上 下
9 / 13

懐かしい記憶(魔王)と現状(勇者)

しおりを挟む
私はこの場に残ったメンバーを見て、少し笑ってしまった。
そんな私を見ながら、自身の椅子を消し、代わりにテーブルを出した完璧戦闘メイドパーフェクト・バトルメイドであり、この城のメイド長であるメイが、私に異世界の甘味を出しながら質問した。

「こちらは召喚勇者料理本から知識を得た、『アイスケーキ』です。全体がアイスになっておりますが、皿に微弱な『氷結』を付与しておりますので、ごゆっくりお召し上がり下さい。

それと魔王様。笑っておられたようですが、如何なさいましたか?」

私はメイド長が出した『アイスケーキ』を食べながら、笑った理由を話した。

「いやなに、今回この国の担当をしていたとはいえ、この場に残ったのが最初の魔王軍幹部だったのを思い出してな。あの頃は、私も精々勇者の3倍程度の能力しかなく、お前達も勇者と同等程度しか強くなかったな、と懐かしくなっただけだ」

メイド長と宰相は私がそう言うと、顔を見合わせた後に笑みを浮かべた。

「そう言えば、そうですね。特に私はドッペルゲンガーですし、勇者と同じ程度と言っても直接戦闘は弱いですから、聖女か賢者あたりを殺して成り代わり、よく内部崩壊を起こさせて、その隙にあの時はバトルメイドだった貴方に他を殺して貰ったりしていましたね」

「確かにそうですね。あの頃は我らに従うものも少なく、むしろ魔王様を殺して自分が魔王になろうとする愚か者ばかりでしたね」

私達3人はそんな懐かしい話題を暫く話した後、それぞれが準備へと取り掛かった。



◇勇者視点

「うっ、ここは?」

僕は謁見の間で気を失ってしまった。
そして、僕が目を覚ますと何処か知らない部屋に連れてこられていた。
だが謁見の間での確定した物を報告するだけの物だった。

それを思い出した瞬間、僕は叫んでいた。

「助けないと!!」

僕がそう叫んだのはみんなの今後のせいだ。
父上や他国の重鎮達は何も無かったが、勇者パーティーのメンバーは酷い事をされる筈だ。

そこで気が付いた。

「そう言えば、なんで皆はサファイスに土下座をしてたんだ?謁見の間にはサファイスは居なかった筈」

「ほぅ?私が行なった『記憶改竄』とは、少し違うな。見たくなかった物を他の物にすり替えたのか?」

僕はその声が背後から聞こえた瞬間には、その声がした方に振り向いた。
そして、その声の人物を見ると、目を見開き驚きながら叫んだ。

「サファイス!?君がどうしてここに?」

サファイスは僕の質問に狂った様な笑みを浮かべながら答えた。

「どうして私がここに居るか?それは勿論、私がここにお前を送ったからに決まっているだろう?」

僕はその言葉に驚き、聞き返した。

「ここに僕を送ったのがサファイスだって?それなら、今すぐに僕をここから出すんだ」

僕がそう言うと、サファイスは首を傾げた。

「何故、ここから出さないといけないので?」

僕はサファイスのどこか余裕に満ちた言動に焦りを感じながら、怒鳴るように言った。

「今すぐにみんなを助けに行かないといけないからに決まっているだろう!!早く僕をここから出せ!!」

僕がそう叫ぶと、サファイスは口を三日月の様な形にして、僕を嘲笑いながら聞いてきた。

「もうお前が私と婚約破棄すると言った日から、3週間は経過しているのに、パーティーメンバーを助けに行くのか?」





すみません、書き切る予定だったのですが、意外と手が止まってしまっているので、今日から1日1話となります。
時間は9:30投稿のままです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】 元魔王な兄と勇者な妹 (多視点オムニバス短編)

津籠睦月
ファンタジー
<あらすじ> 世界を救った元勇者を父、元賢者を母として育った少年は、魔法のコントロールがド下手な「ちょっと残念な子」と見なされながらも、最愛の妹とともに平穏な日々を送っていた。 しかしある日、魔王の片腕を名乗るコウモリが現れ、真実を告げる。 勇者たちは魔王を倒してはおらず、禁断の魔法で赤ん坊に戻しただけなのだと。そして彼こそが、その魔王なのだと…。 <小説の仕様> ひとつのファンタジー世界を、1話ごとに、別々のキャラの視点で語る一人称オムニバスです(プロローグ(0.)のみ三人称)。 短編のため、大がかりな結末はありません。あるのは伏線回収のみ。 R15は、(直接表現や詳細な描写はありませんが)そういうシーンがあるため(←父母世代の話のみ)。 全体的に「ほのぼの(?)」ですが(ハードな展開はありません)、「誰の視点か」によりシリアス色が濃かったりコメディ色が濃かったり、雰囲気がだいぶ違います(父母世代は基本シリアス、子ども世代&猫はコメディ色強め)。 プロローグ含め全6話で完結です。 各話タイトルで誰の視点なのかを表しています。ラインナップは以下の通りです。 0.そして勇者は父になる(シリアス) 1.元魔王な兄(コメディ寄り) 2.元勇者な父(シリアス寄り) 3.元賢者な母(シリアス…?) 4.元魔王の片腕な飼い猫(コメディ寄り) 5.勇者な妹(兄への愛のみ)

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

第六王子は働きたくない

黒井 へいほ
ファンタジー
 カルトフェルン王国の第六王子、セス=カルトフェルンは十五歳になっても国のために働かないロクデナシだ。  そんな彼のためを思ってか、国王は一つのことを決めた。 「――オリアス砦をお前に任せよう」  オリアス砦は、隣接している国との関係は良好。過去一度も問題が起きたことがないという、なんとも胡散臭い砦だ。  縛り上げられたセスに断る権利などなく、無理矢理送り出されてしまうのであった。

悪役令嬢日記

瀬織董李
ファンタジー
何番煎じかわからない悪役令嬢モノ。 夜会で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢がとった行動は……。 なろうからの転載。

テイムしたトカゲに魔石を与え続けるとドラゴンになりました。

暁 とと
ファンタジー
テイムしたトカゲはドラゴンになる

血の魔法使いは仲間を求める

ロシキ
ファンタジー
そこは魔術師と魔術師よりも圧倒的に珍しく魔術師よりも強い魔法使いが居る世界。 そんな世界で前世を覚えている公爵家の青年は、婚約を破棄され人が一人も居ないような魔境に飛ばされる。 その青年は仲間に会いたかった。 それが叶わないならば、大切な仲間を新たに作りたかった。 これは、そんな青年が徐々に仲間を増やしながら、婚約を破棄し辺境に自分わ飛ばした者達に仕返ししたり、昔の大事な仲間と再会したりする物語。 主人公の一人が長いので、序盤の会話は少ないです。 視点は通常の話が主人公で、○.5話等になっている物は主人公以外の視点です。 一部が作り上がるごとに投稿しますので、一部が終了するまでは一日一話更新です。

処理中です...