郁人。それとも、実態を知った上で、以前の私を退けたのか?それならば、お前こそ、悪の根源…か」
お前の話を聞けば聞くほど、お前ほど、黒く染まった心を持ってる奴はいないって、実感してきたんだよ。今さら、勘違いとは思わない。
何してやがる、早く剣を抜こうとしろよ…。
俺との会話を楽しむために、そこにいる訳じゃねぇだろう?
この間が空けば空くほど、体中の忘れかけてた傷の痛みが、脈を打ちやがる…。
はぁ…。
いっ、痛…。
このカラス野郎、もしかして、俺が奴の剣の黒塗装が一部剥がれた事に気づいたと、感づいたな…?
間を置いて、俺に傷の痛みを十分に感じさせて、俺の動きを鈍らせた状態から、また攻撃を再開するつもりか?
そうか…。
そうかよ?
「考えの浅いお前みたいな奴らに踊らされるなんてよ、ボーグン族も哀れだよな…。まぁ、どちらも悪い奴ら同士、仲良く…くたばれ、よ」
「クククッ…。お前も随分と荒んできたものだ。品が悪いぞ、矢倉郁人。お前もさぞ、この世界で生き、心身共に疲れ果てたのだろう。私が、お前の時間の針を止めてやろう。安らかな眠りとは、いかないが…な」
頭の中で、またあの声だ…。
俺は、矢倉、郁人だ…。
何で、お前なんかに命令されなきゃならないんだよ…?
俺の、中学時代か…?
このカラス野郎ともう1人の俺が戦った事があるから、奴の体にもう1人の俺の残留思念かなんかが残っていて、それが俺の心と重なるからなのか…?
思い出したくない自分がいる…。
何かとても嫌な事なのは間違いない。
こんな時に、心を乱すな。俺は戦いで優位な状況にないんだぞ?
冷静に…。
冷静に…。
『郁人…。お前は、お前なのよ。自分で、選んでお父さんに話して。お前は、私達の大切な…』
大切な…?
大切な、何だよ…?
俺の選択肢は、2つ用意されてる様な事を言ってるけど、本当は…
はい、って言えって、そう心では思ってるんだろ?
選択肢がある様な言い方して…。
俺は…
代わりなのかよ?
俺は、選択肢なんて、ないんだよ。
父さんを、よく見てみろよ。もう何やったって、手遅れなんだよ。
『…郁人。お父さん、今日は帰らないみたい。お仕事、忙しいのね。いつも…』
い、いいよ。俺は、あの人が帰ってこようが、どうしようが、俺には興味がない…。
あの人も、俺を見たくもないんだよ…。
期待に応えられない、カスとでも思ってるんだろうよ。別に、俺はカスでもいいよ。俺は、あいつの奴隷じゃないんだからな。
『郁人、お父さん…。今日からしばらく、家を留守にするそうよ。相変わらず、忙しそうに…』
顔を見ない方が、俺は落ち着くから、いいよ。失望した、イラついた様な目を俺に向けられても、困るからな。
『郁人…。お父さんね…』
?
『この家には、帰らない事になったの…。たまに、会う機会を作るから、その時にまた、声をかけるわね。お母さん、淋しくはないのよ?だって…』
ウソだ…。
ウソだ…。
ゴメンよ、
ゴメンよ…。
俺が期待に応えられなくて…。
俺が、壊した…。
俺が、矢倉家を…。
もう、帰らない…?
もう…
もう、戻らないの?
父さん…。
「はっ!?」
「クククッ…!惨殺剣術コルト・カラングラシェ、108箇所の刺突のうち、1/4の刺突まで、あと2箇所…!」
かっ、構えろッ!!
シャキィィーン…!
「アルクェロ・ペレッツァァ!!」
剣の刃に光…!?黒塗装が剥がれた場所…だ、、、
さっきとは違うのか…!?この光の動きは、うねる…様な…?
「うおおっ!!」
ダ、ダメだ!!次元斬の、剣の軌道になってない…!それなら、そのまま、またカラス野郎の剣に…!
「…ッ!」
あ、当たらない!?カラス野郎、やっぱり剣の軌道がおかしい!?今までとは違った刺し方をしてきてる!?
ブオォッ!!
シュワッ!!
「…!!?」
ま、また。目の前に赤い霧が…。
俺は、また刺された…!?
何回刺された…?
1回か?
…それとも、2回か?
「クククッ…!」
い、痛ッ!?
「カァッ!カァッ!108の刺突箇所のうち、刺突1/4を超えた…!惨殺剣術の本幕だ…!」
「正直言ってやろう、矢倉郁人。1/4の刺突を超え、その先に10程度の刺突で大半の者どもは死に絶えている。108箇所も刺突を受けられる者など、存在しないのだよ!?」
うっ…。くっ…!
「お前が悪いのだ、矢倉郁人!お前がこの私を侮辱した!その日から、私はお前を殺す事を夜な夜な夢見て生きてきた…!ようやく殺せるぞ、矢倉、郁人ォ!」
ダ、ダメだ…!早く構え直せ、け、剣を…!
え…?
俺の手…?
どうして…?
俺が、言う事を聞かなかったから…?
もう、俺に手を貸したくない…そうなんだな。
白い空間の人の力が、俺の体から抜けた…。
驚異的な動体視力を持たなくなった俺の目は。
もう、俺には、《冬枯れの牙》ラグリェの剣の軌道なんて、全く見えない…。
やられる…。
「カァッ!カァッ!死ねえッ!矢倉、郁人!!」
「何だと…?俺が一体、何を…」
「この世界が再び崩壊すれば、多くの住人が死の渦に呑まれる。お前も、そして私とて、危うい。ククク…。お前の打った一手は、悪手の様にも見えるが、そこから見える行く末は、輝かしいものだったのか…?」
もう1人の俺が、このカラス野郎の言う、天使を殺したという事を言ってるんだろうな…。まさか。そんな事をする訳ないだろ。でも、この世界の天使が、俺の思い描いている天使じゃないとすれば、有り得ない話じゃないのかもな…。でも、もう1人の俺、本当は死んでる…。もしかして、その天使に殺されたのかな?
もう1人の俺は、正直、今の俺の何歩も先に行っていた様な男の印象だ。死ぬまで、一体、何を考えてこの世界を歩いた?はっきりと何か知る手掛かりがあれば、良かったんだけどな…。
ポタッ…。
ポタッ…。
鎧の…腰から太ももを守ってる部分の下から、血が滴り落ちてきてやがる…。
何度も刺されてれば、急所を刺されてなくても、血が流れて…死ぬ。
今はアドレナリンが出てるから、痛みに気がいかないだろうけど…。
焦っても、こいつはそう簡単に倒せない…。ダメだ、焦っちゃ、ダメなんだ。
「下らんケンカで、この星を砕く様な住人どもを、牽制する働きにもなっている事を、お前は知らないだろう。《冬枯れの牙》は、お前の思う様な悪の根源、という訳でもないのだ、矢倉郁人。それとも、実態を知った上で、以前の私を退けたのか?それならば、お前こそ、悪の根源…か」
お前の話を聞けば聞くほど、お前ほど、黒く染まった心を持ってる奴はいないって、実感してきたんだよ。今さら、勘違いとは思わない。
何してやがる、早く剣を抜こうとしろよ…。
俺との会話を楽しむために、そこにいる訳じゃねぇだろう?
この間が空けば空くほど、体中の忘れかけてた傷の痛みが、脈を打ちやがる…。
はぁ…。
いっ、痛…。
このカラス野郎、もしかして、俺が奴の剣の黒塗装が一部剥がれた事に気づいたと、感づいたな…?
間を置いて、俺に傷の痛みを十分に感じさせて、俺の動きを鈍らせた状態から、また攻撃を再開するつもりか?
そうか…。
そうかよ?
「考えの浅いお前みたいな奴らに踊らされるなんてよ、ボーグン族も哀れだよな…。まぁ、どちらも悪い奴ら同士、仲良く…くたばれ、よ」
「クククッ…。お前も随分と荒んできたものだ。品が悪いぞ、矢倉郁人。お前もさぞ、この世界で生き、心身共に疲れ果てたのだろう。私が、お前の時間の針を止めてやろう。安らかな眠りとは、いかないが…な」
頭の中で、またあの声だ…。
俺は、矢倉、郁人だ…。
何で、お前なんかに命令されなきゃならないんだよ…?
俺の、中学時代か…?
このカラス野郎ともう1人の俺が戦った事があるから、奴の体にもう1人の俺の残留思念かなんかが残っていて、それが俺の心と重なるからなのか…?
思い出したくない自分がいる…。
何かとても嫌な事なのは間違いない。
こんな時に、心を乱すな。俺は戦いで優位な状況にないんだぞ?
冷静に…。
冷静に…。
『郁人…。お前は、お前なのよ。自分で、選んでお父さんに話して。お前は、私達の大切な…』
大切な…?
大切な、何だよ…?
俺の選択肢は、2つ用意されてる様な事を言ってるけど、本当は…
はい、って言えって、そう心では思ってるんだろ?
選択肢がある様な言い方して…。
俺は…
代わりなのかよ?
俺は、選択肢なんて、ないんだよ。
父さんを、よく見てみろよ。もう何やったって、手遅れなんだよ。
『…郁人。お父さん、今日は帰らないみたい。お仕事、忙しいのね。いつも…』
い、いいよ。俺は、あの人が帰ってこようが、どうしようが、俺には興味がない…。
あの人も、俺を見たくもないんだよ…。
期待に応えられない、カスとでも思ってるんだろうよ。別に、俺はカスでもいいよ。俺は、あいつの奴隷じゃないんだからな。
『郁人、お父さん…。今日からしばらく、家を留守にするそうよ。相変わらず、忙しそうに…』
顔を見ない方が、俺は落ち着くから、いいよ。失望した、イラついた様な目を俺に向けられても、困るからな。
『郁人…。お父さんね…』
?
『この家には、帰らない事になったの…。たまに、会う機会を作るから、その時にまた、声をかけるわね。お母さん、淋しくはないのよ?だって…』
ウソだ…。
ウソだ…。
ゴメンよ、
ゴメンよ…。
俺が期待に応えられなくて…。
俺が、壊した…。
俺が、矢倉家を…。
もう、帰らない…?
もう…
もう、戻らないの?
父さん…。
「はっ!?」
「クククッ…!惨殺剣術コルト・カラングラシェ、108箇所の刺突のうち、1/4の刺突まで、あと2箇所…!」
かっ、構えろッ!!
シャキィィーン…!
「アルクェロ・ペレッツァァ!!」
剣の刃に光…!?黒塗装が剥がれた場所…だ、、、
さっきとは違うのか…!?この光の動きは、うねる…様な…?
「うおおっ!!」
ダ、ダメだ!!次元斬の、剣の軌道になってない…!それなら、そのまま、またカラス野郎の剣に…!
「…ッ!」
あ、当たらない!?カラス野郎、やっぱり剣の軌道がおかしい!?今までとは違った刺し方をしてきてる!?
ブオォッ!!
シュワッ!!
「…!!?」
ま、また。目の前に赤い霧が…。
俺は、また刺された…!?
何回刺された…?
1回か?
…それとも、2回か?
「クククッ…!」
い、痛ッ!?
「カァッ!カァッ!108の刺突箇所のうち、刺突1/4を超えた…!惨殺剣術の本幕だ…!」
「正直言ってやろう、矢倉郁人。1/4の刺突を超え、その先に10程度の刺突で大半の者どもは死に絶えている。108箇所も刺突を受けられる者など、存在しないのだよ!?」
うっ…。くっ…!
「お前が悪いのだ、矢倉郁人!お前がこの私を侮辱した!その日から、私はお前を殺す事を夜な夜な夢見て生きてきた…!ようやく殺せるぞ、矢倉、郁人ォ!」
ダ、ダメだ…!早く構え直せ、け、剣を…!
え…?
俺の手…?
どうして…?
俺が、言う事を聞かなかったから…?
もう、俺に手を貸したくない…そうなんだな。
白い空間の人の力が、俺の体から抜けた…。
驚異的な動体視力を持たなくなった俺の目は。
もう、俺には、《冬枯れの牙》ラグリェの剣の軌道なんて、全く見えない…。
やられる…。
「カァッ!カァッ!死ねえッ!矢倉、郁人!!」
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