上 下
15 / 69
1章 第1部 追放と一人目

12話 VS『フォレストウルフ』の群れ①

しおりを挟む
そんな訳で、恐らくは成長途中であろう王と魔物の群れに『サーチ』を使ってしまった俺は、半日前から拠点の中から頑張って魔物を撃退しながら、顔を顰めていた。

「数が中々減らない。これは王が指示を出しているのか?」

今回襲ってきた魔物は全てフォレストウルフだったのだが、その『フォレストウルフ』の王が厄介過ぎた。
今回の『フォレストウルフ』の王は、大きさこそ他の『フォレストウルフ』の大きさよりも少し小さいくらいだが、色が普通の『フォレストウルフ』の緑ではなく金色だった。
因みに『フォレストウルフ』の王は以前にも確認されており、その時は黒色の『フォレストウルフ』だったらしい。

そんな金色の『フォレストウルフ』の王のせいで凄く厄介な事になっている。
基本的に魔物は人や普通の動物を殺して喰うことを優先するので、相手取っている魔物が一体だけであり相手を一撃で倒せる威力の攻撃力を持っていれば簡単に魔物を倒せる。

しかし、今回の『フォレストウルフ』達は俺の魔法の攻撃に対して避けるという事を行い、『フォレストウルフ』毎に連携を取っている。
その上で厄介なことに『フォレストウルフ』約100体が四方に散らばって、均等に襲ってきている。

作っていた血剣(今後、ただの剣と呼ぶのは語弊が起こる可能性もあるので、俺が血の魔法で作った物には前に『血』という単語を入れることにした)は11本なので4面中3面に3本、一番意識を向けやすい正面だけ2本で対応しつつ、隙をついて他の魔法を使って効率的に仕留めようとしているのだが、尽く失敗している。
一応、相手に見せるのが初見の魔法は対応しきれずに魔物を倒せるときもあるが、それでも次は大体対応される。

そんな事を可能にしているのは、確実にこいつらの王である『フォレストウルフ』だろう。
王である『フォレストウルフ』を便宜上、『ハイ・フォレストウルフ』と呼ぶことにして、俺が血剣以外の魔法を使おうとするときには、『ハイ・フォレストウルフ』が遠吠え様なものをし、『フォレストウルフ』達に指示を出しているのだ。

『フォレストウルフ』は魔物の仲では弱い部類になるので、俺ならば魔力が続く限り討伐し続けることが可能であり、『フォレストウルフ』相手なら1日中戦っても魔力の4分の1は残る筈なのだが、まだ80体くらいは残って居そうな数が居るのに、既に魔力が半分しかない。
しかも、この王はかなり賢いのか倒せている個体は、成体になっているかどうかくらいの個体であり、長く生き残り力と知恵を付けているだろう『フォレストウルフ』は愚か、成体に成りたての『フォレストウルフ』だろうと足を止めずに、こちらの観察をしている。

そのために拠点を使った長期戦を想定していた俺は、かなりの苦戦を強いられていた。
一応、俺が使った拠点は防壁として機能しているし、『フォレストウルフ』の攻撃は網目状土壁に阻まれて、こちらに届かない。
だが、体に傷跡が付いていて如何にも長く生きている『フォレストウルフ』の攻撃には、土壁が削られて行っている。
因みに古参だろう『フォレストウルフ』に削られたら、すぐに土壁を補強しているのも魔力が、かなり減っているのに1役買っているだろう。

そんな苦境の中、ようやく俺の苦労が実を結んだ。
そう、少しづつだが倒せていた魔物達の血に俺の血を『浸血』で染み込ませていた血が、王だろう個体の足ともに到達したのだ。
俺は確認すると、笑みを浮かべ魔法を発動させた。

「『針血しんけつ』!!」

『針血』とは基本的には使えない地面にと接触してしまった血を媒体として、地面に触れた血がある場所から、なんの指定もしなければ人間の胴の太さほどある特大の針を五本出して敵を倒す魔法だ。
この魔法は中々に威力があるだけでなく、しっかりとイメージして発動させれば針を一本まで少なくする事も可能であり、更に針の本数が少ないほどに威力が上がるので中々に重宝する魔法だ。

ただ、欠点としては地面に接触した血しか使えないので、『針血』を発動させた血は今の所地面と接触した血が使える魔法が他に無いので、『針血』以外には使えないし、空中に居る敵には当てることが難しい。
更に相手に不自然に見えないように相手の足元に血を移動させなければならないし、一度見せると警戒されるので下手な使い方は出来ない。

ただ今回はかなり上手く行ったし、確実に仕留めるために腹の辺りから貫通して、最後には頭も貫通する様に『針血』を発動させた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...