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1章
24話 2人はキラキラしている
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領主様は他の人達が頷いたのを見てから私に視線を向けた。
「これから打ち合わせをするが、その前に彼女を紹介しよう。
彼女はアリア。
エクスの弟子にして、先天性所持者の魔法使いだ。
彼女は今回の作戦である種の要になってもらう」
その言葉で私を知らなかった人達は驚いたような表情をし、私に視線を向けてきた。
その視線は驚きが多く含まれていたものの、信じられないという感情も多くあった。
そんな視線をいくつも感じていると、領主様が説明をし始めた。
「要とは言っているが、直接戦闘に参加する訳では無い。
彼女は【癒し手】として救護班に参加して貰う」
「「「なっ!!」」」
領主様の言葉で私を知らなかった人の半数が声を上げて驚いた。
残りの人は驚いていない訳ではなく、声を出さなかっただけで、目を見開いていた。
そんな中でも領主様は気にせずに言葉を続けた。
「ここに居る者の多くは間接的には彼女を知っているだろう。
そして、彼女が魔法の訓練を始めてから、まだ日が浅いことも知っているだろう。
しかし、彼女は先天性所持者であり、既に骨折も癒せる実力がある【癒し手】だ。
それ程の【癒し手】が後方に控えているという事実は、それだけで希望を与えるだろう。
『タートル』という絶望の前に現れた【癒し手】という希望を持って、我々は危険度15の魔物に挑む。
質問のある者は?」
領主様の言葉を聞いて、部屋に居た人達は考えるように口に手を当てていた。
それから少しして、領主様の近くにいた人が手を挙げた。
「領主様、よろしいでしょうか」
「もちろんだ」
「それでは、彼女の護衛をどうするのかについて考えを、お聞かせ願いたいのです。
確かに『タートル』という絶望を前にして、【癒し手】という分かりやすい希望は、よく効く薬となるでしよう。
ですが、『タートル』を退けられれば、逆に彼女を守るドーラス辺境伯家の負担となるかと思いますが」
「確かに、他の貴族家からの介入は凄まじいものがあるだろう。
その為、彼女にはエクスの第一夫人候補者になってもらう。
それによって、彼女は一時的にでもドーラス家所属となり、彼女を救護班に組み込めるのだ。
もちろん、お前の懸念も分かる。
例えエクスの第一夫人候補者になったとしても、骨折を癒せる【癒し手】を早々に諦める者は少ないだろう。
それこそ彼女が誰かと結婚し子を産んでも、死ぬまで諦めない者も居るかもしれん。
そうなればドーラス家は、魔物だけでなく人間も警戒しなければならないかもしれない」
「それならば!!」
「だが、我らは王国の盾だ。
その盾を割られるわけにはいかん。
『タートル』相手でも、騎士や魔法騎士、気合の入っている兵士達は立ち向かえるだろう。
だが、それ以外の者達は立ち上がれない。
そんな事になれば、我らが全力を持ってしても倒せるかどうかの魔物を相手に、我らは後方から崩れ落ち、あっさりと喰われるだろう。
私はどんな手段を使ってでも、そんな事にさせる訳にはいかない。
お前達も作戦を立てている段階で、希望がなければ負けると分かっていただろう。
私やエクス、ドリスといった前線に出ている人間では、完全には希望になることは出来ない。
だからこそ、これまで一切表に出ていなかった希望が必要なのだ」
「それは、確かにそうですが」
領主様の言葉に質問した人はもちろん、私を知らなかった人達も何かを考えるような仕草をしていた。
そんな中で、1人の男の人が私の方に歩いてきた。
その人は私の前に来ると、私の目を真っ直ぐに見て質問してきた。
「君が、ここに居る時点で領主様のお考えは既に決まっているのだろう。
だが、それでも聞かせてくれ。
君は【癒し手】として、我らと共に戦ってくれるのか?」
私は事前にミュディー様から言われていた通りに『もちろんです』と返そうと口を開いたものの、その男の人の真剣な表情を見て返答を返せなかった。
今の答えを返すのは、この人に対してとても失礼なのではないかと思うほど、この人の目は覚悟に満ちている気がしたからだ。
私は学校のあの日から、ずっと流されて、今この場所に居る。
それが悪いとは思わなかったし、強い魔物が来ている現状では逃げるもいう選択肢もなかった。
だからといって、私は戦う訳じゃない。
エクス様とドリスさんの訓練を見ていたから分かる。
私はきっと戦いに向いてない。
訓練中の大きな音や痛そうな音を聞いただけで、ビクリと体が反応してしまうし、血や打撲を見ていると少しだけ怖くなる。
それでも領主様の子供で、既に魔物を倒していて、ただただ特別な存在だったエクス様が怪我をしながら訓練しているのを見て、凄いと思った。
ドリスさんもそうだ。
最初はただ変な美人さんという認識だった。
それでもどこかエクス様以上に力強くて、魔法を使っている時はよく笑っていた。
押されている時ほど笑っていたので、それが怖かった事もあった。
けれど、最近はただ魔法がとても好きなお姉さんなんだと分かってきた。
2人共が痛そうな怪我をしながら、少しづつでも強くなっていっていた。
そんな2人は黒いモヤモヤが付いていても、私にはキラキラして見えた。
私は『タートル』という魔物なんて、最近初めて聞いた。
だから、どんな相手なんて分からない。
それでも、キラキラした2人をもう少しだけでも良いから見ていたいと思った。
他の理由なんて後付で、今はそれだけ叶えば良い。
だから、覚悟なんてないけれど、私はここに居たい。
私は、そんな思いを緊張から頭がごちゃごちゃした状態で口に出した。
「わ、私は戦えません。
それに私は痛いのは嫌いですし、魔物は怖いです。
死ぬのもイヤですし、生きていても私がエクス様達から教えてもらったような脅迫が家族に向くのもイヤです。
でも、そんな事はどうでも良くて、後付なんです。
今はただキラキラしてるエクス様とドリスさんを見ていたいと思いました。
なんで、そう思ったかなんて分かりません。
ただ戦闘訓練をしている2人を見て、もう少しだけでも良いから、見ていたいと思ったんです。
だ、だから、私はここに居たいです」
私はごちゃごちゃしたまま、そう言ってしまった。
言ってしまってから、ミュディー様に事前に教えられた言葉とは全然違う事を理解したものの、既に言い終わってしまっていたので、どうしようもなかった。
私の言葉を聞いた男の人は、一瞬呆気に取られたように口を開けた。
そして、次の瞬間には口を大きく開けて笑い出した。
「ふっ、あはははっ!!
そうか、【癒し手】殿もエクス様とドリスト殿に魅入られているのか!!
領主様!!
魔法騎士部隊の隊長として、領主様の策を全面的に肯定しましょう」
「これから打ち合わせをするが、その前に彼女を紹介しよう。
彼女はアリア。
エクスの弟子にして、先天性所持者の魔法使いだ。
彼女は今回の作戦である種の要になってもらう」
その言葉で私を知らなかった人達は驚いたような表情をし、私に視線を向けてきた。
その視線は驚きが多く含まれていたものの、信じられないという感情も多くあった。
そんな視線をいくつも感じていると、領主様が説明をし始めた。
「要とは言っているが、直接戦闘に参加する訳では無い。
彼女は【癒し手】として救護班に参加して貰う」
「「「なっ!!」」」
領主様の言葉で私を知らなかった人の半数が声を上げて驚いた。
残りの人は驚いていない訳ではなく、声を出さなかっただけで、目を見開いていた。
そんな中でも領主様は気にせずに言葉を続けた。
「ここに居る者の多くは間接的には彼女を知っているだろう。
そして、彼女が魔法の訓練を始めてから、まだ日が浅いことも知っているだろう。
しかし、彼女は先天性所持者であり、既に骨折も癒せる実力がある【癒し手】だ。
それ程の【癒し手】が後方に控えているという事実は、それだけで希望を与えるだろう。
『タートル』という絶望の前に現れた【癒し手】という希望を持って、我々は危険度15の魔物に挑む。
質問のある者は?」
領主様の言葉を聞いて、部屋に居た人達は考えるように口に手を当てていた。
それから少しして、領主様の近くにいた人が手を挙げた。
「領主様、よろしいでしょうか」
「もちろんだ」
「それでは、彼女の護衛をどうするのかについて考えを、お聞かせ願いたいのです。
確かに『タートル』という絶望を前にして、【癒し手】という分かりやすい希望は、よく効く薬となるでしよう。
ですが、『タートル』を退けられれば、逆に彼女を守るドーラス辺境伯家の負担となるかと思いますが」
「確かに、他の貴族家からの介入は凄まじいものがあるだろう。
その為、彼女にはエクスの第一夫人候補者になってもらう。
それによって、彼女は一時的にでもドーラス家所属となり、彼女を救護班に組み込めるのだ。
もちろん、お前の懸念も分かる。
例えエクスの第一夫人候補者になったとしても、骨折を癒せる【癒し手】を早々に諦める者は少ないだろう。
それこそ彼女が誰かと結婚し子を産んでも、死ぬまで諦めない者も居るかもしれん。
そうなればドーラス家は、魔物だけでなく人間も警戒しなければならないかもしれない」
「それならば!!」
「だが、我らは王国の盾だ。
その盾を割られるわけにはいかん。
『タートル』相手でも、騎士や魔法騎士、気合の入っている兵士達は立ち向かえるだろう。
だが、それ以外の者達は立ち上がれない。
そんな事になれば、我らが全力を持ってしても倒せるかどうかの魔物を相手に、我らは後方から崩れ落ち、あっさりと喰われるだろう。
私はどんな手段を使ってでも、そんな事にさせる訳にはいかない。
お前達も作戦を立てている段階で、希望がなければ負けると分かっていただろう。
私やエクス、ドリスといった前線に出ている人間では、完全には希望になることは出来ない。
だからこそ、これまで一切表に出ていなかった希望が必要なのだ」
「それは、確かにそうですが」
領主様の言葉に質問した人はもちろん、私を知らなかった人達も何かを考えるような仕草をしていた。
そんな中で、1人の男の人が私の方に歩いてきた。
その人は私の前に来ると、私の目を真っ直ぐに見て質問してきた。
「君が、ここに居る時点で領主様のお考えは既に決まっているのだろう。
だが、それでも聞かせてくれ。
君は【癒し手】として、我らと共に戦ってくれるのか?」
私は事前にミュディー様から言われていた通りに『もちろんです』と返そうと口を開いたものの、その男の人の真剣な表情を見て返答を返せなかった。
今の答えを返すのは、この人に対してとても失礼なのではないかと思うほど、この人の目は覚悟に満ちている気がしたからだ。
私は学校のあの日から、ずっと流されて、今この場所に居る。
それが悪いとは思わなかったし、強い魔物が来ている現状では逃げるもいう選択肢もなかった。
だからといって、私は戦う訳じゃない。
エクス様とドリスさんの訓練を見ていたから分かる。
私はきっと戦いに向いてない。
訓練中の大きな音や痛そうな音を聞いただけで、ビクリと体が反応してしまうし、血や打撲を見ていると少しだけ怖くなる。
それでも領主様の子供で、既に魔物を倒していて、ただただ特別な存在だったエクス様が怪我をしながら訓練しているのを見て、凄いと思った。
ドリスさんもそうだ。
最初はただ変な美人さんという認識だった。
それでもどこかエクス様以上に力強くて、魔法を使っている時はよく笑っていた。
押されている時ほど笑っていたので、それが怖かった事もあった。
けれど、最近はただ魔法がとても好きなお姉さんなんだと分かってきた。
2人共が痛そうな怪我をしながら、少しづつでも強くなっていっていた。
そんな2人は黒いモヤモヤが付いていても、私にはキラキラして見えた。
私は『タートル』という魔物なんて、最近初めて聞いた。
だから、どんな相手なんて分からない。
それでも、キラキラした2人をもう少しだけでも良いから見ていたいと思った。
他の理由なんて後付で、今はそれだけ叶えば良い。
だから、覚悟なんてないけれど、私はここに居たい。
私は、そんな思いを緊張から頭がごちゃごちゃした状態で口に出した。
「わ、私は戦えません。
それに私は痛いのは嫌いですし、魔物は怖いです。
死ぬのもイヤですし、生きていても私がエクス様達から教えてもらったような脅迫が家族に向くのもイヤです。
でも、そんな事はどうでも良くて、後付なんです。
今はただキラキラしてるエクス様とドリスさんを見ていたいと思いました。
なんで、そう思ったかなんて分かりません。
ただ戦闘訓練をしている2人を見て、もう少しだけでも良いから、見ていたいと思ったんです。
だ、だから、私はここに居たいです」
私はごちゃごちゃしたまま、そう言ってしまった。
言ってしまってから、ミュディー様に事前に教えられた言葉とは全然違う事を理解したものの、既に言い終わってしまっていたので、どうしようもなかった。
私の言葉を聞いた男の人は、一瞬呆気に取られたように口を開けた。
そして、次の瞬間には口を大きく開けて笑い出した。
「ふっ、あはははっ!!
そうか、【癒し手】殿もエクス様とドリスト殿に魅入られているのか!!
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