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3章 ダンジョン突入編

50話 元奴隷は大盾の思考を理解する

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暫く3人で作戦会議をしていると、ハクの見張りの時間になったので、タイミングが良かったこともあり、作戦会議はそこで終わりになった。


俺は戻って来た事を誰にも見られていなかったので、敢えて結界の外に出て、朝日が登ると同時に結界の中に戻った。

結界の中に戻ると、すぐに各所に連絡が行き、すぐに会議になった。
その為、結界の中に戻った足で、会議がある場所に向かっている。
今回の会議も、今まで会議があった場所と同じ場所なので、そこに向って歩いているが、周りの視線が凄かった。

その視線は見下してみる視線もあれば、憎悪に染まっている視線もある、数人だったが哀れみの視線もあった。
そんな様々な視線に晒されながらも、俺は会議をする場所に辿り着いた。

すると、そこには既にハクとセリカ、あの大盾使いのクラノスケが以外の人間が居た。
俺はそれを見て、『やけに早い集合なのに、あの3人は居ないのか』と思っていると、俺が座るよりも先に眼鏡が俺に聞いてきた。

「おい、ダンジョンはどうだったんだ」

「?なんで、お前らにそれを伝える必要があるんだ?」

俺は眼鏡の言葉に首を傾げながら質問した。

そもそも俺がダンジョンを見に行ったのは、ダンジョンを見ておく必要があるという自己判断があったからだ。
もちろん、ハクやセリカに聞かれれば答えるが、眼鏡に聞かれても答える義理がなかった。

そんな俺の回答に腹を立てたのか、顔を赤くしながら眼鏡が叫んだ。

「拠点を守るべき人間が、勝手に拠点を離れていたのだから、その行動の結果は報告するべきだろうが!!」

「意味が分からないな。そもそも俺は、この拠点を守る為に、ここに来た訳じゃない。

確かに拠点は使ったが、その分防衛にも参加した。それなのに、俺の行動まで事細かに報告する必要性を感じないな」

俺がそう言うと、今度は眼鏡以外の人間(女)が立ち上がって、ヒステリーに叫んだ。

「巫山戯ないで!!貴方は私の子を殺しただけじゃなく、私達の防衛も放棄するの!?」 

女の言葉を聞いて、舌打ちをしそうになった。
この女は一番最初の会議の時には居なかったから、死んだ者の繰り上がりか?

だが、昨日の会議ではそんな事を言っていた人間は居なかった。
という事は眼鏡あたりが、俺への嫌がらせとして元々役割に着いていた人間と交代させたのか。

どちらにしろ、俺の回答は変わらないので、俺は悪びれる必要はないと、その女を真っ直ぐに見て言い返した。

「はぁ、話を聞いていたのか?俺がここに来たのは、この拠点を利用する為だ。お前らを守る為じゃない」

「そんな無責任な事が許される訳ないわ!!力を持つ者は、力を持たない者を守る義務があるのよ!?」

そうヒステリーに叫んだ後も、ただヒステリーに喚き散らす女に、疲れてため息をつきつつ、呟いた。

「話が通じね~」

「そうだな。お前と私達では話が通じない」

俺がため息をついていると、クラノスケが現れた。
俺はハクとセリカ、クラノスケが居なかったので、3人は別の場所に呼び、その間に話を有利に進めるつもりなのかと思っていたが、それは間違いだったらしい。

そんな事を理解しつつ、俺はクラノスケの表情に目がいった。
クラノスケは暗い表情をしているだけでなく、俺と目を合わせようとしなかった。

その理由をなんとなく理解しながら、クラノスケに質問した。

「どうしたんだ、クラノスケ。顔が暗いぞ。寝不足か?」

「ああ、まあな。それよりロキ、お前には2つの選択肢がある」

「2つ?どんな選択肢だ?」

俺は1つの選択肢は夜の内にハクとセリカに聞いていたので知っていたが、もう1つの選択肢に検討が付けられなかったので、クラノスケに質問した。
そんな俺の質問に、クラノスケは暗い表情のままで答えた。

「1つ目の選択肢は俺達の奴隷となる事だ」

クラノスケの言葉に、この場に居た人間の殆どが絶句した。
絶句してないのは、俺とクラノスケ自身くらいだ。
そんな空気を物ともせずに、俺はクラノスケに質問した。

「奴隷、ね。それは穏やかじゃないな。昨日の良いおっさんといった雰囲気だったのは、演技か?」

「こんな状況だ、嫌われないように多少自分を偽っても、演技まではしていなかっさ。それに実際に奴隷にするわけじゃない、奴隷の様に使われるだけだ」

「はっ!どちらにしても奴隷はお断りだな。ハクやセリカに使われるならまだしも、ただ依存したい人間に使われるなんて真っ平ごめんだ」

俺がクラノスケの選択肢の1つ目を鼻で笑うと、クラノスケは暗い表情を少しだけ柔らかくして笑った。

「ふ、そうか。まあ、俺もそう思うし、仕方無いか」

「やけにあっさりだな。まあ、良いが。それで、2つ目の選択肢は?」

「2つ目の選択肢は、この拠点を出て行くことだ」

クラノスケが言った選択肢に、今度はクラノスケを除いた全員が目を見開いた。
俺が『クラノスケは、一体を狙っているんだ?』と眉を顰めると、眼鏡がクラノスケに叫んだ。

「大石さん、何を言ってるんだ!!そいつは、拠点の為にDPを出させると決まったじゃないか!!」

「決めていない。それに不満を持たれてから出て行かれるよりは、不満を持たれる前に出て行かれた方が、お互いのためになる」

このクラノスケの言動を見ていて、何を考えているのかの見当がついた。

おそらく、クラノスケは俺が怖いのだ。
何故怖いのかを考えると、恐らく昨日ダンジョンに行く前にした会話だろう。

まあ、人を殺す事に慣れてない人間が、人を殺す事に慣れている人間を怖がるのは当然の事。
むしろ、それを理由に実力行使で排除して来ないだけ、随分と理性的だ。

そんな事を俺が考えていると、ハクとセリカが遅れてやって来た。
ハクは周りを素早く見回してから言った。

「まさか、ロキに何か無茶な要求でもしていないだろうな」

「ハクちゃん!!僕達がそんな事をすると思っているの!?」

ハクの言葉に反応して、眼鏡が怒りを浮かべながら叫んだ。
そんな眼鏡を冷ややかな目で見つめながら、セリカが言った。

「昨日ロキにDPを献上させようと提案して、賛成した人間しかこの場に居ないのに、信じれる訳ないでしょ」
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