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1章 逆転移編

8話 元奴隷は不死鳥からの手紙を読む

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早く起きるために、早く寝たのに目が覚めたのが完全に日が昇り、昼と朝の中間だった為、俺は頭を抱えてしまった。


奴隷時代は床で寝たり、罰として肥溜めで寝させられたりしたので、大変柔らかく快適なベットで寝たのが久しぶりすぎて完全に寝過ごした。
奴隷から開放されてから1日しか経っていないから、奴隷時代の癖で起きれると確信していたが、不死鳥の炎で1度死んでも復活出来る上に、今日には更にもう1度死んでも復活出来るようになるために、気を抜き過ぎだろうか?

というか昨日のペース、つまりオークを9体も1日食べ続ければ、3日で2つの命を貯める、つまり2回復活する事が出来る魔力を貯められるとか、本当に不死鳥の能力が強すぎる。

いや、俺のスキルである『暴飲暴食』の効果もあって、不死鳥との相乗効果が起こったのだろうが、神獣になってから俺が生成する魔力も圧倒的に増えた。
更に人間は魔力の上限が、才能によりそれぞれ決まっていたが、不死鳥を食ってからはそれが無い。

つまりあの神獣、不死鳥は一体は幾つの命を貯めているか分からないし、考えたくもない。
その事を考えた場合、確実に不死鳥に遊ばれていたのだが、俺って弱すぎないか?

いや、自己嫌悪するよりも、あの袋の中にあった手紙を読んで、拠点になりそうな場所を探すのが先決か。
優先事項を決めて、とりあえずそのままベッドを椅子代わりに手紙をきちんと呼んだ。


『我は神獣が一体、不死鳥。あまり長々と書いても読むのも、書くのも面倒になるだけだと我は考えている。よって、短く要件だけを書くが不快に思ったならば謝罪しよう。
要件は4つある。


まず始めに強き者をそちらの世界へと『異世界転移』させた事の説明と詫びの言葉を。

強き者を『異世界転移』させなければならなかったのは、神獣とはエネルギーを無限に生み出し、そのエネルギーを世界へと垂れ流し、世界の均衡を保つ為に存在する神が生み出したものなのだ。

我々が居る世界、強き者にとっては転移させられる前に居た世界は4体神獣がそれぞれ同量のエネルギーを垂れ流す事で世界の体裁を保っている。
その関係上、世界のエネルギーの貯めうる器は我ら4体がエネルギーを垂れ流すしか想定していない。その為に神獣になったばかりであり、エネルギーを垂れ流すのではなく、自身の中に貯める方法を知らぬ強き者が世界に残った場所、世界でエネルギーの過剰生産が起こってしまい、エネルギーの過剰に有り過ぎる状態が続けば崩壊に繋がってしまう。

よって、我の権限で『異世界転移』させたのだ。しかし、突如違う世界に転移させられても困るだけであるし、憤ることだろう。その憤りを我に向けてくれて構わぬが、強き者が我に直接憤りを向けるのは物理的に不可能だ。

我が強き者に直接頭を下げる事は出来ないが、せめて言葉で謝罪を。
世界の為とはいえ、強き者にまともな説明を出来ずに転移させてしまい、申し訳なかった。



そして、次に強き者に送った詫びの品に関する事。
先にも書いたが、我は強き者に直接会い、頭を下げることが出来ない。そのせめてもの詫びとして、我が管理していた中でも特に強き者に必要であるだろう物を送ることにした。1つは『無限収納袋』、これは強き者が慣れ親しんでいる物に形を変えるので、どのような形をしているか分からなぬが、大量の食料が必要な強き者には必須と言えるだろう。

それのそちらの世界で言葉に困ることは無いよう、我ら神獣に与えれている『言語理解』というスキルも付与しておいた。

他にも強き者が求めているだろう物もあったが、そちらは我の権限だけではどうにか出来るものでは無かった。よって許可が取れれば、そちらに送るので、許可が取れることを祈っておいてくれ。



次に強き者を転移させた、そちらの世界に付いての説明を。

そちらの世界は元々、魔物や魔法どころか魔力すら無かった。
魔力や魔法、魔物はそちらの世界の人間達により想像の産物として生み出された概念だったが、おそらく違う世界から転生した魂に薄くだが残っていた物を概念としただけだろう。

しかし、元々概念だけとは言え、魔力や魔法、魔物が存在している世界は崩壊しかけている世界に取っては文字通り、最後の命綱となってしまった。
何処かの馬鹿がその事に気が付き、元々崩壊する予定だった世界と強き者を転移させた世界を融合させたのだ。

今の所は、崩壊する予定だった世界の要らぬものを、強き者を転移させた世界に押し付けているだけだろうが、いつかは崩壊する予定だった世界の人間共も転移してくるだろう。

それらの人間共をどうにかしてくれ等とは言わんし、後々どうにかしてくれと頼む予定もない。
元々こちらの都合で転移させてしまったのだから、好きに生きてくれて構わない。



最後に神獣としての注意点を伝えておく。


最初に神獣はそれぞれ無限のエネルギーを生み出す様になるが、そのエネルギーを無理に溜め込み続けると神獣だろうと崩壊してしまうので、気をつけること。
まあ、そこの所は強き者ならば大丈夫な気がするがな。


次に、強き者が何を司る神獣になるかは不明だが、既に何かは司っているはずだ。
神獣は基本的に司っている物に傷つけられる事はないが、極稀に司っている物に傷つけられる事もある。
それを覚えておかなければ、足を掬われる事もあるやもしれん。気を付ける事だ。


最後に強き者が奴隷から開放された件と、そちらの世界の今後の事だ。
まず、この手紙が入っていた袋から光が出て奴隷から開放されたと思っているだろうが、それは間違いだ。
私が袋に込めたのは、あくまでも奴隷の首輪のみを焼き切る炎の力。
強き者は神獣になった時点で奴隷から開放されていたが、それに気が付いている様子がなかった為に込めた。

なにより神獣とはそれぞれを創造して下さった神にのみ膝を付き、それ以外には例え神でも膝を付いてはならぬ。
神獣とは常に自由にして、公平なのだ。
その事だけは絶対に忘れぬように。

そして、強き者が転移した世界に関する事だが、強き者が転移した世界とその世界に魔物や魔法、魔力を押し付けた世界が融合する関係で、2つの世界間のみでだが別々の世界同士で行き来が出来るようになるかもしれん。
その場合は魔力や魔法、魔物が無い方の世界に行くと、どちらの世界も崩壊する可能性があるので、慎重に行動するといい。



随分と長くなってしまったが、最後にもう一度だけ謝罪を。
急に強き者をそちらの世界に転移させてしまい申し訳なかった。色々と書いたが、そちらの世界では自由に生きてくれ。」

ひとまず全文を読んで見て、昨日は詫びの品の事しか読まなかったが、それが正解だと分かった。

まず、文が長い。
いや、手紙としては長くないのかもしれないが、もっと纏めて書いてもらわないと理解に時間がかかってしまう。
まあ、もう会えないなら、伝えなければならないことを書いたのだから、長くなるのは分かるが。

それに昨日は詫びの品の所のみを読んで、『無限収納袋』がマジックバックだと気が付いたから、早く理解出来たのだと分かった。
文章を読む力を付けた方がいいか?
この手紙を読むのに30分ほど掛かってしまったし、本屋の本を読み切るのはいつかになるのか、頭が頭が痛くなってきた。

それにこれからは自由に生きてくれと言われても、やりたいことがないしな。
とりあえず、拠点の確保に動くか。
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