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1章

5話 魔法と魔法使い

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「私は魔道具研究室副主任のエステールです。
貴族ではないので、あまり緊張しなくても大丈夫ですよ。

それでは早速、魔法の講義を始めましょう」

「は、はい、よろしくお願いします」

私は今、エクス様の隣に座り魔法の講義を受けようとしていた。

昨日は騎士の方が家まで送ってくれたし、今日の学校は休むように言われるしで、今日は何をされるのだろうと心臓がバクバクいっていた。

そして今日、再び領主様の御屋敷に来ると、何故かエクス様と昨日は見なかった男の人が居た。
その後は今日の予定を聞いて、私も魔法を使える様になるかもしれないと聞いて、目を輝かせてしまった。
その間に、いつの間にか部屋を移動させられて魔法についての講義が始まった。


「さて、ではアリアさんにとって、魔法は何ですか?」

「え、魔法は何かですか?」

「ええ、何でもいいですよ。
格好いい物でも、使いたい物でも、使わなければならない物でも、その他にも何でも良いですよ?」

「え、えっと、それなら凄い物でしょうか」

「凄い物、ですか。
良い魔法使いになれる回答ですね」

「良い魔法使いになれる回答?」

「ええ、魔法使いはイメージと魔力で魔法を使います。
ですが、魔法に対するイメージはより強い方が良いんです。

まあ、この話はアリアさんが本格的に魔法の特訓をする事になった時に話しましょう。

基本的に魔力は生物である時点で持っている物ですから、正確に言えば誰でも魔法は使えます。

ここまでで質問はありますか?」

「誰でも魔法を使えるのですか?
でも、私は周りのみんなが魔法を見た事がありません」

「それは仕方ない事です。
魔法は誰でも使えますが、魔力を使わなければならない関係で、なにも学ばずに使う事は難しいですからね。

さて、魔法は誰にでも使えますが、誰しもが魔法使いと呼ばれるわけではありません。

魔法使いと呼ばれるのは、最低でも最弱の魔物、スライムを5体討伐する事が出来る魔力を有している事が条件です。

通常の平民の方はスライムを1体倒せるかどうか、平民出身の魔法使いは5~20体倒せるくらいの魔力量の方が多いですね。
対して、貴族出身の魔力量は15~30体の魔物を討伐する事が出来る魔力量の方が多いです。

まあ、スライムは核を狙えば子供でも倒せるので、貴族の方もそこまで多くの魔力を有している方は多くありません。
因みにスライムの次に弱いと言われているゴブリンを倒せる魔力量で計算すると10~20体程になります。

また、スライムを倒せる回数は魔物相手に効果が出る最低威力の魔法を撃てる回数になりますから、魔法使いなら自分がスライムを魔法で倒せる回数を知っておく事が大切です。


次に魔法使いについてです。
魔法使いは大まかに3種類に分けられます。
1つ目が普通の魔法使いである【属性使い】、2つ目が魔道具製作が得意な【付与師】、そして最後が回復魔法が使える【癒し手】です。

基本的に殆どの魔法使いが【属性使い】で、【属性使い】と呼ばれる魔力量を持っているのは、100人に1人程ですね。
そして、魔法使いの中でも1000人に1人が【付与師】になると言われています。
最後の【癒し手】は100年に1人誕生すれば良い方で、人数にすれば魔法使いの中でも10万人に1人くらいの確率ですかね。

この3つについて、詳しくは知っていますか?」

「す、すみません、知りません」

「いえいえ、構いませんよ。
まあ、魔法使いと関わりが無いと知る必要のない知識ですからね。


まず【属性使い】ですが、これは『火』、『水』、『風』、『土』の4つの属性魔法、いずれかを得意とし、使用する魔法使いです。
戦いに出ている魔法使いは、この【属性使い】ばかりですが、魔道具師になっている者も居ますね。
ただ【属性使い】が製作した魔道具は本人が付与した魔法の効力や持続性が落ちるので、注意が必要です。


次に【付与師】ですが、こちらにも【属性使い】と同じ様に4つの属性魔法を使用し、更に『付与』の属性魔法も使用出来る魔法使いの事です。
また、【付与師】は最も得意な魔法は『付与』である事が多いですね。

因みに、『付与』の属性魔法と言っていますが、正確に言えば調整の属性魔法とも言えますが、『付与』の方が分かりやすいので、そちらの呼び名が一般的には普及していますね。

『付与』は、魔法を付与する前に使用する事で、目に見えない部分を、付与する魔法に最適な形に整える事が出来ます。
ただし、この『付与』は同じ魔力を持つ魔法使いでないと意味が無いので、そこは注意が要りますね。

この『付与』を使用できる事から、ほとんどの【付与師】は魔道具師になります。
理由としては、『付与』があるので【付与師】が魔道具を制作した方が、少ない魔力で、より良い魔道具を制作しやすい為です。


最後に【癒し手】ですね。
この【癒し手】は、他の魔法使いには使えない『回復』の属性魔法が使えます。
もちろん、【癒し手】以外の魔法使いも応急処置に魔法を使う事はありますが、直接癒す事は出来ません。
これは【属性使い】でも、【付与師】でも変わらず、【癒し手】だけの特権なのです。

しかし、逆に【癒し手】も4つの属性魔法を苦手としています。
使用出来ない事は無いそうですが、著しく使用する魔力が増え、それに伴う威力の増加も無い為、使えないと言って良い程に効率が悪いそうです。

ただし、【癒し手】の『回復』の属性魔法は凄まじいと聞きます。
もちろん【癒し手】とはいえ、別人である以上は魔法の効果に差が出るのは当然ですが、俗に初代聖女とも呼ばれる昔の【癒し手】は四肢の欠損すら回復させたと聞きます。
ただ、ここ最近は【癒し手】が現れても、欠損の回復は出来ない者が多いですね。

さて、長々と講義をしてしまいましたが、ここまでで質問はありますか?」

「いえ、ありません」

「では、これからは魔法の訓練に移りましょう。
まず、アリアさんの体に私の魔力を流しますので、アリアさんは魔力を感じてみてください」

「は、はい」

私はエステールさんに両手を握られると、握られた両手から暖かい何かが段々と体に広がっていくのが分かった。

この暖かい何かがエステールさんの言う魔力なのだろうと理解するのに、長い時間は掛からなかった。
それを理解すると、暖かい魔力の他にも同じ様に暖かいものがあるのが分かった。

この暖かいものは、エステールさんの魔力よりも私の体に近い、というか私の体そのものが暖かい?
もしかして、これが私の魔力?

それに私の魔力というものを理解してから、凄く体が暖かい。
まるでお日様の下で寝転がっているみたい。

「凄く、心地良い」
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