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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その17

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強化戦士ギガゾールは今度はゆっくりと俺の方に向かって歩いてくる。



へっ。




こいよ。





あ、れ?








ああああ…!









ドドドドドドド…!!









強化戦士、1体じゃなかったんだね。多分、100体は、いるんじゃないのかな?





で、でも、背を向けて逃げ切れるほど、こいつら、遅くないからな…。











どうする?













どうする!?


























どぉぉすんだよ!!?












はっ!






シュティールは…!?









いる訳ねぇよな、弱虫召喚獣君だもんな、ハハハ、逃げてる途中で転んで死なねーかな、アイツ。








あ、目が霞んできたな。この状況に絶望してるのかも知れない。次元斬100回連続でやったら、多分腕が取れてなくなってるんじゃないのかな。そもそも、そんなにやる前にめった刺しにあってるだろうけど…。






あ、本格的に具合悪くなってきたな。








死んだふりしても、相手は機械だから、俺の心音とかで生きてる事がわかるだろうな。








しかし、俺1人相手に大勢で来るなんて、大人げないゴミどもだな。







未成年の高校生の俺相手に、大人のボーグン族の知恵を絞って作った傑作の強化戦士100体を向かわせるなんて、ボーグン族って弱虫族なの?







家にゴキブリ1匹出たら、格闘家100人向かわせて血相変えて殴らせるくらい、恥ずかしい事なんだぜ?







あ、例えが良くないな。俺がゴキブリになるじゃねぇか。








あ、目の前にまで迫ってくる強化戦士が、1、3いや、7体。








ハハハ、もう終わりだ。








いいぜ、来いよ。









やってやるよ、最弱戦士ども。










この大剣の餌食にしてやるよ。








ハハハ、あーあ。









矢倉郁人やぐらいくと、逝きます!」









うおおおっ!










ピッピピーーーーッ!









くら…









え…。










あ、あれ?












強化戦士の動きが止まった?









どうしたんだ?トイレでも行きたくなったのか?








なら、行ってきなさい!先生、ここで待ってあげるから!








あ、わかった!油差してないんだろ?ダメだよ、ちゃんと自転車のチェーンみたいに油差さないと。すぐ錆びるだろう?動かなくなるんだよ、今のお前らみたいにさ。










何だ?本格的に止まったな。










7体が横並びになって、止まった。









合唱部の発表会か?









いいぞ、聴かせてみろ。










ピーとかしか言わないだろうけどな。










少し落ち着くか…。いや、心の中だけでも、何か言っていないと気がおかしくなる。やっぱり言い続けようか。










シュティール、最弱弱虫召喚獣♩

虫にも勝てない召喚獣♪

ブサイク、ゴミクズ召喚獣♬










少しスカッとしたせいか、段々と冷静になってきたな。それと同時に恐怖がじわじわと戻ってきた…。







目の前の強化戦士達、何か指示待ちなのか、ソワソワしてるけど。






今のうちに逃げられないかな。







「矢倉郁人カ?」







うわっ、しゃべった。








強化戦士、しゃべれるのか?






でも、強化戦士を通して、誰かが何処か離れた場所で話しかけているって感じがするな。






モニター越しだからかいまいち、はっきりと俺がわからないのか?







矢倉郁人だって言って、じゃあ殺すってなるのは、今のところ、冬枯れの牙だけだと思うから、もう一度名乗ってみるか。







「俺が、矢倉郁人だよ」









強化戦士同士で、顔を見合わせたり、違った方向に顔を向けたり、忙しそうだな。








多分、もう1人の俺と勘違いしてるんだろうけど、吉と出るか凶と出るか。










ああ…。緊張して体が麻痺でもしてくるみたいだよな。









どうなんだよ…。








助かるのか、








どうか。









「…矢倉郁人、ヨク生キテイタナ」









え、どっち、どっち?死ねばいいのにの方か、無事で良かったの方か、どっちか教えてくれ!









…。









どっち…?











「我ラノ、恩人…」









え?あー、そう!?


恩人ね、いや、ありがと。







そうか、恩人か、それはいい事だよ?うん、うん。









強化戦士が次々と街に戻っていくぞ。はー、良かった。







はぁ…っ。









もう1人の俺って、何かすげぇな。










何か、嫉妬する…。







拳術がすごいらしいし。








気難しいとかのボーグン族が、恩人って言ってるし。








もう1人の俺。








どうやって、この世界でうまくやれる様になったんだろう。








もう死んだらしいから、聞く事もできないけどな。







あ、白い口髭に伊達眼鏡したバカシュティールが戻ってきたぞ。







何、うれしそうに笑ってんだ?裏切り野郎!








「行こう、イクト君。強化戦士が戻っていったって事は、君を認めたんだろう?」









「神レベルのイクト様、お通り下さい、でもシュティールという人を裏切る様な男は、地面の中に頭を埋めて、人柱になって懺悔して下さい、とか言ってたけど、大変だな、シュティールも。お前嫌われてるんだな、この世界からも。何か、かわいそうだな…」








「ごめん、人柱がわからないんだけど、君を使って試してみたいんだ、いいよね?イヤだと言っても、必ずやるんだけど、一応、形だけでも君に許可をもらう事にするよ」







「…」








「シュティール君、この俺に何かあったら、お前はこのボーグン族の街には入れないぞ?俺は、ボーグン族の恩人らしいからな。その恩人に何かあったら、お前はボーグン族の敵という事にもなるな。常にボーグン族に狙われるんだよ。さっきの強化戦士だって、1万体はお前に襲いかかるんじゃないのか?」









「…イクト君に打ちのめされる様な強化戦士なら、1億体に襲われても、勝てるんだけどね」











…い、1億。






なめやがって…。











こ、殺したい。今すぐこいつを殺したいけど、まぁいい、使えるだけ使ってやるか。ハハハ、ゴミ召喚獣め!









「行こうぜ、シュティール!」









「人柱は?」









「うるせー、バカ!」
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