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1章 第1部 追放と一人目

18話 アイミナ

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「だ、誰?」

俺は目の前の美少女に目を見開きながら、そう呟いた。
目の前の美少女はそんな俺の声に反応してか、俺に抱きついてきた。

「酷いのです、ボス!!私が誰なのか分からないのですか!?」

俺は内心では「いや、分かるか!!」と叫びたかったが、ボスという呼び名、目と髪の色、そしてなによりもこの部屋の扉が開いた音もしなかったのに姿が見えなくなった金色の『ハイ・フォレストウルフ』という証拠が揃っている中では、流石に察するしかあるまい。

「ま、まさかお前が、あの金色の『ハイ・フォレストウルフ』?」

「はい!!それと私は『ハイ・フォレストウルフ』なんかではなく、『アイミナ』です!!」

俺はその言葉に天を仰ぎ見てしまった。
『命血』の効果は対象に名前を与えるというのは恐らく当たっていたが、それ以外の効果が予想外過ぎた。
まず、目の前の美少女が五体満足なのを見ると『命血』による名付けを行なった場合は回復効果、次に魔物から人間になった事から種族変化の効果、更には『翻訳』の魔法を使わずに会話が出来ている為に、言語が神によって統一された『統一語』という言語を理解し、話すことが出来ているので、その3つは効果としてあるだろう。

他にも何か効果が無いかを確認しようとアイミナを見ようとした所で、まだ天を見上げていた俺にアイミナが質問してきた。

「そういえばボス。アイミナとはどういう意味ですか?」

俺はその質問にビクリと反応して体ごと、アイミナとは別方向を向いた。
その行動をアイミナは疑問に思ったのか、俺の背中に抱きついてきた。

「ボス、ボス!!アイミナとはどういう意味なのですか?教えて下さい!!」

アイミナが背中に抱きついている状態で、何か良い言い訳を考えつくまで粘ろうかとも思ったが、このまま粘っても良い言い訳が出てくるとは思えなかったので、話題を反らした。

「そ、それよりもとりあえず服を来てくれ。いくらお前が元『ハイ・フォレストウルフ』とは言え、今は人間の姿なんだから、恥じらいを持ってくれ」

俺はそう言って、『収納』を使用し俺の服の中でも大きめの服で、女の子が着てもそこまで違和感が無さそうなものを上下共に選んで取り出し、アイミナに押し付けた。
アイミナは暫く、服を着るのを拒否するように服を手に取らなかったが、俺も引かずにそのままアイミナに服を押し付け続けると、遂に折れたのか服を手に取って着た。

「服は着れたか?」

「はい、ボス」

俺が確認のためにアイミナに質問すると、そう返答が返ってきた。
俺はアイミナが服を着たとの声で確認してから、アイミナの方を向いた。
アイミナは俺が渡した上下の服をきれいに着れていた。

俺はその光景を見て首を傾げてしまった。

「よく考えたら、なんで服を着れるんだ?その服はボタンが付いてるのに、それもしっかりと留めてるし」

俺がそう質問すると、アイミナは嬉しそうに笑顔を浮かべて答えた。

「それはボスから知識が流れてきたからです!!ボスの趣味も分かりますよ!!ボスはスタイルが良くて、ボン・キュッ・ボン?な体型のメスと後bー」

「だぁー!!分かった!!それ以上は言わなくて良いから!!」

俺はアイミナの言葉を急いで止めて、予想外な自体に冷や汗をかいた。
誰が人と会う前に最低限度の常識を覚えさせなければ、俺の性癖や小っ恥ずかしい話大切な色々な事を話されてしまうかもしれない。
そんな状況なんて真っ平ごめんだし、そんなリスクを抱えて人とは接触したくない。

という普通は魔法で魔物を『従魔』にしても魔物には自分の記憶なんていかないし、人間にもなれない。
まあ、これで『命血』が『命名する血』では無くなる、『命を与える血』である可能性があるから、しっかりと検証しないといけない。

因みに、『命名する血』や『命を与える血』というのは、俺なりに発動したことが無い魔法の効果を考える時に使う物だ。
例えば『操血』の効果が分からなかったとして、効果を連想する為に字から『何かを操る血』、または『血を操る』という効果が考えられる、という感じだ。

少し話がそれたが、アイミナがメス、いや女の子だったのにも驚いた。
まあ、魔物だからと言って性別を気にしていなかった俺も悪いが、人間になった以上は女性物の下着がある事やら人間社会のルールやらを早めに教えないと、変な奴に騙されたら不味いな。

というか、アイミナの名前の意味を聞かれるのも非常に不味い。
アイミナという単語があるかは知らないので、万が一有った場合を考えて下手な嘘はつけないし、俺が名前をアイミナにした理由である『みんなに愛される子になりますように』という願いを、名前風に短くしたんだよと話すのも小っ恥ずかしいなんてものじゃなく、悶死レベルである。

うん、色々と理由を付けて、なんとしてもアイミナという名前を付けた理由は話さないようにしよう。
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