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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その26

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並木道を歩いている人が俺達以外、誰もいないな。ここは、普段は使われていない道なのか?大恩人様専用通路なわけか?だから、俺が通れるわけだな。なら、よし!そんなわけないよな。





何か、この道の先に、鉄の壁が広がってるな。真ん中に、赤い門が見える。その門の前に、2人くらい、鎧を着た奴が立ってるよな。恩人だから、気持ちよく通してくれよ。今の不快な気持ちを吹き飛ばすくらい、さ。








フグイッシュがこの街に来ていると言っていたグレンベール・アルシオンは、まだこの街にいるのかな?そもそも、グレンベールって言っても、グレンベール・パンナコッタとか、別人だったら意味がないからな、ちょっと聞いてみるか。








「フグイッシュ、さっき言ってたグレンベールは、グレンベール・アルシオン?ギルロの配下とかの…」











「え…?あー、そうだよ、多分。グレンベール・アルシオンだよ。何とか大将って肩書きがついていたよね」












「まだいるのかな、この街に」












「来る時は、しばらくこの街に留まるんだよ。昨日見かけたから、いつも通りなら、いるはずだけどね」












やっぱり、ギルロの配下の高天魔こうてんま四大将の1人、炎真えんま大将グレンベール・アルシオン、か。まだいそうだな。








シュティールが、気さくな感じの人なんて言い方してたよな、確か。








俺が探せと言われたギルロの体と魂…。ギルロの事、どう思ってるんだろう。もしかして、すでにそのギルロの体と魂の場所を知ってたりしないかな。








そしたら、俺。










すぐに、日本に帰れる?











帰れるよな!?











よし!









グレンベールに会おう!



















赤い門に近づいてきたぞ。でも、門の前にいる2人、よく輝いてる鎧だな。鏡みたいだぞ。頭の兜のつばで目がよく見えないけど、口が頑固さを表してる。少し体を揺らすだけで、何か戦い慣れてる様な感じがするな。もしかして、街中にいる機械兵より強いんじゃないか?









まさか、戦ったりしないよな?











兜の額辺りにあるのは、目の飾りか。悪趣味だな。兜の上に金色の角が2本生えてる。雄牛みたいに曲がりくねって。やっぱり、強そうだな。腰に長い剣が2本あるけど、まさか双剣で戦えるのか?ボーグン族って、大陸修復って聞いていたから、技術者っていう印象だったけど、技術者が多くいる種族だって、その中に戦うのが得意な奴がいてもおかしくはないよな。








「あれ?ごめん、イクト」









何の謝罪だ、フグイッシュ。まさか、このカオスとなったこの心を癒す事ができなくなったのか?ダメだぞ、それは。今は日本の事を忘れさせてほしいんだよ。少なくとも、今日は。










「上級鋼兵グラークがあそこに立っている時は、ボーグン族でも入るのが難しいんだ。グレンベールが来てるからなのかな…?」








フグイッシュがそう言って、作り笑顔を俺に向けて、何とかごまかそうとしてるな。フグイッシュ、無理だぞ。俺は人並みにかわいいと思う女には弱いけど、何よりも女が好きというほど、女好きじゃない。多分、俺の好きな焼きとうもろこしには負ける。焼きとうもろこしと女を並べたら、多分、焼きとうもろこしを取る。







いや、わからないけど、今は、女の作り笑顔は、いらない。俺の不快極まりないこの気持ちを一気に変えてくれる楽園が必要なんだ。頼むから、楽園、くれ。







門の前の角つき兵が俺達を警戒している。いや、俺だけを警戒しているのか?このボーグン族の恩人、矢倉郁人やぐらいくと様を。いい度胸してるな。恩知らずめがっ!…別に俺が何かをしたわけじゃないんだけどな。








「おい、お前達。この先は通行止めだ。今は入る事ができない。出直して来るがいい」










あーあ。角つき兵が、言ってきたぞ。フグイッシュ、何とかしてくれよ。この恩人様を誰だと思ってるんだ、ボーグン族の街中、全て顔パスの大恩人イクト様だぞ、と。








「何でだよ、せっかくここまで来たのにさ。中で何をやってるんだよぉ?」










炎真えんま大将グレンベール・アルシオンと我々の鳳凰院フェネルシスが話し合いを進めている。情報漏洩防止策として、この区画の進入を禁止している」 






高天魔四大将の1人、グレンベール・アルシオンは、この先か。これは、シュティールを探してこの事を伝えるべきかな。いや、シュティールも、この街の状況を知ろうと歩き回ってるのかも知れないし、俺は俺で探した方がいいのかな。









「フグイッシュ、どうする?」









「う…」









「お前達に選択の余地はない。立ち去れ。そして、日を改めてまた来るといい」










うるせーな。何を偉そうに。別にお前ら、俺の親でも兄弟でも、先生でもないんだから、そんな偉そうな言い方する事もないよな。言われなくても、帰ってやるよ。










「フグイッシュ、帰ろうぜ。別に、こんな所、入りたくもないし」









何だ、この雄牛兵、イヤな顔したな。怒ったか?なら、大成功だ。せいぜい、気を悪くして、寝つき悪くしてくれよな。俺も、お前らの態度で気分悪いんだからさ。








「わかった。一度、帰ろう」










グレンベールがこの街に来てるって、わかっただけでもよかった。ギルロの事、その話し合いとやらが終わったら、グレンベールに直接聞くしがないな。俺、意外と早く日本に帰れるかも知れないぞ。









「もしかしたら、このクェル・ダ・ベル第2大陸の修復がうまくいっていないのかも…」









え?











フグ子さん?











今、何か言いましたか?
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