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1章
16話 信じてくれた人
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頭を抱えていたエクス様がため息をついてから、詰め寄って来ていた【付与師】さんに言った。
「ドリス、興奮するのは分かるが落ち着け。
アリアが引いているぞ」
「え?
ああ、失礼しました。
それで、アリアさんの先天性所持者についてでしたね。
アリアさんの先天性所持者について、目の強化なのは確定でしょうね。
黒いモヤモヤが見えるとの事ですが、まあアリアさんの予測で間違いないでしょうね。
特にアリアさんの場合は、黒いモヤモヤを消す、もしくは綺麗にするイメージで魔法を発動させると良いかもしれませんね」
「なるほど、俺のは分かりやすいものではないから、少し羨ましいな」
「そんな事を言っているエクス様も良い先天性じゃないですか」
「俺のは頭、ひいては思考力の強化だからメリットも多いが、その分以上にデメリットもある。
まあ、先天性所持者は全員そう思っているだろう」
エクス様は疲れたように、そう言った。
私は黒いモヤモヤが見えるのを言ってから、【付与師】さんに詰め寄られて驚いたものの、それが落ち着いてからは信じてくれた事に驚いていた。
これまでは誰に言っても信じてくれなかった。
それでも別に黒いモヤモヤが見えて辛い事は無かった。
他の人が疲れている時や怪我をしている時に気を配れたから、悪くは無かった。
でも、黒いモヤモヤがある事を信じてもらえなかったのは、少しだけ悲しかった。
でも、この人達はそんな事関係なく、【付与師】さんは納得してくれた、エクス様は自分も似たようなものだと教えてくれた、エステールさんは信じてくれた。
それが嬉しかった。
そんな感情が顔に出ていたのか、エクス様は首を傾げた。
「どうした?」
「あ、いえ、少し嬉しくて」
「ああ、なるほど。
これまでは理解者が居なかったのか。
俺の場合は、ドリスがある程度早い段階で気が付いたから、変態にウロウロされたが、1人では無かったな」
「あ、はは、そういう意味では1人で良かったかもしれません」
「お?
ついにドリスの変態性に気がついたか」
「はいはい、無駄話をしていると、髪の毛や唾液を提供してもらいますよ」
【付与師】さんの一言で、私とエクス様は黙らされた。
それから【付与師】さんは私に向かって言った。
「さっき黒いモヤモヤが見えなくなっていると言っていたけど、それは魔力を知覚し、使えるようになったからね。
魔力を使えるようになった先天性所持者は先天性の発動が抑えられるわ。
その代わり、先天性の部位を意識しつつ魔力を流すと、先天性と同じ能力を使えるから、試してみて」
そう言われたので、私は目を意識しつつ魔力を流した。
すると、最近は見えていなかった黒いモヤモヤが見えた。
黒いモヤモヤはエクス様の両足と胸の辺りにあって、【付与師】さんは目と頭の辺りにあって、エステールさんには無かった。
それを見ていると、【付与師】さんが私に言った。
「先天性は使えた?」
「はい、使えました」
「私達はどう見えてる?」
「えっと、黒いモヤモヤはエクス様の両足と胸の辺りにあって、【付与師】さんは目と頭の辺り、エステールさんにはありません」
「なるほど、そう言われて意識すると、目と頭は疲れている感じがするかな。
エクス様はどうです?」
「馬鹿達の一件で、確かに足と胸部辺りに受けたダメージが残っている」
エクス様がそう答えると、【付与師】さんは口元に手を当てて、何かを考えているのかブツブツ何かを言っていた。
「となると、やはり疲れや怪我を魔力で視覚化している?
いや、他人の状態を自身の魔力で視覚化しているなら、他人と物理的な繋がりがなければ出来ない筈。
それならば疲れや怪我をしている相手側に何かがある?
仮に相手側にある何かによって可視化されているなら、おそらくは相手側の魔力?
まさか、疲れや怪我の部分になにかある?
いや、その部分だけ魔力の乱れがある?
その乱れを可視化しているなら、説明はつくか?」
【付与師】さんは、その後もブツブツと言いながら、何かを考えているようだった。
それを見ていると、何か心配になってきたので、エクス様を見ると面倒くさそうな顔をしていた。
そんなエクス様は、私の視線に気が付くと、首を横に振りながら言った。
「特に心配する必要はない。
ドリスは魔法に関する事になると、何時もああなる。
ああ、そうだ。
先天性所持者は普段から先天性所を使う方にしておくと、自然に魔力の訓練が出来るからしておくといい。
そうすれば、今よりも魔力の総量が伸びる筈だ」
「はい、分かりました」
「さて、あの状態のドリスは、暫く使い物にならない。
こっちは、こっちで訓練しておこう」
エクス様がそう言ってから、私とエステールさんを連れて少し離れてから、魔法の訓練を再開させた。
訓練内容は単純に魔法の使用と、効果の確認と上昇が目標だった。
魔法はイメージが重要ではあるものの、【癒し手】は【回復】属性以外の魔法の効果の減衰が凄かった。
私が何回も魔法を使って、形をイメージ通りにするといった魔法の精度を上げても、最初に使った魔法以上の威力にはならなかった。
訓練中に変えられたのは、魔法の形だけで、魔力をどれだけ多く使っても、威力はほんの少しづつしか上がらなかった。
逆に得意な属性である筈の【回復】属性の魔法は、明確にどんな魔法なのか分からない以上使用は出来なかった。
少しだけなら大丈夫では無いかと思っていた私と違い、【付与師】さんは【回復】属性の魔法を文献で知っているらしく止められた。
【付与師】さん曰く、【回復】属性の魔法は発動している時に白色の光を発する【癒し手】が居るらしいので、遠くから【回復】属性を確認される可能性があった。
なので、私は4属性の魔法を使用しての、魔法の訓練になった。
それから、そのまま訓練を続けて、訓練が終わる時間の前にエクス様や【付与師】さんが領主様から呼ばれた。
私とエステールさんは呼ばれていなかった上で、その日の訓練の終了時間まで残り少したったので、そこで解散になった。
※投稿時間を間違えていました。
すみません
「ドリス、興奮するのは分かるが落ち着け。
アリアが引いているぞ」
「え?
ああ、失礼しました。
それで、アリアさんの先天性所持者についてでしたね。
アリアさんの先天性所持者について、目の強化なのは確定でしょうね。
黒いモヤモヤが見えるとの事ですが、まあアリアさんの予測で間違いないでしょうね。
特にアリアさんの場合は、黒いモヤモヤを消す、もしくは綺麗にするイメージで魔法を発動させると良いかもしれませんね」
「なるほど、俺のは分かりやすいものではないから、少し羨ましいな」
「そんな事を言っているエクス様も良い先天性じゃないですか」
「俺のは頭、ひいては思考力の強化だからメリットも多いが、その分以上にデメリットもある。
まあ、先天性所持者は全員そう思っているだろう」
エクス様は疲れたように、そう言った。
私は黒いモヤモヤが見えるのを言ってから、【付与師】さんに詰め寄られて驚いたものの、それが落ち着いてからは信じてくれた事に驚いていた。
これまでは誰に言っても信じてくれなかった。
それでも別に黒いモヤモヤが見えて辛い事は無かった。
他の人が疲れている時や怪我をしている時に気を配れたから、悪くは無かった。
でも、黒いモヤモヤがある事を信じてもらえなかったのは、少しだけ悲しかった。
でも、この人達はそんな事関係なく、【付与師】さんは納得してくれた、エクス様は自分も似たようなものだと教えてくれた、エステールさんは信じてくれた。
それが嬉しかった。
そんな感情が顔に出ていたのか、エクス様は首を傾げた。
「どうした?」
「あ、いえ、少し嬉しくて」
「ああ、なるほど。
これまでは理解者が居なかったのか。
俺の場合は、ドリスがある程度早い段階で気が付いたから、変態にウロウロされたが、1人では無かったな」
「あ、はは、そういう意味では1人で良かったかもしれません」
「お?
ついにドリスの変態性に気がついたか」
「はいはい、無駄話をしていると、髪の毛や唾液を提供してもらいますよ」
【付与師】さんの一言で、私とエクス様は黙らされた。
それから【付与師】さんは私に向かって言った。
「さっき黒いモヤモヤが見えなくなっていると言っていたけど、それは魔力を知覚し、使えるようになったからね。
魔力を使えるようになった先天性所持者は先天性の発動が抑えられるわ。
その代わり、先天性の部位を意識しつつ魔力を流すと、先天性と同じ能力を使えるから、試してみて」
そう言われたので、私は目を意識しつつ魔力を流した。
すると、最近は見えていなかった黒いモヤモヤが見えた。
黒いモヤモヤはエクス様の両足と胸の辺りにあって、【付与師】さんは目と頭の辺りにあって、エステールさんには無かった。
それを見ていると、【付与師】さんが私に言った。
「先天性は使えた?」
「はい、使えました」
「私達はどう見えてる?」
「えっと、黒いモヤモヤはエクス様の両足と胸の辺りにあって、【付与師】さんは目と頭の辺り、エステールさんにはありません」
「なるほど、そう言われて意識すると、目と頭は疲れている感じがするかな。
エクス様はどうです?」
「馬鹿達の一件で、確かに足と胸部辺りに受けたダメージが残っている」
エクス様がそう答えると、【付与師】さんは口元に手を当てて、何かを考えているのかブツブツ何かを言っていた。
「となると、やはり疲れや怪我を魔力で視覚化している?
いや、他人の状態を自身の魔力で視覚化しているなら、他人と物理的な繋がりがなければ出来ない筈。
それならば疲れや怪我をしている相手側に何かがある?
仮に相手側にある何かによって可視化されているなら、おそらくは相手側の魔力?
まさか、疲れや怪我の部分になにかある?
いや、その部分だけ魔力の乱れがある?
その乱れを可視化しているなら、説明はつくか?」
【付与師】さんは、その後もブツブツと言いながら、何かを考えているようだった。
それを見ていると、何か心配になってきたので、エクス様を見ると面倒くさそうな顔をしていた。
そんなエクス様は、私の視線に気が付くと、首を横に振りながら言った。
「特に心配する必要はない。
ドリスは魔法に関する事になると、何時もああなる。
ああ、そうだ。
先天性所持者は普段から先天性所を使う方にしておくと、自然に魔力の訓練が出来るからしておくといい。
そうすれば、今よりも魔力の総量が伸びる筈だ」
「はい、分かりました」
「さて、あの状態のドリスは、暫く使い物にならない。
こっちは、こっちで訓練しておこう」
エクス様がそう言ってから、私とエステールさんを連れて少し離れてから、魔法の訓練を再開させた。
訓練内容は単純に魔法の使用と、効果の確認と上昇が目標だった。
魔法はイメージが重要ではあるものの、【癒し手】は【回復】属性以外の魔法の効果の減衰が凄かった。
私が何回も魔法を使って、形をイメージ通りにするといった魔法の精度を上げても、最初に使った魔法以上の威力にはならなかった。
訓練中に変えられたのは、魔法の形だけで、魔力をどれだけ多く使っても、威力はほんの少しづつしか上がらなかった。
逆に得意な属性である筈の【回復】属性の魔法は、明確にどんな魔法なのか分からない以上使用は出来なかった。
少しだけなら大丈夫では無いかと思っていた私と違い、【付与師】さんは【回復】属性の魔法を文献で知っているらしく止められた。
【付与師】さん曰く、【回復】属性の魔法は発動している時に白色の光を発する【癒し手】が居るらしいので、遠くから【回復】属性を確認される可能性があった。
なので、私は4属性の魔法を使用しての、魔法の訓練になった。
それから、そのまま訓練を続けて、訓練が終わる時間の前にエクス様や【付与師】さんが領主様から呼ばれた。
私とエステールさんは呼ばれていなかった上で、その日の訓練の終了時間まで残り少したったので、そこで解散になった。
※投稿時間を間違えていました。
すみません
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