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1章 第2部 街へと二人目

21話 爆発

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アイミナの得意な魔法の分野とトラウマが『ハイ・フォレストウルフ』に関することだの分かっただけで進展はあった。
まあ、トラウマをどう克服させるかは全く思いつかないが。

俺がそんな事で悩みながらもアイミナと魔物を使った戦闘訓練を続けた。
『鷹の目』で魔物を見つけては狩っていたのだが、アイミナは『フォレストウルフ』と遭遇した時に様子が変わった。

アイミナは何時も『キングスネーク』や時たま現れる『キライマ』なんかにも、遭遇し次第俺よりも先に仕掛け、魔法を使いながら倒していた。
だが『フォレストウルフ』が出現した時だけは何もせずに目を見開いて止まっていた。

そんなアイミナに『フォレストウルフ』は攻撃を仕掛けたが、俺が寸前で『フォレストウルフ』の攻撃を魔法で防御し、更に魔法に変換すれば『キライマ』も倒せる程の魔力を『フォレストウルフ』に直接ぶつける事で威圧して『フォレストウルフ』を追い返した。

『フォレストウルフ』が魔の森に消えた事を確認してから、アイミナに話しかけた。

「アイミナ、大丈夫か?怪我はないか?」

「な、無いのです。ごめんなさい、ボス」

肩を落としてしょんぼりしながらそういうアイミナを見て、口には出さなかったが「まあ、仕方ない部分もあるか」と思い、少しでも落ち着くようにアイミナの頭を撫でた。
俺に頭を撫でられたアイミナは一瞬、ビクリと体を反応させたが、暫くすると心地よさそうにしていたので、アイミナが落ち着くまで俺はアイミナの頭を撫でていた。







アイミナの頭を撫で終えてからは、「これ以上は魔物を倒させても得るものは少ないだろう」と考えて、拠点に戻った。
拠点に戻った時には暗くなりかけていたので、その後は特に何もせずにご飯を食べたり、風呂に入ったりして寝室に入った。

その寝室には当然の様にアイミナも居たが、そのアイミナは何時も通りに振る舞っている様に見えるが、『フォレストウルフ』との戦闘後から時々暗くなっている。
何か気晴らしになる物があれば変わるのだろうが、拠点の周囲に少しずつ対魔物罠を仕掛けていっているし、ここが拠点内とは言え魔の森であり、娯楽をする余裕も作る余力も無くはないが、余裕と余力の両方が少ないことは事実。

結局は誰か人手を増やすか町に行かないと余力は俺やアイミナが今以上に強くなれば話は別だが、余裕は生まれないか。

「ままならないな」

「ボス?どうしたのですか?」

俺がつい呟いてしまった言葉に、アイミナが反応したが俺はそれを「なんでも無いと言って誤魔化した瞬間、とてもなく大きな爆発音が辺りに響き渡った。

その爆発音の発生場所は、少なくとも拠点の外であり拠点が直接爆発した感じの音と振動では無かった。
俺は寝間着から着替える為に、『収納』から自分の戦闘服(と言っても動きやすいもの)を出した後に、アイミナの戦闘服も出して急いで指示を出した。

「アイミナ!!今から爆発の原因を探りに行くぞ!!下手に放置したら不味い事になるかもしれない!!」

「わ、分かりました、ボス!!」

アイミナは俺にそう返事をしてから急いで着替えだした。
もちろん俺も恥じらいが、どうこう言っている自体ではないかもしれないので、急いで着替えた。


そもそもな話、魔の森で爆発と言ったら十中八九人間が居る証拠なのだ。
何故なら、ここが魔の森の森であり、その名の通りに周囲が木に覆われている。
そんな場所では例え爆発の魔法が使える魔物が居たとしても木に火が燃え移り火事になる危険性がある為に使わない。

もちろん火口近くや燃えるものが無い場所では、その限りではないが、この魔の森では間違い無い。
なので、この魔の森で爆発音が聞こえれば、それは爆発する魔法を使わなければいけない状況か、救援要請だと受け取られる。

俺も以前、この魔の森に入る前に、爆発音が聞こえれば救援要請の可能性がある為に、余裕があれば現場を確認して欲しいという事を言われたし、魔の森に入る者には同じ事をお願いしていると聞いていた。
まあ、人と遭遇してしまう可能性が高い、というか殆ど確定だろうが仕方ない。

俺はアイミナと揃って、着替えてから拠点の外出ると、即座に『鷹の目』を発動させ2kmの範囲内に爆発の痕が無いかを確認したが、発見出来なかった。

「ちっ!!爆発の発生源はどっちだよ!!もう一回爆発が起こればー」

ドォン!!

俺が舌打ちをしてから、先程と同じくらいの腹に響く爆発が起こった。
そして爆発の発生方向が分かった。
爆発は俺がこの川岸にやってきた時とは別の方向から聞こえてきた。

それを理解した俺はアイミナに指示を出した。

「アイミナ、今から爆発の発生源に向かうが、確実に人間と魔物が居るだろう。だから、人間と会うのが怖ければ、付いてこなくても大丈夫だ。どうする?」

俺の言葉にアイミナは一瞬悩んだような顔をしたが、すぐに決心したのか頷きながら言った。

「もちろん、ボスに付いていくのです!!アイミナはボスの子分ですから!!」

俺はアイミナの言葉に頷いてから、『身体強化』を使用しつつ爆発した方向に走り出した。





※お知らせです。
19話にてアイミナの魔石の有無を確認するためにストレンスは『透視』使ったと書いていましたが、『マジックアイ』に変更しています。
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