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1章 逆転移編

1話 奴隷はクソどもに死地に放り込まれる

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「良いから、さっさと不死鳥を食って来い、この無駄飯ぐらいが!!」

そう命令されて、奴隷の俺は神獣の一体である不死鳥の巣に来ていた。

それもこれも俺の固有スキルのせいだ。
固有スキルは通常のスキルとは一線を画すスキルで、どんなスキル内容でも通常のスキルよりも強力だ。


そして、俺の固有スキルは『暴飲暴食』。
このスキルは通常だと、通常よりも多くの食べ物を食べることで体力や魔力を溜め込んでおけるスキルだ。
ただスキル保持者が食べた量と溜め込んでおける体力や魔力が比例するので、少し使いづらい。

しかし、俺の固有スキルは、そのデメリットが無くなる、つまり満腹になることがないが、1食に150人分の食料を食べなければ餓死するスキルだ。
しかも、150人分というのは最低の量で、1食300人分程の食料を食べなければガリガリになってしまう。

因みに固有スキルの効果が出始めたのが12歳のステータス獲得の儀式になってからじゃなければ、とっくの昔に餓死していただろう。

これだけだとゴミみたいなスキルに思えるが、俺の『暴飲暴食』には、もう2つ効果がある。

その効果というのが、食べた物に俺の体を変える、つまり変身することが出来るというものと、どんな物でも食べる事が出来るというものだ。
例えば、ドロドロに溶かした鉄を他の具材も混ぜて料理して食べれば、体を鉄にできる。

しかも、どんな物でも食べれるので世界一固い金属であるアダマンタイトも食わされて、体の一部に変化させられて、無理矢理採取される事もあった。
これは貴重金属だけでなく、貴重な魔物の素材なんかも同じく採取された。


最初はそんな無茶もあまりされなかった。
なにせ最初は奴隷じゃなかったし、更に、体をあまり傷つけずに採取しようと思えば、髪や爪などの切ることが出来る部位に限定させるから痛みもない。
しかし、俺がトロールという『再生』スキルを持つ魔物の肉を食って、『再生』のスキルを獲得してからは首を切らない限りしななくなったので、雑に扱われるようになった。

その頃からよく命を狙われたりするようになった。
そして、俺の人生一番の間違いは、国から『護るので王城に住まないか』と言われて、その提案を受け入れてしまったこと。
元々、高価な物の買い取りは国が多かったし、大丈夫だと思ったが、俺が寝ている隙に奴隷の身分に落とされた。

奴隷になってからは、寝る時間も無く永遠と貴重素材を採取された。
そして、俺の所持者が王から王太子になってからは、更に酷くなった。

王は一応俺に後遺症がない様にする様に指示を出していたが、王太子はそんなの関係ないと言わんばかりに無茶苦茶してくれた。
そのせいで『再生』しきれない箇所が出来てしまい、今では右目が無く、左手と右足はほとんど動かせない。


そして、王太子はそんな俺を見て神獣を食って来いと命令をした。
一体で世界を滅ぼせる神獣を食って来いと言う事は、戦闘をして神獣を殺せという事に等しい。
実質死んで来いという命令だった。

しかし、そこに一つの勝機があった。
それは思考の制限が解除されているという事。

奴隷は身分だけ奴隷の奴隷と、完全に全てが奴隷の2種類いる。
そして、俺は後者の奴隷にされていた。

後者の奴隷は自身が出来ることを命令された場合に、例えどんな命令でも全て承諾させられる。

俺にされていた命令の中で、ずっと反抗できなかった理由の命令がある。
それは『無駄なことは考えるな』と言う命令である。
一応、この『無駄なこと』の範囲が広かったので、俺に必要な事ならば無駄なことでは無くなり、勝機を見出すだけの思考はあった。

しかし、その命令が神獣との戦闘をする為に一時的に解除されたのだ。
控えめに言って、最高に頭がスッキリとしていた。
14歳で奴隷にされてから5年間もの間、俺の思考は無いに等しく、神獣の巣に入って、初めて無駄な事も考えられた。


無駄な事も考えられるということが、こんなに素晴らしい事だとは思っていなかった。
そんな素晴らしい事も、この命令をなんとかすれば、すぐに消されてしまう。

というか神獣は概念に近い存在だろうに、そんな存在を食って来いとか馬鹿だろうか?
そもそも神獣は世界に4体存在し、それぞれが火、水、土、風を司り、世界の創生から生きているとも言われる神に最も近い存在だぞ?

あの王太子は本当にバカだな。


さて、ここで先程の思考に戻ろう。
俺は今、神獣の死体の眼の前にいる。

それは何故か、俺は先程まで神獣に攻撃を仕掛けていたから神獣の眼の前に居ること自体は変じゃない。
それでは何故、神獣に攻撃を仕掛けていたのに、俺が今も生きているのか、逆に神獣が死んでいるのか。

更に言えば、体が今までで一番軽いし、欠損した部位も元通りに動かせる。

そんな状態に、俺が混乱していると、若い女の声が聞こえてきた。

『ようやく正気に戻ったか、強き者よ』

声が聞こえてきたので、辺りを見回したが周辺には不死鳥しか居なかった。
まさかと思いながら不死鳥に話しかけてみた。

「ま、まさか、この声は不死鳥か?」

『そうだ、強き者よ。思考が一部封じられていたといえ、今の状況は理解しているか?』

「今の状況?」

俺が呆然として首を傾げると、目の前の不死鳥の体が燃え上がり、目の前に赤髪赤目の美女が裸で現れた。

「理解して居ないようだな。しかし、私が1度殺されるだけでなく、私の肉体を取り込み、己が力とするとは思わなかったぞ」

「え、あ、え?まさか、不死鳥?」

「そうだ。目の前で見ていただろう」

「いや、見てはいた、けど」

「それなら、そういう物だと理解しろ。それと強き者よ、お前も今から神獣だ。それを理解しているか?」

「は、え?神獣?」

「こちらも理解していないようだな。とはいえ、この世界の火の神獣は私と決まっている。そういう物なのだ。よって、強き者には異世界に行ってもらう」

「は?異世界?」
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