とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

sayure

文字の大きさ
上 下
9 / 472
第一章 オレン死(ジ)ジュースから転生

その9

しおりを挟む
「獣だよ、獣。うちの世界にもいる、猫ちゃんとは、違うのだよ」

この同い年位の金髪男はそう言って、目を細めて、笑った。

異世界だから、嘘か本当かわからないところだが、先程見せた獣の様な鋭い目を見せられると、警戒するな。正直、信じてしまう。しかし、氷河期を作り出したのは、本当だろうか。

「ああ、そうそう。君達の氷河期の歴史を作ったのは、正確に言うと、僕の先祖の召喚獣、という事になるかな。僕みたいなものだけど、僕じゃない」

そう、この男は言う。召喚獣は、お前もだろうけど、氷河期の件については、断言する。絶対に、お前じゃない!みたいなものって、明らかに違うだろう。

「召喚獣って、あまり馴染みがないんだけど。多分、今、地球に住むほとんどの人が見た事ないよ」

俺は、戸惑いながらも、事実を言った。

「戦場に出たかどうかで言えば、君の世界では、確かに少なくはなったけれど、君達の爆弾とか言われるものには、僕らの力が仕込まれているじゃないか。あれは、君らに呼ばれて、殻の中に僕らの力を込めてあるのさ。その対価は求めるけれどね」

この金髪君はそう言って、俺の肩を軽く叩いた。

「対価は、君の命…」

えー!!何、この展開!散々自分の凄さを語っておいて、この場を去る事しか考えなくなってきた俺の命を取るのか!?なぜ、そうなるんだ!?あ、さっきの事、まだ怒っているのか?お前、からかうだけみたいな感じだったけど、徐々に怒りがこみ上げてきたんだろう!大人気ないな、ここは同年代同士、仲良くやろうじゃないか!?



「ははは、面白い反応をするね」



面白がって、お腹を抑えて笑っているこの金髪君。何がそんなに面白い!?

「嘘だよ。爆弾の中に僕らの力を込めた対価は、生命エネルギーというのは、嘘じゃないけれど、ただ人の生命エネルギーじゃない」

「じゃあその生命エネルギーは、猫?犬?虫?あ、微生物?」

「犬猫は違うよ。虫は、君だし、微生物は…そう、微生物も君だ!」

こいつは、そう言って、全く悪びれた素振りを見せない。完璧だ。完璧な、悪だ。そもそも回答として、前半は合っているが、後半部分は間違っている。虫や微生物は、人でいうと誰に当てはまりますか?とか聞いていないし。そういう風に聞いた上でも、俺だと回答するんだろうが、ただ、俺はそんな質問をする訳がない。

「対価は、地球の自然が持つ、生命エネルギーだよ。僕らの力が向上する元にもなる。君らの世界も、かなり自然の環境が失われつつあるみたいだけれど、欲の強い人間は、あまり気にはしないか」

そう言って、薄ら笑いを見せ、見下すこの金髪君。確かに、強欲は多いな。それは、認めるよ。俺も、実は、1つ欲しいものがあるんだけど、あー、でも、ここには売っていないから、別にいいか。

「ゲーミングPCというものが、欲しいんだけど」

取り敢えず、彼に言ってみた。

「ゲイ、イングPC…?」

聞いた事なさそうに、この金髪君は答えた。まあ、仕方がないか。地球に住んでいた頃には、うちに家庭用ゲーム機というものが存在しなかったため、他人の家でやらせてもらったかな。そのうち、スマホを持つようになり、その中でゲームをやっていたが、スマホは家庭用ゲーム機やPCと比べて性能が低く、多くの事ができる訳じゃない。授業でも使うPCは家族共用だし、個人のPCとゲーム機が合体した様なものが欲しかったんだ。

「ゲイ、なの?」

は?この金髪君は、そう言った。この金髪君、色々と言葉を短縮しているみたいだけど、短縮した結果、ゲーミングPCが欲しい、という言葉が、(僕は)ゲイ。という言葉に変換されたのか。まあ、ゲイが欲しいの?とか聞かれなかっただけでも、ましか。

「ねぇ、ゲイなのかい?」

しつこいな、こいつ。この世界にも、ゲイって言葉があるのか?

「ゲイ・シドルアームのジュース愛好会"ゲイ"のメンバーなのか、と聞いているんだけど」

え?ゲイ・シドルアーム??のジュース…。

「虫ケラ君、僕が金持ちそうに見えたのかい?実際に、そうかも知れないけど。会ったばかりの人に、買って、買って、って言い回っているのかい?心底、君って男は、クズだね」

金髪君は、俺の顔を指差して、少し語義を強めて言う。完全に、ごめんなさい。その通りです。はい。ただ、ゲイ・シドルアームのジュース愛好会の話から、急に話の本筋に戻り、話が噛み合ったので、びっくりしちゃいました。

「冗談だよ。本当、悪かった。じゃあ、俺、行くわ」

そう言って、去ろうとする俺。もうこいつとの会話はいいだろう。ああ、大剣重てー。動くのも、しんどいな。

「待ってよ。この世界にど素人が、どう面白おかしく死んでいくのか、気になるじゃないか。一体、この世界に、何をしに来ているんだい?」

この金髪君は、屈託のない笑みでそう言う。こいつ、殺したい。わざとやっているんだろうな、きっと。

「ギルロって、王様を探してんだよ」

何か知っていないかな、と思って、そう言ってみた。この世界では、コミュニケーションが中々取れないかも知れない、ある程度、会話が生まれた場合は、聞きやすいから、聞いた方がいいな。

この金髪君、また獣の様な鋭い目を見せる。興奮状態の時は、基本、この目なの?恐いな。何で、そんな目をするんだ。

「ギルロの事を、王様とか、言っちゃうんだ?君って、本当に変わっているね!?」

この金髪君の、爪が蒼白く変色し、伸びていく。

え?怒って、いる…?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...