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9話

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騎士が私の正論に狼狽えていると、フィーナが他の騎士達にも聞こえない音量で私に耳打ちをしてきた。

「ローニャ様。流石に凍り付けたままで帰すのは不味いのでは?この事を盾にして王城に呼び出される可能性もあります。

ここはフロービス伯爵家で勝手をした事と、クリスハルト王子を凍り付かせた事を手打ちにしてはどうでしょうか?」

「ん~、そうだね。そうしようか」

私はフィーナに小声で答えた。
それから騎士を威圧するように言った。

「王子に掛かった魔法は解除しよう。しかし、私の屋敷で好き勝手をした事は忘れていませんね?」

それだけ言うと、私が何を言いたいのかを察したのか頷いて答えた。
それを見てから、私は王子に掛かっていた魔法を『氷魔支配』で消した。

それを見てから、騎士はホッとした様な表情をした。
まあ、護衛騎士が着いていながら、王子に魔法を掛けられたとあれば、クビは必須。
その上で、本人達は物理的に首が飛んでもおかしくはないし、その家族は王族の護衛も出来ない無能と罵られる事もあるのだから、ホッとしても無理はないか。

そんな事を考えている内に、騎士達は王子を吊れて急いで城に帰って行った。
それを見送って、部屋の中に戻った私とフィーナの元にミサが来た。

「あの、ローニャ様。第一王子殿下にあんな事をして大丈夫でしょうか?」

「問題無いよ。私とフィーナは貴重な黒色の魔眼所持者。更に、中立者ミュールフィスからある程度の免不罪も貰っているしね」

私がそう言いながらゆっくりしていると、ミサは普通だと分からないくらいに不満そうな顔をした。
そんなミサに下がるように手で指示を出した。

それからは不満そうな顔をしたミサが消えてから、私はため息をついた。

「はぁ~、仮にも主人の前で不満そうな顔をするとは、アレもボロが出てきたのかな?」

「ボロは出てきたのでしょうが、どちらかといえばローニャ様に重用されている私に苛ついているのでは?」

私はフィーナの言葉に動きを止めて、ミサが出て行った扉を睨みつけた。

「つまり、ミサは私のフィーナに嫌がらせをしている、と?」

「えっ、違いますよ!?まさか、物騒な事は考えていませんよね!?」

「ん?うん、大丈夫だよ。ミサの実家を潰そうくらいしか考えてないから」

「ちょっ、止めてくださいよ!?次の監視者が来ますよ!?」

フィーナが本格的に焦りだしたので、睨み付けるのを止めて、フィーナに言った。

「別に潰すのは冗談だよ。まあ、私が考えている新しい商売、まあ半分は王国に対する嫌がらせだけど、その商売から除け者にするくらいだよ」

「新しい商売、ですか?」

「そ、ねえ、フィーナ。今は魔眼が発現したら、どんな仕事に就く?」

「魔眼が発現したらですか?それは軍か、魔眼を発現させたばかりの者に魔眼の扱いを教える教師になるか、魔獣狩るハンターや戦争に参加したりもする傭兵になるくらいですかね」

「そう、それくらいしか思いつかない。しかも、大まかに分ければ戦うか教えるかの2択。だから、私が新しい選択肢を作ろうと思って」

私はそう言って、不敵な笑みをフィーナに見せた。
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