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1章 第2部 街へと二人目

35.5話前編 2週間後(アイリス視点)

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既に私が婚約破棄をしてから2週間以上も経過しようとしていました。
その間、私は部屋に監禁されて城の外はおろか、部屋から出ることも出来ませんでした。

私は元々外に出るよりも本読んでいたりした方が楽しいけど、流石に2週間そうも部屋を出れないと外に出たくなります。
それにユウキにも2週間も会えていないから寂しいです。

私がそんな事を思っていると、お父様からお呼びがあったと執事が知らせてきました。
呼び出されたのは会議室で、そこに入ると真剣な顔をしているお父様とお母様にお兄様達が居ました。
私がその光景に「何か重要なことがあるのか」と首を傾げていると、お父様がまだ誰も座っていない2つある内の一つの椅子を示しながら言いました。

「アイリス。全員が揃うまでそこに座っていなさい」

「は、はい」

そう言われてから座り、暫く待っているとエリザベスが「面倒くさい」という顔を隠さずに部屋に現れました。
そうして現れたエリザベスは座らずに扉の前に立ったままで質問しました。

「私をお呼びとの事ですが、なにかありましたか?」

エリザベスがそう言うと、お父様は怒ったような顔をして言い返しました。

「エリザベス、「なにかありましたか?」だと?私がお前に『アイリスの実験は私が責任を持つ』という手紙を魔術師協会に送ってくれと言った手紙は、どうした?」

「あぁ、あのお父様が書いたのに、私の名で送れと言われたあの手紙ですか。私の魔術で燃やしましたとも。私は自分の名が語られるのは嫌なので」

エリザベスが平然とそう言うと、お父様は更に怒った顔をしました。

「なんだと!?アイリスが助かるにはあの手紙を出すしかないのだぞ!?エリザベスもアイリスを助けたいだろう!?それならば早く同じ旨の手紙を出すのだ!!」

「そうですよ、エリザベス。確かに私と陛下にも貴方の代わりに手紙を書いたのは、少し話を急ぎすぎたと反省する所もありますが、貴方も燃やす事はないでしょう?」

「そうだぞ、エリザベス。僕達は家族なんだからお互いに助け合わないと」

「家族を助けようとしないなんて、男らしくないぞエリザベス!!」

お父様、お母様、そしてお兄様達が言っている「助ける」という単語の意味はよく分かりませんが、皆が私を大切にしてくれているのが伝わってきて、泣きそうになってしまいました。
しかし、そんな私の感情はエリザベスの言葉で簡単に消えてしまいました。

「嫌です」

「「「「は?」」」」

「そもそもの話、アイリスは魔術が使えないのですから実験体になるべきですから。実験体と言っても、人体に害の無い薬しか使われないのですからいいではないですか。

それにお父様とお母様がストレンスに確認も取らずに協会に手紙を出すからいけないのですよ。まあ、ここまでならば問題になっても王の権力で美談に出来たのに、それをアイリスに教えず好きにさせるからこんな事になっているのですよ?それならば、お父様やお母様に加えて、この件を引き起こしたアイリスに責任を取らせるのは当たり前でしょう?」

エリザベスの言葉にお父様やお母様、お兄様達が絶句しているのを横目に私はなんことを言っているのか分からず、首を傾げました。
そんな私を見て、エリザベスは私に憐れみの目を向けながら言いました。

「いいですか、お姉様。お姉様は魔術師ではありません。それどころか魔術を使うための魔力がありません。ですから本来ならば魔術師協会に行き実験体にならねばなりませんでした。

それをお姉様を実験体にしたくないお父様達がストレンスの名を語って魔術師に協会にお姉様が行かなければ行けないのを無くし、更には家臣が居る前で頭を下げることで断られる可能性を無くした上で、お姉様とストレンスの婚姻を結ばせ、婚約者なのだからとお姉様が『魔無し』(魔力が無い人の呼び名)である事がバレないように遠隔で魔術に見えるように魔法を発動させていたのですよ」

「え?そ、そんな事、ありません。わ、私は魔術師ですよ?私はきちんと魔術の修練をしてー」

私が「魔術の修練をして」と声に出した所で、エリザベスからため息が漏れました。

「はぁ~、少しの違和感も無いとなると、ストレンスが凄いのか、お姉様が鈍いのか分かりませんね。まあ、確実に前者でもあり、後者でもあるのでしょうが」
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