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第一章 オレン死(ジ)ジュースから転生

その25

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誰も住んでいない訳じゃないだろうけど、この異様な感じ、何て表現するべきか。

このフルワットって街に入ってから、門番とパラメーター、それ以外の人にまだ会っていない。

もう30分くらいは歩いていると思うけど。

「ギルロの事を知っているガインシュタット家の住んでいる家って、この道で合っている?」

俺は、何故かニコニコしている不気味なシュティールに聞いてみる。

「あそこに見える噴水を超えると、ステンドグラスを施した窓がある建物が見えてくるはずさ。そこが、ガインシュタットの家だよ」

今歩いている先にある噴水を指差して、シュティールはそう言った。

街が静かだから、噴水の水の音がよく聞こえるな。

「街の人、出稼ぎに行ってるのかな?静かだよな。」

俺は、シュティールに話を振ってみた。

そしたら、フッ…と笑ったシュティール。この野郎、また俺をバカにしようとしやがる。

「いるじゃないか、みんな」

シュティールは、淡々とそう言った。

みんな…?いるって。

俺の目には見えないほど、とても小さな微生物とかかな?

この辺りに見える建物のサイズは普通の人間が住む大きさだから、そういう訳じゃない。

それとも、この街には2人しか住んでいないとか。門番とパラメーター。

「2人しか、住んでいないんだな」

俺は、適当に言ってみた。

シュティールは、得意げにニヤリと笑って、

「ある意味、当たっているかもね」

と、答えた。

ある意味当たっている?先ほどは、みんないるとか言っておきながら、今度は、2人しか住んでいない、だって?

この街には、本当に2人しか住んでいないのか?嘘だろ…?

建物と建物の隙間を埋め尽くす様にして立ち並んでいる家が、空いている…。

もしただでくれるのなら、欲しいな。

そう思って、家々を我が物にしようと眺め始めた俺だったが、窓のカーテンが少し動いたのに気づいて、少し気落ちする。

何だよ、人住んでるじゃねぇか。

外に出るのが嫌いな人達ばかりが住んでるんだろ?俺も似た様なものだな。もっと小さい頃は、近くの公園でみんなでサッカーや野球をしてたけど、もうそんな事をする年でもないし、店に入ったりすると、ただでさえ少ない小遣いがあっと言う間になくなっちまう。結局、友達の家か自分の家でくつろぐのが、サイフを守って体力消耗を防ぐ一番良い手なんだ。

「教えてくれるかな、ギルロの場所。体と魂とか言って、伝わるものなのかな…」

俺は溜め息混じりにそう言うと、空に目を向けた。

青空に白い雲が広がる。雨は降っていない。この空は、日本には繋がっていないんだよなぁ。あーあ。先が長そうだなぁ。ギルロも知らないのに、そいつの体と魂なんて…。仮に見つけて元に戻せたとしても、俺が俺のままで戻れる保証なんて、何処にもない。

シュティールは、同じ様に空を眺め、俺の背中を軽く2、3回叩く。

「大気が汚染されている地球では、透き通る青空なんて、見る機会もないだろう?いいよ、好きなだけ見るといいさ」

シュティールは、眉をひそめて、困り顔を作って言う。ムカつく。

何処の地球だ、何処の。大気汚染で曇りまくって、周りが見づらいとか思ってんのか?漫画の世界でしか存在しねぇよ、そんな所。多分。

あ、ステンドグラスの窓の家って、あれか。見えてきたぞ。

屋根の上に黄金色の鶏像が立っている。金持ちそうだな。

「え?」

俺は、シュティールの方に目をやった。今、何か言ったか?

「どうしたんだい?美学の頂点に達した僕の顔に、強い憧れを隠しきれないのかい?」

傲慢の頂点に立つシュティールは、フフフと笑いながらそう言った。バカかこいつ。

…あれ?

何だ、今の。誰かが、俺に話しかけた?

いや、違うのか…?

今、俺の側で、誰かが話していたんだ。1人で。もちろん、シュティール以外でだ。

相手に話しかけた、という感じじゃなかった。

でも、姿が見えないけど。

もしかして…。

幽霊…!?
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