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43話

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「へ?大臣様が死んだら、他のお貴族様が新しい大臣様になるんじゃないんですか?」

アリアは平民ならば誰でも抱くだろう疑問を口に出した。
その疑問に、王命を読み終わったフィーナが答えた。

「基本的な大臣職ならば、すぐに新しい貴族の方が大臣に収まるでしょう。

例えば国の財政を担う財務大臣、帝国との外交を担う外務大臣、国防を担う防衛大臣は軍の頂点である将軍が兼任する事が殆どですね。他にも色々な大臣が居ますが、それらの大臣と副大臣は全て重要な役割を果たしています。

なので、基本的には大臣の席が無くなることはありません。ただ、その大臣が1代限りの大臣ならば別です」

「1代限りの大臣様、ですか?1代限りのお貴族様なら、お話しでよく聞いたりしますけど」

「1代限りの大臣、ですよ。確かに1代限りの大臣はほとんど成れません。王国の歴史の中でもローニャ様を含めて3人しか居ませんからね。

聞かないのも無理はありません。確か、前回は500年程前だった筈ですから」

「え、えっと、凄いっていうのは分かりました」

アリアは説明されても理解しきれなかったのか混乱したような表情を見せた。
それに苦笑いしつつ、私はこの王命の最も重要な部分を話し始めた。

「この大臣任命は、確かにすごい事よ。でも、この任命の最も重要な部分は、この任命が王命で行われたという部分よ」

「王命で行われた?えっと、どう言う事なのでしょうか?」

「そもそも大臣の任命は王命なんて必要無いの。でも今回は王命で大臣に任命された。

つまり、この任命は断れない。でも、フロービス伯爵当主に対して王命が下された事により、これから10年はフロービス伯爵当主に王命を下せないのが重要なのよ」

「10年は下せない?なにか理由があるんですか?」

アリアは私の話を聞き、貴族でない者なら大体は抱くだろう疑問を抱いたらしく、その事を質問してきた。
その質問に対して、フィーナが答えた。

「王命は同じ人物に対して下す場合は、10年の期間を開ける事が暗黙の了解としてあります。

これは昔の国王陛下がある特定の人物に矢継ぎ早に王命を出し、ある人物を死亡させてしまったことで決まった事ですね。まあ、その人物が当時は英雄と呼ばれるような人物だったので、死亡させてしまった人物の名前は抹消されたようですが」

「そ、そうなんですね。でも、王命を出されないのは良い事、なんですか?」

「王命を出されないのは普通の貴族にとっても、良い事と捉える所が多いでしょうね。でも、私に取っては王命を下される可能性がある事は行動に制限が掛ける事になっていたから、とてもいいことね。

ああ、この事は他の人間には話さないように。仮に私とフィーナがした話だと前置きをしても、まだ平民で後ろ盾の無いアリアでは消されるから」

「は、はい!!分かりました!!」

私の言葉で、アリアは震えながら首を縦に振っていた。
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