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1章 逆転移編

9話 元奴隷は拠点探し中に襲われる

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さて、これから拠点の確保だが、やることは簡単だ。

①まず全裸になる。
②不死鳥になる。
③飛んで拠点向きな所を探す。
④夕方までに、ここに戻る。

というか、これ書くと簡単だが、『暴飲暴食』が無ければ、やるのはほぼ不可能だな。
というか、帰り方をきちんと考えておくべきだった。

なにせ、ここは初見の土地で、方向感覚は普通な俺が、空中での遭遇戦で空をグルグル旋回していれば、迷うのは必須だ。
少し考えれば思いつきそうな、その可能性に思い至らなかったのだから、中々どうして俺の思考は浅いらしい。


因みに、現時刻は既に夕刻。
更に帰り方も分からない。
一応、周りに建物は多いが、下手な所に入っては駄目な気がする。

昨日のオークキングが陣取っていた巨大な建物もそうだが、巨大な建物とその周辺毎に魔物毎の縄張りが存在しているので、下手な所に降りれば補足されて、俺が死ぬか縄張りの魔物を全滅させるかしなければいけなくなる。

はぁ~、これはもう徹夜か?
まあ、徹夜でも行けそうな気がしないでもないが、それだと夜食も食わないといけなくなる。
更に不死鳥の体でオークを食うとなると、味がしっかりとしてしまうので、やりたくない。

一応、マジックバック(ポーチ)に物を入れれば、入れた物の時間が止まるのは確認しているので、オークが腐っている心配はないが、血抜きやらを全くしていないので不味いこと確実だ。
昨日はスライムの体で食事をしたから、ほとんど味覚なんて感じなかったが不死鳥の体ではそうは行かない。


というか、不死鳥の体で飛んでいて気が付いたが、不死鳥の体は移動速度が半端じゃない。
数分で飛べば、一瞬で地平線の景色が変わるくらいには早い。
まあ、全力で飛ぶためにはきちんとした加速時間と加速距離が居るし、全力で飛んでたら拠点探しなんて出来ないので、やってないが。

ただ下から補足されないように雲の少し上を飛んでいるので、拠点探しは難航すること間違いなしだ。
そんなため息が出てしまいそうな状況で、少しだけぼんやりしながら飛んでいると、突然雲の下から攻撃が来た。

その攻撃は雷だったが、その雷が来る一瞬前に魔法の気配がしたしたので、咄嗟に体を反らし直撃はしなかった。
しかし左手、不死鳥の体だと左翼に雷が掠って、一瞬だが体が感電した。

不死鳥の体は炎で出来ているので、本来ならば感電などしないが、俺の不死鳥の体は不死鳥そのものではなく借り物の体。
それにより体自体は炎で出来ているが、体を操っている俺には魔法系の攻撃のみ通ってしまう。

それにより体が感電し、俺の体は落下を始めた。
すぐに感電から回復し、飛行を再開したが、そのタイミングで再び雷の攻撃が来た。

今度はそれを完璧に避けたが、今度は何か白い物が下から飛んで来た。
今度もそれを避けると、その白い物は俺の横を通り過ぎ、俺の上を取ると再び雷の魔法を放ってきた。

「ちっ」

それを見て、舌打ちをしてしまったが、すぐに不死鳥の炎の火力を限界まで上げて、放った。
不死鳥の炎は雷魔法を飲み込み、そのまま白い物も飲み込んだ。

これで終わったと判断し、気を抜いた瞬間、下から再び雷魔法が放たれ、雷魔法が俺の心臓のあたりを貫通した。

「がっ」

完全に不意を打たれた形となり、体が数秒動かなくなってしまった。
そのタイミングでチャンスとばかりに、上の白い物と下から雷魔法が放たれ続ける。

それにより体が動かなくなり、落下が始まった俺の体には休む間もなく雷魔法が打ち込まれ続け、雲の上というかなりの高度から落下を始め、地面と激突するまで雷魔法は打ち込まれ続けた。




◇(??視点)

「ようやく死んだか?」

私はため息を付きながら、そんな言葉を呟いた。

あの火の鳥にかなりの魔力を使わされてしまった。
魔力を消費させられた量からして、落とした魔物はボスクラスの魔物だろう。
しかし、かなりの魔力を使わされた割にはあの火の鳥は弱かった気がするが。

いや、拠点が近い為に、派手になりがちな直接戦闘を避けた事が良かったかもしれないな。
それひボスは単純にステータスが強い魔物や特殊な条件下では負けないと言った反則的な存在なのだ。
あの火の鳥も認識している攻撃は全てを無力化するといったスキルがあったかもない。

もしも、そんなスキルを持つ存在ならあの硬度から落ちても無事な可能性もあるか?
あれ程の高度から無抵抗にされて落ちて無事な魔物が居るわけもないが、確認は必要だろう。

そんな事を考えつつ杖が戻るのを待ち、2本とも杖が戻って来てから、火の鳥が落ちた方向に移動を開始した。



「これはどういう事だ?」

火の鳥が落ちた方向に移動してきたが、火の鳥が落ちたと思われる場所を見つけた。

しかし、そこには何もなかった。
いや、正確にはきちんと整備されていた道路や建物があった。
周りは元住宅街の一角で、一軒家と生け垣で囲まれた一区画に、あの火の鳥は落ちたのだ。

しかし、火の鳥が落ちたと思われる場所だけ、道路も住宅もドロドロに溶けていた。
いや、杖の一本に反撃された時から、あの火の鳥の火力は知っていた。

だが、いやだからこそ、あの火の鳥は火力だけで防御力や思考力は、そこまで高くないと確信していた。
強い魔物はどれか一芸に秀でている方が強いと、経験則からしっていたからだ。

その上で落ち始めてから、落ちきるまでは雷魔法の1つ『雷撃らいげき』を打ち込み続けていたのだ。
『雷撃』は雑魚の魔物なら一撃で塵さえ吹き飛ばし、ボスクラスの魔物相手でも防御力が高くない限りはある程度のダメージは与えらる上に、数秒とはいえ感電はさせることも出来る優秀な魔法だ。

そんな魔法を打ち込み続けていたというのに、地面と激突する瞬間に炎の噴射をしたのか?
しかし、何のための炎の噴射だ?

落下の勢いを殺すためならば空中で噴射を行ったほうが確実だ。
であれば、おそらくは違う。
他に考えられる可能性としては、落下地点にいた魔物の排除や私の目を眩ませるためのー

「まさか、この破壊痕は囮か?」

私が気が付いたように呟くと、私の背後から声が聞こえてきた。

「正解」

声が聞こえた瞬間、私は最高速度で振り返りつつ回し蹴りを放ったが足首を左手で持つ事で止められ、私の首元には、炎を纏っている手があと少し近付ければ私を殺せるだろう位置で停止していた。
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