とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

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第一章 オレン死(ジ)ジュースから転生

その32

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シュティールから逃げ、細道、そして大通りへ。

元の道に戻ってきたな。俺が道の端に寄せていた大剣がある。

重いけど、何かあった時のために嫌々それを取り、再び猛ダッシュ。

ああ、大剣の重さで体のバランスが片寄る。脇が痛ぇ。

追って来てないか、後ろを振り返る余裕もない。息は荒くなって、苦しくなるけど、止まる訳にはいかないな!

あ、あそこが街の入り口じゃなかったか!?

よし!ラストスパートだ…!

ハァ、ハァ、ハァ。

ハァ…、ハァ…



門番、俺をじっと見ていたけど、出たければ出ていいよと言われたから、そのまま止まらずに街を抜けて行った。

まだ、止まる訳にはいかないか…!

まだまだ、走らないと…!

ハァ、

ハァ、

ハァ…!

森が見える、あそこに入って、シュティールが追って来ているか、様子を見よう。

よし、入ろう!

たくさんの木々、その間という間に入って、走り続ける。何か少し寒い気がするが、気にせず行こう。足元に小枝が無駄に落ちていて、走りにくい!

うわっ!?

よく肥えた木の幹だな。横幅が2mくらいあるんじゃないのか?一体、何の養分を吸っているんだ。

俺はその太い木の陰に隠れ、来た方向に目をやった。

うーん。

来ていないな。

そもそも、追って来ている感じがしなかったからな。最初から追って来ていなかったのかも。

無駄走りだったか。

ああ…

急に体に力が抜けてきた。

しかし、シュティール。俺をはめる事しか頭がないんだな。俺が無様に苦しんで死んでいく様を見たかったんだろう。心底、心が腐っていたんだよ、あのシュティールって奴は。

クソッ。

見損なったぜ。

まあ、どの道、アイツはあの街に置き去りにするつもりだったしな。最悪殺人鬼シュティール、さらばだ。

ギルロの体と魂、俺が何とか探してやるさ。

どうやって、探そうか。



大きな声を出して、ギルロの体、魂、いるんなら、手を上げてくれ!と、言うとか。

ギルロの体の方はわかるけど、魂の方は、透明で見えなかったら、挙手も見えないからな。

そもそも、魂に挙手とかないか。

魂って…見えるのかな?

素朴な疑問なんだけど。

ギルロの魂が、ギルロの体の手首なんかに紐で結んであれば、問題ないんだけどな。

魂って…触れるのかな。



ギルロの魂って…

見えず、触れずに、どうやって…



探すのか?



ギルロの体と魂って、セットで言ってたから、何か分離してはいても、2つ側にあるものなんだという感覚でいたけど。

全く別々の場所にあったら、どうなんだ?



やっぱり、ここの世界の比較的マシな奴を探すしかないな。

俺の常識っていうのが、ここの世界じゃ役に立つ気がしないからな。



ああ…。



また、シュティールみたいに、俺を殺そうとする奴が現れたら、どうしようかな。

良し悪しの見分けがつかないよな。

もしかして、この世界の全員、悪いかも。

そうとも言えるよな。



あれ?

あそこ明かりが広がってるな。



街っていうか、村?

森は、その村を避けて広がっている。だから、日の光がたくさん入っていて、その村一帯が明るいのか。

村は高い木の壁で囲まれているけど、人3人くらいの幅で通れる所がある。普通に入れそうだな。いいのかな、このまま入って。



「うおっ!?」



木の壁の内側に、背中をつけて微動だにしない背の高い男が6人。手に短剣持ってるぞ。

みんな横目で俺を見ているな。どうしよう。自己紹介から入った方がいいのか?何か喋らないと気まずそうだ。



「あ、こんにちは」

俺はとりあえず、挨拶した。

そうしたら、一言。

「誰?」

その質問が一番答えづらい。

地球で高校生やってて、オレンジジュース飲んだら、その中にイボオカシって微生物入ってて、殺されて転生してこの世界に無理矢理連れて来られて、本当は2歳程度だと思うんだけど、地球に戻す条件としてとても重い要求されちゃって、体を最低限戦える年齢まで引き上げてもらった者です、ここ通ってもいいですか?って言って、ああそうですか大変ですね、じゃあどうぞ、とはならないだろうな。

いらない所を省略して、言うべきだな。

地球から転生してきました、ここ通りますね、か?

いや、転生いらねーだろ。地球から来ました、でいいか。

「地球から来ました」

早速、言ってみた。

そうしたら、みんな手を叩いて、大爆笑。

「チッチ・キュウから来たの!?来れちゃったんだ?ダセー!凄ぇよ、お前。入れ、入れ。お散歩記念で、特別許してやるよ!」

そう言って、涙目で笑う奴ら。何か勘違いされた様な気がするけど、まぁいいか。バカな奴らで助かった。

入ろう。

川が流れていて、その川沿いに木造の素っ気ない家が幾つか建っているな。

川沿いじゃない家は、意外と立派かな。でも、懐かしいな。屋根に灰色の瓦が並べられている。日本の家みたいだな。

あー。

少し落ち着いた。
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