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砂の城……✨✨✨

当たり屋……✨✨✨

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「ギャァァァァァッ」
 中年の男が絶叫して吹っ飛んだ。



「ううゥ……!」あの男は。



 黒塗りのベンツは急停車し、すぐに様子を見に運転手の五味岡は外へ出た。


 しかしこれは完全な当たり屋のやり口だ。


 まったくスピードが出ていないベンツに横から自ら飛び込んで事故を装ったのだろう。

 おそらくたいした怪我ではないはずだ。


「ぬうぅッ!!」
 だが何気に当たり屋の男を見て驚いた。


「……!!」まさか。あの男は。
 信じられない事だが、当たり屋の中年男性はクソ親父だったのだ。



『バカな……』なんで、ここに親父が当たり屋としているんだ。


 今どき、当たり屋なんてナンセンスだ。
 ドライブレコーダーが普及していて、走行中のアクシデントをすべて録画している。



 どう考えても自ら当たりに行っているのは明白だ。



「イッテェ……!  くッそォォ、折れたァッ!」
 親父は左腕を押さえ、大げさに騒ぎたてた。



 道行く通行人も嫌な顔で親父を見ていた。



「大丈夫ですか」それでも運転手の五味岡は冷静に尋ねた。


「ッウうゥ……、大丈夫なワケあるかァッ!!
 見てわからねえェのか!  車に轢かれたんだよ」
 ワザとらしく喚きたてた。


「そちらが急に横道から飛びだして来たんでしょ」


「バカ言え!  オレのせいだって言うのか!!」

「ンうゥ……」運転手もバツが悪いようだ。



「待って下さい!」仕方なく後部座席から弁護士の桐山アキラが出た。

「私は弁護士です……」名刺を差し出した。


「はァ、弁護士だとォ……」親父は少し戸惑ったようだ。


「こちらは、もちろんドライブレコーダー搭載ですよ。今すぐ警察へ出頭して録画を公開しても構いませんが」
 逆に弁護士のアキラは強気に出た。



「チィッ、だからなんだって言うんだ。ドライブレコーダーがどうした」
 しかし親父は素直には引き下がらない。
 そっぽを向き開き直った口調だ。



「幸い怪我もたいしたコトがないようなので、このまま表沙汰にしない方がお互い得策かと……」
 財布を取り出し一万円札を数枚手渡した。
 


「ン……」



「出来れば穏便に……、これでなかったコトに」
 


「いやいや、まァ、オレも警察沙汰には……」
 後頭部をポリポリと掻きながら金を受け取った。


 金さえ手に入れば用がないのだろう。


「ええェ……、今後、こんな当たり屋のような真似はしない事ですねえェ」



「チィッ、バカ言え!   当たり屋じゃァねえェよ」
 まだ強がりを言って困らせた。


 運転手とアキラは車へ戻ろうとした時、親父はふとベンツの後部座席を見た。


 その瞬間、後部座席に座っていた私と視線が合った。


「ううゥ……、お前は!!」
 親父は、呻くように私の方へ近づいてきた。









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