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2章 拠点編

39話 元奴隷は群れの頭を殺す

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「はぁ、はぁ、んっく、あと少し、あと少し殺せば、この戦闘を終わらせられる!!」

そう叫んでからが長かった。
キラーアントの上位種が一体現れてからは、次々と上位種が現れた。

次々と現れる上位種は中々の強さで、最初の一回だけは不死鳥の炎の噴射で何体か同時に倒せたが、それを他の上位種に見られていたので、次の不死鳥の炎の噴射では一体も倒せなかった。
それからは、上位種は一体一体始末して回っているが、俺を殺せないと判断しているのか無駄に逃げ回るので、いちいち追わなければならない。

それにより更に疲労が酷くなり、今は無駄口すら叩けない。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

俺はキラーアント種をこの場から一掃出来たので、この隙に膝に手を付き息を整えようとしていた。
だが、思考が鈍っており、尚且つ視界の端が白くなっていて、頭がズキズキと痛む。

まだ一度も死んでいないので、一度死んででも今の状態を少しでも良くしたいが、後どれだけキラーアントクイーンまで距離があるか分からない現状では死ねない。

「はぁ、はぁ、は?」

俺は1度頭を振って再び前に進もうと顔を上げたが、顔上げたタイミングで目の前に槍があった。
そして、その次の瞬間槍が頭を貫通したのが理解出来た。





頭を槍が貫通してから、すぐに意識を失った。
暫く意識を失ってから、前に死んだときのように、不死鳥の炎に包まれて、最高級のベットの中で寝ているような気分だった。

それから意識を失う前に、キラーアント種の群れと戦闘していた事を思い出した。
思い出してからは、また急にベットに寝ている感覚が消えて、不死鳥の炎も消えた。


不死鳥の炎が消えてから、すぐに体を起こして周りを見回した。
周りにはキラーアントクイーンに多数のキラーアント種の上位種が居た。

しかも運がいいことに、キラーアントクイーンは俺に近寄って来て居るところだった。
キラーアントクイーンもキラーアント種の上位種も死んでいた俺が復活した事に驚き、固まっていた。

それを見て、さっきまでの疲労を一切感じない体に笑みを浮かべてながら、手足から不死鳥の炎を出した。

「今日は運がいい!!」

そう叫んでらキラーアントクイーンの横に回り込みながら、首元に飛び込んだ。
そして、全力で不死鳥の炎の火力を上げて、キラーアントクイーンの首を切断した。

首を切断されたキラーアントクイーンは、数瞬だけ体をビクリと反応させてから、倒れた。
そして、死亡確認の為にキラーアントクイーンの体を腰にあるポーチに入れた。
ポーチには生物が入らないので、キラーアントクイーンがポーチに入った事に笑みを浮かべてから、周りの上位種に襲い掛かった。


「はぁ~、これで上位種は終わりか?」

俺は周りを見て全て死んだキラーアント種の上位種をポーチに入れながら、独り言を呟いていた。

「まあ、またこれからキラーアント種の掃討が残ってるから、まだ何か食えそうに無いな。

いや、後は雑魚だけだよな?それなら、もう両足をスライムにして殺しながら食うか?いや、両足スライムは動けないか、それなら片手をスライムにして食いながら戦闘するか」

これまでは話す余裕がなかったのもあって、独り言を呟きながら来ただろう道を戻った。


来ただろう道を戻ると、キラーアント種の上位種が死ぬ寸前に叫んでいたのもあってか、キラーアント種は俺を殺さなければならない敵と認識して殺しに来た。
そのキラーアント種を頭と胴体を2つに分ける事で殺しつつ、キラーアントを食っていった。

その時に、俺の『暴飲暴食』で体力よりも魔力が溜まりやすい理由に気が付いた。

「なるほど、魔石か。魔石まで食うとキラーアントの場合は1体食う毎に体力が10で魔力は500、魔石を食わないと体力は10のままで、魔力は5貯まるのか。オークだと1体毎に体力100、魔力1000が貯まっていた。

ということは、魔物の強さ毎で貯まる量が変わるのか?だけど、キラーアント3体居ればオークを狩れる。それなら体力は33、魔力は330くらいは貯まらないとおかしいのに、溜まってない。

ん~、種族差か?」

『暴飲暴食』のよく分からない体力と魔力の貯まり方に頭を悩ませながら地上を目指していると、変な部屋を見つけた。
その部屋に入ると、食料や人間だった肉、その他にもキラーアントなら食える木材、上位種が使う武器なんかが大量に置いてあった。


流石に人間だった肉を持っていく意味は無いので、食料や木材は全部、武器は少量だけポーチに入れた。
それから部屋を出ようとしたが、よく考えたら食料は一応置いて行った方が良いと思い至った。

なので、ポーチに入れた食料の3割、いや2割、本当は1割程を置いて部屋を出た。
キラーアント種共もある程度は食ったり、ポーチに入れたり、それらを誤魔化すために派手に燃やしたりして、地上に出る頃にはかなり食料を手に入れる事が出来た。

キラーアントクイーンが率いる、キラーアント種の群れ相手だと分かった時には、億劫なんてものではなかったし、苦労は度外視だがそれはもう大量の食料が手に入って満足できた。
多分だが、レベルも上がっているだろう。

もしかしたらムタイも圧倒できるか?
いや、『ガブィアスの双杖』がある限りは、圧倒は無理か。
俺の『デーチェストの変器』は強力な武器じゃななく、万能器みたいな物だから仕方無いな。

そんな事を考えながら、キラーアント種の巣から地上に出た。
出たが、キラーアント種は巣の中よりも外の方が億劫になる数が居た。
巣の中だと直視出来なかった為に、そこまで気にならなかったが、直視出来る外だと気持ち悪い数がいるな。


そんな事を考えつつ、ある程度の早さで順次キラーアント種を始末しながら拠点に戻った。
だが、外だと食えないし、ポーチにも入れられないしで、モチベーションが下がり、それで始末する速度もゆっくりになりながら、しかし確かに拠点に前進して進んだ。

そうして、ようやく拠点に戻ると、外と中からキラーアント種に纏わりつかれて、結界は数多くヒビが入り、今にも割れそうになっていた。
それを見て、ついつい叫んでしまった。

「はぁ!?キラーアント種はこっちに引き付けたのに、なんでだよ!!」

そう叫びながら、結界に張り付いているキラーアント種を殺して回った。
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