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第一章 オレン死(ジ)ジュースから転生

その10

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「まぁ、いいさ。君はゲイ。あらゆる可能性がある。そういう事もあるさ」

そう言って、金髪君は、また優しそうな笑顔に戻る。心は悪魔だが。ギルロって人の事を、王様呼ばわりすると、怒る人もいそうだな。ギルロをよく知らないし、王様という言葉は控えた方がいいだろうか。ちなみに、こいつが今言った言葉からすると、何となくゲイという言葉を認識している気がする。わざと、違った事を言ってみたりするだけで、本当は知っていそうだな。

金髪君は、目をパチパチして、大きく見開き、笑みを作る。何かを売り込んできそうだと思ったが。

「面白そうだから、君の後をついて行ってあげようか。君も、この世界に詳しい住人が側にいて欲しいだろう?」

そう言う、金髪君。ここが地球なら、120%お断りしていたが、ここの世界の人は極端に変わり者が多い気がするから、この金髪君も、割とまともなのかも知れない。急に、一緒に行く、みたいな話を切り出した理由がよくわからないけど、気に入られでもしたのかな。

「ギルロって人を探すんだけど、いいの?」

そこは確認しないといけないので、言ってみた。

「いいよ。君が何を探そうとも、僕には関係ないからね」

この金髪君、そう言ったが、理解したぞ。ついては来るけど、手伝う気はない、そうだろう?面白おかしく死ぬところを見たいとか、さっき言っていたからな。ムカつくけど、連れて行った方がいいのかな。ギルロの体と魂探しは手伝わないと思うけど、この世界については、色々と教えてくれそうだ。旅は、1人よりは、2人の方がいいだろうし。うーん、どうだろう。

「一緒に行くのは構わないけど、長い旅になりそうだから、何日もかかるかも知れないよ。家族とか心配はしない?」

一応、これは聞いておかないとな。俺の世界だと、面白そうだからついて行く程度の話になると、帯同時間は、30分~10時間位か。1日は超えないはず。

「就寝と食事の時は、抜けるよ。用事がある時も、ダメかな。それで良ければ、君の後をついて行くよ」

金髪君は、そう言った。まさに、面白そうだから、後をついて行くという言葉の域を越えない範囲で、お考えの様だ。こいつにとっては、遊び半分だ。いや、完全なる遊びだろう。

金髪君は、俺の困り顔を見て、爽快に笑っている。周りの人達が向かい合う俺達のこの光景を見たらどう思うか。1人は私服、もう1人は剣と鎧を装備。笑う私服、笑われる剣鎧装備。俺が心身共にゴミみたいに弱いんだろうなとか、思われないだろうか。

「大丈夫だよ。僕も旅の途中なんだ。気分転換にというだけで目的は特にはなかった。この街にはよく来るんだけれど、この街のオレンジジュースはやっぱり美味しいね。君も飲んだ?」

と言う金髪君。恐ろしいほどの軽装だけど、それで旅なのか?荷物とか、持っていないし。ちなみに、オレンジジュースは、転生前に飲んできたから、いらない。もう、二度と。

「オレンジジュースはひどく嫌いなんだ。ところでさ、旅してるのなら、荷物はどうしたの?」

と、素朴な質問の俺。

「異空間を作って、そこに置いてある。大丈夫、心配しなくていいよ。君はギルロの体と魂を、死に物狂いで探してくれたまえ」

あ、今すごく高い所から物言われたな。たまにカチンとくる様な事を言われ続けながら旅するのかな。俺の神経の耐久力を数値で例えると、100だとすると、この金髪君の言葉の攻撃力は10000くらいだから、神経の破損程度ではなく、もはや消滅…

「虫ケラ君、どうしたの?」

そして、連続攻撃。神経の消滅した跡地にさらなる攻撃といったところか。

「虫ケラ君って名前じゃねぇんだよ!俺の本名は、矢倉郁人やぐらいくとって言うんだ。覚えとけ!」

ムカつく奴だ。ムカつく奴だが、俺1人の力じゃ、ギルロの体と魂探しは、無理だ。こいつを巻き込んで、一緒に探していくしかない。俺は、早く元の世界に、地球に戻りたいんだ!

「僕の名前は、カザンカが咲く頃に白い雪が山々を染める事から名づけられたんだ。その名前は…シュティール。以後、よろしくね」

胸に手を当て、格好つけて言う、シュティール。

「さあ、君の期待と絶望の旅は始まるんだ、行こう!」

と、シュティール。今、絶望って言わなかったか!?くそっ、なめやがって。
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