上 下
10 / 69
1章 第1部 追放と一人目

7話 簡易拠点

しおりを挟む
さて、水の確保は出来そうだし、まだ魔物は『フォレストウルフ』や『キングスネークネ』(体長が最低10mから最大で体長30mまで振り幅がある魔物で、体長が長い程に長く生きている個体)の体長20mくらいしか出ないので、余裕で対処できるし、倒したついでに食料確保まで出来る。

ただ、ここまで歩いてきて『キングスネーク』が段々と大きくなっている気がするのが、厄介だ。
まだ『キングスネーク』とは4回しか遭遇していないが、このまま進めばいずれ狩りやすい『フォレストウルフ』が消え、『キングスネーク』や厄介な魔物も増えだすだろう。

まあ、魔の森を出たいならば川を下ればいいんじゃないかと思うが、川には魔物も来るので川を下るのは、俺の実力的には大丈夫だと思うが、止めたほうが無難だ。

そもそもの話、俺は王国に戻るかどうかを悩んでいる。
王国にはブラーディト家や俺の友人、魔物討伐騎士団のクソども俺に仕事を押し付けてくる奴ら以外の騎士団には親しい騎士達も居るが、正直このまま魔の森で暮らしてもいいかな~とか、ちょっとだが思ってる。

だって、国王陛下や王妃様は良い人だが、子供達に甘く、確かに第一、第二王子はある程度は優秀だが、それだって学園の成績上位陣には勝てない。
アイリス王女だって魔術が使えないのを、婚約者にした俺にフォローさせ、しかもそれを伝えるのをアイリス王女が精神的に受け止めやすくなる結婚式の後にさせて欲しいなんていう願いを無理矢理に通してきたのだ。

俺的には子供の頃から公表はせずとも教えておき、自身の危うさと立ち回り方を早めに教えておけばいいと思っていたが却下された挙げ句に、学園の卒業パーティーでの婚約破棄なのだ。 

しかも、魔術師協会には俺に相談する前にアイリス王女の事に対して、俺が実験体にするのはやめて欲しいと言ったという事にして、だ。
ここまでされたら流石に事実を公表しようとしたが、流石に重鎮達の中でも更に重要な重鎮達しか居なかった場所とはいえ他の人間の目がある所で頭を下げられては従うしかない。

この時にため息か舌打ち、困惑した表情やありえない人を見る目をしなかったのは、その時には傭兵団時代の記憶が戻っていたからに過ぎない。

なので王国に戻るのには、正直に言って面倒なことこの上ないが、他国に行っても問題はある。
この世界にある国は全てで魔術師適正検査をやっているので、殆どの国はその検査のタイミングで必ず国籍を登録しているのだ。
登録していない国は、余程文明が進んでいない国くらいだ。

そして、俺が国籍を登録しているのは王国だが、その俺がどこかの国に入ると大体は町や村に入る前(村の場合は無いところの方が多い)にされる国籍確認でバレる。
なにせ国籍確認は国を出る時と入る時に必要な国籍証という物を魔道具で確認させる必要があり、国籍証を持っていなければ兵士に捕まえられたり、その過程でこちらが抵抗した場合に限り殺されたりしても文句は言えないのだ。

そんな訳で正当な手段で俺が何処かの国に入るのは難しく、魔の森のように何カ国に跨っている危険地帯を突破して、国に入る際の国籍確認を誤魔化せても、国籍確認が無い村を一回で引き当てるのは難しい。
そもそも国籍確認がない村でも、国籍証を目視で確認するくらいはするだろうし、それを持っていなければ怪しまれる。

要するに現状で王国に戻るか、この魔の森で生き抜くしか道は残されていない。
それならば、友人達が居たとは言え、今まで利用されていた場所よりも魔の森新天地でどうにか生活出来るようにしたほうが良いのではないかと思うのだ。
まあ、それをするにしても問題は多々あるから今は決められないが。

とりあえず、今はその事は置いておいて、魔法の実験をすることにした。
実験する魔法は『鎧血がいけつ』といい、俺の血で鎧を作り出す魔法なのだが、この魔法を前に使ってみようとした時に『増血』によって増加した血は使えないと判明していたので、暇な時でも魔法を試せずにいた。
因みに、他に試していない魔法も似たような理由だったり、そもそも発動させるのが危険な魔法は試していないので、この機会に試せるものは試そうと思っている。

そして、俺が今まで『鎧血』を試さなかった理由だが、『鎧血』という名前からして血で鎧を作るのだろうとは予想出来たのだが、その鎧の大きさによっては顔色と体調が悪くなる可能性がある。
因みに魔法を使って、使っただけで死んでしまう魔法もあるにはあるが、それは使おうと考えただけで分かるので、以前使おうとした時にはその感覚が無かったので死ぬ可能性は無いと考えていい。

俺はブラーディト家にも、その他の家にも俺を蹴落とそうとしていた奴らは大量に居たので、下手に顔色を悪くできなかったし、体調が悪くなればそれだけで魔物討伐任務が急に入った場合に困るのは俺であり、国民だったから容易に試すことが出来なかったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

処理中です...