とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その45

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「クククッ…。実に、奇妙な事が多い。矢倉郁人やぐらいくとよ。お前は、一体、何人の顔を持つ…?」











カラス野郎は、平静を装って、剣を鞘に納めているみたいだけどよ。少し、ため息を吐いていたのは、気のせいじゃないだろう。











しかし、あいつの剣、かち合った感覚だと、剣の芯がしっかりしてる気がするな。中々折れはしなさそうだけど、実際はどうなんだ?











「お前の身のこなしがそう思わせるのかは分からないが、その今の剣は、何処か懐かしさを覚える。クククッ…。見た目は、矢倉郁人だというのに、だ。忌々しいもう1人の男も思い浮かべさせる」













もう1人の男…。それは、もしかして、さっきの白い空間にいた人の事か。その人の力が今の俺の体に宿っているんだから、その人の動きの癖が、自然と俺の体を通して出ているんだろうな。










ふぅ…。









カラス野郎、少し腰を落として構えてきたな。やっぱり、俺を少しみくびって戦ってたのか。これから、もっと…激しくなる、か?









くそっ…。











剣と剣は、ぶつかり合った。それで?それでどうだって言うんだよ。カラス野郎は、何を嫌がったんだ?俺の直感は外れていない。そう思うんだけど、答えがわからない…。










テストでも、正しい文章を選び、答えよ、って問題だったら、答えがテスト用紙に書いてあるんだから、何となくイメージが湧けば、それを選べばいいだけだけど、空欄の中に答えを書け、とかだったら、何となくのイメージが浮かんでも、正確な答えがわからないと、それは何もわからないのと同じ、0点なんだよ。








カラス野郎を無駄に警戒させ、本気にさせるだけ。










どうするんだ…?










俺、死んじゃうだろうが。










体中が痛ぇ…。











急所が外れていたって、たくさん刺されて、血がそれだけ流れたんだ。このままじゃ、助からないだろ。










このまま放置して、俺の体が自然治癒なんて、する訳ないんだ。











そう言えば、この場所から抜け出せたとしても、誰にこの体を治してもらうんだ?










俺、ボーグン族に…捨てられたんだよ。











覚えてやがれ…。ボーグン族には、必ず仕返しをしてやる!











矢倉郁人を、なめやがって。










俺が、もう1人の俺の分も含めて…。











2倍、仕返しをしてやるからな!












矢倉郁人の逆襲だ。


















もう、頼る奴がいない…か?












ああ、まだいたかな?1人だけ。













あいつしか。













殺人鬼みたいな奴だけど。












あいつしか、いない。












何とか、シュティールの所へ帰らないと…。











生きて帰れば、何とかしてくれるんじゃないのか…?











俺の事、助けないとか、言ってたよな?












でも、あいつ…。










疑わしい奴だけど。











あいつに関係ない事ばかりなのに、俺に付き合ってくれてる。










…また、ボーグン族みたいに裏切るかも知れないけどさ。












あいつなら、何とかしてくれる気がするんだ。










何とか、あいつの所へ帰らないと。












白い空間の人の力は、まだ俺の体に宿ってくれてる。まだ、俺はやれる…。











諦めちゃ、ダメだ…。












シンガリ族の敵討ちも、してやらないと、いけない…よな。

















「クククッ…。108の内、1/4の刺突に当たる27箇所まで、残り全て、次の攻撃でその身に与えてやる…」











はぁ…。












「以前の戦いでは、お前は私を拳術で退けたのだ。そのお前の得意とする拳術を未だ使いたくないと思うのなら、使いたくなる状況に、追い込んでやる。お前も、その方が、戦いやすいはずだ」












そうか、こいつ。もう1人の俺が前に、拳術でこのカラス野郎を負かしたから、この戦いでその拳術を使ってこなくて、イラついてんのか。










カラス野郎相手に、拳術を出すまでもないって、俺が思ってると勘違いしてやがるんだ。









平常心じゃ、いられないよな…。












次のカラス野郎の攻撃は、俺の覚えたタイミングで仕掛けてこないかも知れない。












どうする…。












どうする…?











どうにかしないと。













そしてまた、生きて、地球に戻ってやるよ。










   



この世界は俺の居場所じゃないんだ。必ず、俺の、本当の世界の地球に、…自分の家に…帰るよ。



























ああ…。














もう一度、母さんが焼いてくれたパンケーキ、食いてぇな…。












パンケーキ三段に、黒蜜と生クリームを乗せて、ホークとナイフで食べてやるんだ。











あれは、間違いなく、俺のために焼いてくれたんだよ。










懐かしいな…。










でも、あの淋しい気持ちも、また感じる様になるんだろうな…。











母さんは、父さんの心が自分から離れていったのは、自分のせいだって、思ってたんだよな。
















別に母さんが悪い訳じゃねぇのに…。










でも、日々、母さんが俺を見た時の目は、たまに、俺じゃなくて、自分の過去の後悔に目をやってる感じだった。











あの感覚は、俺は好きじゃなかった。俺を見てないって、わかるから。












俺…。











そんな時、俺は心でずっと思ってた。
















俺は、母さんの子なのに、って。












俺は、母さんのお腹から生まれたんだよ…、ってさ。











父さんは、俺になんか、もう少しも興味ないだろうな。









もしかしたら、まだ物ぐらいには感じてるかも知れないけどさ。











たまに、家の中で、俺は2人から見たら、存在しないのも同然なのかも知れないって、そう思ってた。











そう思ってたら。気づいたら、あいつはついに、













家を出てたんだ。












あいつが帰ってこなくなり、数日が過ぎ、数週間が過ぎ、数ヶ月が過ぎた時に、それはわかった。母さんは、俺には気にしてない様なふりをしようとしてたけど、逆にそれが俺には辛かった。












それで、俺は、何だか俺が責められてる様な気がした…。











俺は、2人の仲を取り持つ事ができなかったんだからな…。










俺は、あの時、どうすれば良かったんだろうな。









俺が、もっと大人だったら、父さんは、家を出ていかなかったのかな。











俺は普段通りに学校に通ってたつもりだったけど、何かと同級生達に心配されたよな。あいつら、情報回んの早いしな。
















もう一度、あの生活に戻りたいか?













…。












俺の人生は、あの時から止まったまま。












またあそこから、始めたいよ。











俺の人生は、あの場所にあるんだから。
























カラス野郎が腰に手を当てた!また剣を抜いて、攻撃をしてくるぞ!










俺も、応戦をしないと!













基本的には、このカラス野郎の体に剣を振る。でも、俺の剣の方が太そうだ。だから、もしかしたら、何度か剣をかち合えば、相手の剣に損傷を与えられるんじゃないのか?













カラス野郎の剣を、へし折るのも、悪くはない!










惨殺拳術コルト・カラングラシェ…とやらを、封じてやろうか!?
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